宇宙旅行を目指す岩谷技研は、5月第3週に北海道スペースポート(HOSPO)の1000m滑走路で気球放出実験を行うと発表した。

これまで岩谷技研は、宇宙旅行用の気球とキャビンを開発しさまざまな実験を実施してきたが、HOSPOを利用するのは今回が初めてだという。では今回岩谷技研は、どのような実験を実施するのか、そんな話題について触れたいと思う。

岩谷技研とは?

岩谷技研は、自社の事業概要について「高高度ガス気球、旅行用気密キャビンを設計、開発、製造し、気球による“NearSpaceからの宇宙旅行”を目指す旅客技術開発会社」と紹介している。

CEOは、岩谷圭介氏。以前より、気球による宇宙実験や宇宙映像制作で事業化していたというが、2016年に岩谷技研を設立。2020年の第三者割当増資のタイミングで、大型気球開発に舵を切ったという。

ちなみに、気になる用語がある。そう「NearSpace」だ。NearSpaceについては、次のように紹介している。

「岩谷技研が目指すNearSpaceからの宇宙旅行とは、単に地球の大気圏外に広がる空間(Space)に人を運ぶこと(Travel)ではなく、調和と秩序のとれた宇宙(Cosmos)へ行くことによって人々の意識や視野が広がる旅(Journey)を意図している」

このように彼らは、宇宙旅行を気球とキャビンを使って実現を目指しているのだが、この気球とキャビンの開発において目に留まるのは、特許だ。

例えば、「気球用のキャビン」がある。これは、真空で利用する乗客用キャビンにおいて、気密キャビン内外の動力伝達を、気密性を損なわず、穴をあけることなく可能とする手段を提供するものだ。

さらに、「衝撃緩和パラシュート」という特許もある。宇宙遊覧飛行を終えた有人宇宙キャビンを海上に着水させる際の衝撃を緩和するパラシュート技術だ。キャビンは、着水前にパラシュートを海水中に放出し、傘が広がり海水の抵抗を受けることによってキャビンを効果的に減速させ、着水時の衝撃を緩和することが可能になるという。

もう1つだけ紹介すると、「有人宇宙キャビン」がある。高高度気球はNearSpaceを飛翔する。そこでは空気がないので、宇宙と同等の装備が必要となる。岩谷技研では高高度気球用に特化させた合理的かつ安全なキャビンに関する特許を取得している。

他の特許についても出願中を含め、数多くのものがホームページに掲載されている。技術にも高い品質と信頼性を感じることができる企業だ。

岩谷技研が目指す宇宙旅行とは?

岩谷技研はこれまでに、宇宙旅行用のプラスチック気球と気密キャビンを開発。2018年6月には、淡水魚(ベタ)の打ち上げと帰還、2021年5月には、無人気密キャビン、自社製プラスチック気球の打ち上げと回収、2022年2月には、低高度有人係留飛翔試験、2022年3月には、25m級気球の打ち上げなどの実証実験に成功している。

では、今回の5月第3週に行う実験はどのようなことを実施するのだろうか。

それは、内製基板の長距離通信の可否を検証するために、生分解性筐体とゾンデ気球を用いた実験を行うという。

実験はHOSPOの1000m滑走路を利用し、データの検証と蓄積を行い、その先、最大41m級までの自社製プラスチック気球を用いた回収前提の各種実験も計画しているのだ。

  • 岩谷技研が開発したキャビン

    岩谷技研が開発したキャビン(出典:岩谷技研)

いかがだっただろうか。実は、これらの成功の軌跡や計画は、岩谷技研のホームページに掲載されている成長戦略に記載されている。

  • 岩谷技研の成長戦略

    岩谷技研の成長戦略(出典:岩谷技研)

成長戦略の後半には、時期は未定だが、77m級の6名乗りの気球の打ち上げが記されている。つまり将来、北海道スペースポート(HOSPO)からこの77m級の6名乗りの大型の気球で宇宙へと飛び立つ未来が近いということだ。とても楽しみだ。