分散環境ではネットワークが生命線となる。物理的に分散しているノードを結ぶネットワークが機能不全を起こせば、分散環境そのものが瓦解しかねないからだ。

ネットワークに対する脅威

軍用のネットワークでは、動き回るプラットフォームが相手になることが多いので、必然的に無線通信を使用する場面が多くなる。筆者の口癖で「電波に戸は立てられない」から、通信内容が敵軍に傍受される可能性を考えなければならないし、逆に敵軍が妨害を仕掛けてくる事態は不可避と考えなければならない。

すると、ネットワークに対する脅威としては、まず電子戦が挙げられることになる。これは電波という、物理的なレイヤーに対する妨害が主体となる。しかしそれだけでは話は終わらず、もっと上位のレイヤーにおいても脅威は考えられる。マルウェアを送り込む等の手段によって仕掛けられる、サイバー攻撃が典型例といえよう。

小型化・分散化した戦闘環境においては、こうした脅威に直面しても機能を維持できる、抗堪性や回復力に優れたネットワークが求められる。さすがにデリケートな内容であるだけに、軍もメーカーも、こういう分野の話になると口が重い。「具体的には、どのようにして抗堪性や回復力に優れたネットワークを実現しているのか」と訊いても、答えは返ってこない。当然のことである。

第428回で取り上げたことがある、ノースロップ・グラマンの指揮統制システム「IBCS(Integrated Battle Command System)」で中核となるネットワーク「IFCN(Integrated Fire Control Network)」も、分散化した戦闘環境を支えるネットワークの一つ。

  • IBCSのイメージ。中核となるのはIFCNと呼ばれるIPネットワーク 資料:Northrop Grumman

具体的にどんな手を打っているのかについては口をつぐんでいても、「電子戦環境を想定した試験を実施しています」ぐらいのことは公にしている。ノースロップ・グラマンがIBCSの実証試験に関して過去にリリースしたプレスリリースに、そうした文言が見られる。その辺の事情は、IBCSに限らず他のシステムも同様であろう。

ABMSのインフラ構築案件

この記事は
Members+会員の方のみ御覧いただけます

ログイン/無料会員登録

会員サービスの詳細はこちら