最近、Facebookの友達リクエストが増えてきた。やはりチュニジア、エジプトでの「ソーシャルネットワーク革命」の影響も大きかったのだろう。報道の影響もあってか、日本でもFacebookを使う人が増えてきたようだ。もっとも、何で「ソーシャルネットワーク革命」などと言われるのか、筆者には理解できない。貧困、特に現在の食糧インフレの当然の行き着く先として発生したこれらの国々における今回の民主化運動では、ショートメールよりも便利な"道具"としてFacebookが使われただけである。
実名制を徹底させながらさらに巨大化するSNS
SNSについてはこのコラムの「第4回 インドと中国のSNS事情」と「第5回 巨大化するSNSは、やがて絶滅した恐竜のような運命に」でも書いた。しかし巨大化の波はまだ止まらない。もう少し見てみよう。
第5回で「Facebookのユーザー数が5億人を超えた」と書いたが、米国のマーケティング会社 Candytech社が運営する「Socialbakers.com」のデータによると、2011年1月時点でのユーザー数は6億3700万人を超えている。
それによれば、米国の1億5100万人が最大で、以下、インドネシア、英国、トルコ、なぜかフィリピンと続き、僅差でインドが6位である。半年くらいの間で1億人以上の増加である。インドの携帯電話利用者数の増加を見ているようだ。
インドだけを見てみると、この1ヵ月で15%、290万人の増加である。ちなみにわが日本の増加率はすごい。31%、58万人の増加である。筆者に対する友達リクエストが増えてきたのもうなずける。
これはチュニジアやエジプトの影響だけではない。映画「ソーシャル・ネットワーク」の影響もあるのだろうが、やはりFacebookの「実名制」がうけているのだろう。良質のSNSが求められているのだ。
もっとも、利用者数が減っている国もある。ルクセンブルク、シンガポール……ベトナムは46万人も減っている。減少率では87%減のバチカンがトップである。これは実名でないアカウントをFacebookが強制的に削除しているためのようだ。質の維持のためだから、これは当然であろう。Facebookの「売り」が実名制だからだ。
Twitterはどうか
Twitterの利用者数は2億人超と言われているが、筆者は現在のTwitter利用者数に関する知識は持ち合わせてはいない。もちろん、まだまだ増えているのだろう。筆者のTwitterのフォロワー数はFacebook以上に増えている。フォロワー数を増やすための対策など何もしていないが、それでも1日にフォロワーが10人増える日もある。おかげで筆者の独自コラム「続・インド・中国IT見聞録」のアクセス数も、今年になって急増してきた。しかし、こちらは何だかフォロワー数を競うためのフォローが目立つため、機械的なフォロー返しは行っていない。だから1週間後にはフォロワーが消えてしまうということも多い。
筆者はこの「フォローする」ということについて、やはり「その人物の考えを聞きたい」場合に行うのが本来の目的だと考えている。数千人をフォーローするのもいいが、それでは本当に聞きたい声を聞けなくなってしまう。筆者には無理である。
Twitterの良いところは、その「手軽さ」と「連携性」であろう。Twitterでつぶやけば、自動的にFacebookにもmixiにも反映されるし、簡単に使える。筆者は新聞もテレビも見ていないが、ニュースはTwitterで十分である。その方が国内、海外、区別なく見ることができる。
情報発信もTwitterは手軽である。以前ソフトバンク孫社長の利用方法について書いたが、最近では大阪府の橋下知事が「大阪都構想」などについて発信している。これは迫力がある。
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大阪府の橋下知事のツイート |
中国にFacebookは上陸できるのか
中国ではFacebookもTwitterも遮断されている。しかし遮断されているはずのFacebook利用者が中国本土に69万人いる。実に1ヵ月で133%の増加率である。中国のネット人口4億5700万人からみれば微々たる数だが、その伸び方はすごい。いくらネットを遮断しても、(使い方は容易ではないが)VPN経由でFacebookやTwitterを利用することができる。大連に駐在している日本人駐在員の中にも、この方法でTwitterやFacebookを使っている人がいる。実は筆者の前回大連出張時もVPNを利用した。
中国における利用者急増は、同社CEO マーク・ザッカーバーグ氏の昨年12月の訪中が契機となった。Facebookからすると、中国は最後に残された同社にとっての巨大市場である。黙って見過ごすことはできない。中国政府の規制を受け入れて上陸する、ブランドイメージが壊れるのを防ぐために上陸をあきらめる……どちらを選択するのか。しかし中国政府の規制といっても、それは中国だけにはとどまらない。当然、明日のインドもインドネシアも同じである。現在は中国だけだが、規制の流れは新興国全体に起きている。「恐竜」も難しくなってきた。
Facebookをどのように使うか
実はこれが筆者の悩みである。Twitterは特に悩まないが、TwitterのつぶやきをFacebookに連携させていても仕方がない。インドでは、企業のマーケティングにも消費者の商品選びにもFacebookが活用されている。企業のエグゼクティブは人的なネットワーク作りに活用している。インドでビジネスを展開している筆者からすると、「Facebookを使って、いかにインド研修を売り込めるか」である。まずはファンページを作ることから始めるしかないのか。
しかしFacebookの活用方法は様々だ。第4回でデリーの警察の交通違反取り締まりを紹介したが、今回は刑務所とSNSの話である。
インドの刑務所では、刑務所のFacebookファンページで菓子の出来上がり時間なども案内し、売上増につなげようとしているとのことである。米国では、もっととんでもない話があって、米国サウスカロライナ州では受刑者のFacebook利用禁止法案が議会に提出されたとのことである。つまり、これまでは受刑者がFacebookを使えていたようだ。利用者が6億3700万人にもなると、様々な利用者がいるものだ。
日本の刑務所の話題も。これは報道ではない。Twitterのつぶやきには位置情報を付加することができる。たまたまTwitterで地図を見ていたら、刑務所の中からつぶやいている人がいた。それも夜な夜な数分おきに……建物の形からして、監房の中ではなくて事務所棟の中のようだが、使い方には気をつけた方がいいのでは。
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つぶやきの"場所"をチェックできる「TweetMap」。Twitterの使い方にはご注意を…… |
著者紹介
竹田孝治 (Koji Takeda)
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エターナル・テクノロジーズ(ET)社社長。日本システムウエア(NSW)にてソフトウェア開発業務に従事。1996年にインドオフショア開発と日本で初となる自社社員に対するインド研修を立ち上げる。2004年、ET社設立。グローバル人材育成のためのインド研修をメイン事業とする。2006年、インドに子会社を設立。日本、インド、中国の技術者を結び付けることを目指す。独自コラム「(続)インド・中国IT見聞録」も掲載中。
Twitter:Zhutian0312 Facebook:Zhutian0312でもインド、中国情報を発信中。