「現実世界のデジタルコピーを実現!」そんなキャッチフレーズのプレスリリースが発表された。Symmetry Dimensionsの「SYMMETRY Digital Twin Cloud」というサービスだ。“誰でも”インターネット上のオープンデータや各企業が提供しているAPIを簡単に接続し、各分野ごとのデジタルツインを構築できるという。

今回は、このSymmetry Dimensions、そしてこの「SYMMETRY Digital Twin Cloud」について紹介したいと思う。

デジタルツイン技術に強みを持つSymmetry Dimensions

Symmetry Dimensionsは、2014年10月20日に設立された企業だ。

米国のデラウエアに本社を置き、空間や都市に関するデジタルツインの構築を得意としている。空間や都市における人流、交通、IoTなどのさまざまなデータをプラットフォーム上で“誰も”が統合し、解析し、仮説・検証・計画を行うことができるサービスを提供している企業だ。

代表は、沼倉正吾氏。これまでにゲームソフトやクラウド映像配信サービスに従事したり、XR(VR、MR、AR)やデジタルツインなどの技術開発にも精通している人物のようだ。

開発実績も豊富だ。例えば、2019年にNTTドコモと行った5G×デジタルツインの取り組みは、メキシコのグアダラハラや岡崎市において、ドローンやレーザースキャナで取得した大量の点群データを5Gを通じてドコモオープンイノベーションクラウドに収集し、デジタル処理を行い、サイバー空間上にデジタルツインを構築。これにより、現地にいかずとも、調査、計量を行うことができるようになったという。

  • デジタルツイン

    Symmetry DimensionsとNTTドコモが開発したデジタルツイン(出典:Symmetry Dimensions)

他にも2019年の国交省の超解像によるひび割れ検出の実証実験、2014年NHKエンタープライズとの全天球360度カメラの共同開発や360度ドラマ撮影などの実績を有している。

SYMMETRY Digital Twin Cloudとは?

では、冒頭で紹介したSymmetry Dimensions のSYMMETRY Digital Twin Cloudとはどのようなサービスだろうか?

SYMMETRY Digital Twin Cloudは、インターネット上のさまざまなオープンデータやインターネット上の各種APIで取得可能なデータを、3Dのデジタル地球上にマッピングして、ユーザー独自のデジタルツインを構築することができるサービスのことだ。

デジタルツインとは、過去の別の記事で紹介したことがあり、ご存知の方も多いかと思うが、デジタルツインとは「リアル空間にある情報を収集し、サイバー(仮想)空間にマッピングなどしてリアル空間を再現する技術のことだ。

  • データフロウ

    SYMMETRY Digital Twin Cloudのデータフロー(出典:Symmetry Dimensions)

上図がSYMMETRY Digital Twin Cloudのデータフローを示している。上部にインターネット上のいろいろなオープンデータやインターネット上の各種APIで取得可能なデータが示されている。

それらのデータをSYMMETRY Digital Twin Cloudに収集。そしてデータの分析・シミュレーション、高速処理、可視化などを実施し、最終的には、各端末やアプリケーションなどに様々なデバイスに表示可能だ。パートナー企業の各種データの解析エンジンを通じて多様な分析ができるという。

  • マルチデバイス

    マルチデバイス(PC/スマホ/XR)でのデジタルツインの可視化の様子(出典:Symmetry Dimensions)

このデジタルツイン技術は、とてつもないポテンシャルを有していると感じている。ビッグデータを高速で収集し、処理・分析して可視化することで、現在の状況を正確に確認したり、未来を予測したりすることができるのだ。

将来、超高速で処理、分析、可視化できたとしたら“リアルタイム”に現状確認、未来予想だって可能だろう。また、このようなデジタルツイン技術はおそらく、国ベース、自治体ベース、企業ベースで実施するのが当たり前になるだろう。冒頭で“誰でも”と紹介したと思うが、将来、個人ベースのユーザーが独自に分析し、可視化をすることができるとしたらとても興味深い。

いかがだっただろうか。もし個人ベースでのデジタルツイン技術が活用できるとなったら、リアルタイムでデジタルツイン技術が使えたら、どのような活用方法をあなたは考えるだろうか。

リアルタイムマーケティングなどのビジネスだろうか。県、市ではない町や周囲数百mくらいの自分だけの天気予報だろうか。旅行などの渋滞だろうか。どれだけそれらを実現できるに足る結果を示せるかは、インプットデータの収集方法、質、精度、数そして解析技術、可視化技術などに依存するだろうが、このように空想しているだけでも楽しい技術だ。