2022年10月26日、東京工科大学は、AIを用いて微生物混合液中の各細胞密度を簡便に評価する方法を開発し、その原理を解明したとプレスリリースで発表した。では、この細胞密度を簡便に評価する方法とはどのような方法なのだろうか。どのような点がすごいのだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。

  • AIで微生物混合液中の細胞密度を簡便に評価する方法とは?

    AIで微生物混合液中の細胞密度を簡便に評価する方法とは?

AIを用いた微生物混合液中の各細胞密度の簡便な評価方法とは?

東京工科大学の中西昭仁助教、福西広晃講師、入谷康平助教、後藤早希助手、中村知世助手らの研究チームは、AIを用いて微生物混合液中の各細胞密度を簡便に評価する方法を開発し、その原理を解明した。

微生物叢は、産業界において付加価値のある材料を生産するために活用されている重要なもの。ちなみに微生物叢とは、生態系における生きた微生物の集合のことで、この微生物叢を安定して使用するためには、微生物叢の各細胞密度を制御することが重要だという。 そこで東京工科大学の研究チームは、微生物叢の吸光度スペクトルデータを用いて、AIにより細胞密度を評価する簡易システムを構築。具体的には、緑藻と従属栄養微生物の混合液から得られる吸光スペクトルデータをAIで解析し、これらのデータを網羅的に理解することで、条件に応じて細胞密度を予測するシステムだ。

  • AI技術を用いた微生物混液の吸光スペクトル解析による細胞密度の予測方法のコンセプト

    AI技術を用いた微生物混液の吸光スペクトル解析による細胞密度の予測方法のコンセプト(出典:東京工科大学)

この評価手法がすごい点は、微生物混合液から得る情報が、単純な吸光スペクトルのみであることが挙げられる。このような簡便な評価方法であるからこそ、産業に応用できる可能性を示したものと言えるのだ。また、AIで細胞密度の評価法を解析し、吸光スペクトルから細胞密度を予測したメカニズムを明らかにした点は、学術的にもとても価値が高い。

なお、同研究成果は科学誌「BioTech」オンライン版(2022年10月12日)に掲載されている。ぜひご覧いただきたい。

いかがだっただろうか。東京工科大学によると、将来的には、微生物叢から得られるトランスクリプトミクス(遺伝子転写量)やメタボロミクス(代謝物プール量または代謝フラックス)のデータソースをAIに学習させ、メタオミクス解析の実施や物質生産に関わる代謝フローの理解を目指すという。