2023年3月10日、大阪大学(阪大)の研究グループは、開発したアプリを使って幼児の睡眠習慣を改善できることを1年間の睡眠指導で実証したと発表した。では、このアプリを使った睡眠指導とはどのようなものだろうか。そして、どのような効果があったのだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。
世界一といわれる子どもの睡眠問題解決にアプリで挑む大阪大学
阪大の吉崎亜里香招へい教員、毛利育子准教授、谷池雅子教授らの研究グループは、独自開発したスマホアプリを用いて、幼児の睡眠習慣を改善できることを実証した。
ご存知だろうが、睡眠は、健康維持や心身のリフレッシュに欠かせない。この睡眠に悩んでいる大人も多いことだろう。
そして、睡眠の問題は大人だけにとどまらない。実は、日本の子どもの睡眠時間は世界一短いという課題もあるという。子どもにおける睡眠の問題は、後年の発達に悪影響をもたらすと言われているが、小児睡眠の専門家が非常に少なく、共働き家庭が多い日本では、子どもとの面談による睡眠指導が困難であるという背景があるのだ。
そこで阪大の研究グループは、スマートフォンを用いた双方向性睡眠啓発アプリ「ねんねナビ」を開発した。そしてその効果の実証に向け、東大阪市の36名の家庭を対象として、1年間の睡眠指導を行ったとのことだ。
「ねんねナビ」の仕組みとは? 利用後には思わぬメリットも
では、このアプリを使ってどのように睡眠指導を行うのだろうか。
まず、最初の1週間は家庭にて教育コンテンツを視聴する。そして、1週間の睡眠習慣の結果についてアプリを通じて報告してもらうという。報告を受けた阪大の睡眠専門チームは、その報告結果に基づいて各家庭に合う複数のアドバイスを送信。家庭側でそのうち1つを選択して、実行してもらう。こういった過程を繰り返し、睡眠改善サイクルを回していくものだ。
睡眠指導アプリとして、利用者に対してただ単にアドバイスを与えるものは世界にも存在する。しかし研究グループによると、今回開発したアプリは、利用者ごとの環境や養育状況なども考慮したサービスという意味で、世界で初めてのものだという。
実際、このアプリを使った被験者の中でドロップアウトした家庭はたった8%だったとのこと。そして1か月使用した被験者からは、起床が早まった、寝つきが良くなったなどといった睡眠習慣の改善が認められたという。さらに、養育者側に対するメリットとして、「育児に自信が出た」という声も多数寄せられたというのだ。
なお今回の研究成果は、科学誌「JMIR mHealth and uHealth」にも掲載されている。
いかがだっただろうか。このアプリは、親子どちらにとっても大きな成果が得られるものであり、とても意義のある研究内容だと感じる。睡眠だけでなく、家庭内での生活習慣やしつけなどの機能を高めることにも大きく貢献していることだろう。