日本におけるサロンのグリーン革命を本格的に推進していくために、b-exは2022年3月15日、「グリーンプロジェクト」を発足させた。
このプロジェクトでは、全国のヘアサロンとゼロカーボンを目指していくというもの。ついに、美容サロンという業界にもゼロカーボンという考えが導入されたのだ。
では、このプロジェクトが発足した経緯は何なのか、このプロジェクトではどのような取り組みが計画されているのか、今回は、そんな話題について触れたいと思う。
「グリーンプロジェクト」の発足の背景
b-exは、「グリーンプロジェクト」を発足させた。b-exとは、ヘアコスメブランド「Loretta(ロレッタ)」やニュアンスヘアカラーブランド「THROW(スロウ)」で知られる日本のヘアケアの総合メーカー。
では、「グリーンプロジェクト」の発足の背景は何だろうか。b-exが2022年1月に10~60代の美容師200名を対象に実施したヘアサロン向けの環境意識に関する調査結果によると、「普段、環境問題について意識している」と答えた美容師が81.5%と多数であったのに対し、サロンワークの中では約4割を超える美容師が何もアクションを起こしていない、ということがわかった。
行動していない主な理由は、「何をしたらいいよいのかわからない」が54.4%、「業界的にケミカルな製品が多く難しい」が29.4%との回答。その結果から、多くの美容師が環境問題を意識しているものの、ヘアカラー剤をはじめケミカルな製品の取り扱いが多いため、自らの矛盾を感じ、後ろ向きになってしまうという課題を抱えていることがわかったのだ。
つまり、多くの美容師が、具体的なアクションに踏み切れていないのだ。
そして、美容業界では、環境への負荷が高いといわれるカラー剤など多く使用していることから、具体的なアクションを起こしているヘアサロンでさえ、「やれることが限られている」と、積極的に前進していくことを躊躇している様子が見られるのも実態としてあるという。 そこで、b-exは、ヘアサロンを起点にゼロカーボン社会の実現に向け、美容業全体をリードしていかなければと考えたのだ。
きっかけとなったのは、O'rightのゼロカーボンシャンプーの本格展開
2001年に設立された台湾の美容メーカーO'right(オーライト)は、2006年からサステナブルな製品作りに尽力している企業。
試行錯誤や紆余曲折を経て台湾国内で初めてヘアサロン商材におけるカーボンフットプリント認証を取得している企業でもある。
そして、2011年には、世界初となるゼロカーボンシャンプーを発売したのだ。ゼロカーボンシャンプーに向けて同社は、例えば100%再生利用可能なペットボトルを開発したり、さらには、世界で初めて再生可能なポンプを開発した。
他にも、自家発電による再生可能エネルギーの使用、水資源リサイクルシステムによる廃水ゼロの達成、泡切れの良い発泡剤による水の消費量抑制など、数え切れない工夫を重ねて、自社製品のゼロカーボンを実現しているのだ。
中にも、カフェインを使ったブランド商品がある。コーヒーかすから抽出したエキスをシャンプーの成分に利用し、容器にもコーヒーのかすを使用した100%生分解可能な素材を使っている。また、容器の底には、コーヒーの種が入っており、使い終わった後は土に埋めると、分解され将来コーヒーの木が育つのだ。
カフェインエキスが頭皮に良い成分であることは広く知られているが、これまでは合成的な生産技術しかなかった。O'rightでは、農業廃棄物であるコーヒーかすからナチュラルな手法で直接カフェインエキスを抽出する技術を、数年間にわたる研究によって開発したのだ。
そして、b-exはO'rightとの業務提携によって、O'rightの製品を日本国内へ展開。このO'rightのゼロカーボンシャンプーの日本への本格展開をきっかけに「グリーンプロジェクト」を発足させたのだ。
このプロジェクトでは、O'rightブランドと共に、カーボン排出量削減を目的としたヘアサロンが今後取り組むべき24の項目を「グリーンスコア」として定め、地球にやさしいサロンづくりを行っていく。
このプロジェクトに賛同するヘアサロンを「グリーンパートナーサロン」と認定し、グリーンスコアの精度を高めていきながら、セミナーや環境活動などのグリーン活動を行っていくという。
いかがだっただろうか。グリーンプロジェクトでは、業界のゼロカーボン化を目標に、1店舗でも多くのサロンが現実に目を向けて、できることを見つけ出し、始めるための後押しをしていくというものだ。
賛同したサロンには、商品の取り扱い状況などを考慮して、「グリーンプロジェクト」オリジナルステッカーを配布もしている。そして、2022年には2000店舗、2025年には5000店舗以上のヘアサロンに賛同してもらえることを目標に活動していくという。とても興味深い取り組みだ。