2022年10月20日、MIT Media Labは、ウェアラブルデバイスを統合したマスクを開発したとの論文を、Nature Electronicsに発表した。このマスクの名は「cMaSK」という。では、このマスクはどのようなものなのだろうか。また、なぜMIT Media Labはこのようなマスクを開発しようとしたのだろうか。今回は、そんな話題について紹介したいと思う。

  • MIT Media Labが開発した「cMaSK」

    MIT Media Labが開発した「cMaSK」(出典:MIT Media Lab)

ウェアラブルデバイスを統合したマスクとは?

MIT Media LabのCanan Dagdeviren氏やJin-Hoon Kim氏らの研究チームは、ウェアラブルデバイスを統合したマスク「cMaSK(conformable multimodal sensory face mask)」の開発を発表した。では、彼らはなぜウェアラブルデバイスを統合したマスクを開発したのだろうか。

その一端には、昨今のコロナウイルスによるパンデミックを機に生じた、個人に最適なマスクを見つけることができているのか、本当に予防できているのか、という疑問があるようだ。その解決に向け、マスクのフィット感を測定するための使いやすいポータブルデバイスを作成し、さらには呼吸のパターン・皮膚の温度・フェイスマスク内の温湿度・マスクの位置など、生物学的条件と環境条件の両方を同時に測定することはできないか、というアイデアから、この開発はスタートしている。

では、cMaSKとはどのようなものだろうか。こちらの図をご覧いただきたい。

  • cMaSKが搭載するセンサやその仕組み

    cMaSKが搭載するセンサやその仕組み(出典:MIT Media Lab)

cMaSKは、スマートフォンなどのデバイスとBluetoothを介して通信し、さらにサーバへとデータが転送され処理や保存が行われる仕組み。マスクの外側に設置されたメインPCB(プリント回路基板)が中心的な回路部で、マスクの内側にはフレキシブルなPCBが周囲を縁取るように貼られている。このPCBには、複数個の静電容量センサパッドが配置され、マスクのフィット感を測定するという。なお、その測定には、センサパッドに金属板や人間の皮膚などの導電性物体が近づくことで、追並列で静電容量が増加するという原理を利用しているという。

そして、ちょうど口元にあたるマスクの中央部分には気圧センサが取り付けられ、そのほかにも温度計・湿度計・加速度センサなどが設置されている。ちなみに、cMaSKはリチウムイオン電池で駆動し、1回の充電で60時間以上動作するという。

MIT Media Labは、cMaSKを着用した男女5人ずつの被験者が、話す・歩く・走るなどのさまざまな活動を行っているときの各センサデータを収集し分析。その結果、顔の形とサイズの違いが要因で、男性よりも女性の方がマスクのフィット感が著しく低いことがわかったという。ただし、女性のマスクのフィット感は、小さめのサージカルマスクを着用することでわずかに改善される可能性があるともしている。

cMaSKの解説や装着の様子、そしてデータ測定

いかがだったろうか。MIT Media LabのCanan Dagdeviren氏は「靴にはさまざまなサイズがあり、靴をカスタマイズすることもできる。 しかし、マスクをカスタマイズしてデザインできないのはなぜだろうか?」と述べている。確かにごもっともだ。