ただいま2100万光年彼方のM101銀河内で、星全体が吹っ飛んだ光が、地球に届いています。数ヶ月くらい明るく、数年で光はなくなります。超新星爆発が起こったです。発見は2023年5月19日未明でした。もちろん爆発は2100万年前に起こったわけですし、遠すぎて望遠鏡を使うか天体写真を撮影しないと確認はかないません。

ところで、このM101銀河の超新星についてご紹介します。ちなみに今回はII型の超新星なんです。II型ってなんじゃらほいってな話もいたしますね。

超新星は、恒星全体が吹っ飛んでしまうできごとです。

爆発のさいの明るさは太陽の数億倍とか数百億倍に達します。

天の川銀河(銀河系)などの銀河は太陽が数十億とか数千億集まっている天体ですので、超新星はたった1つの恒星が銀河に匹敵する輝くを持つできごとなのです。すさまじいですな。

超新星というと、時々耳にするのはオリオン座のベテルギウスや、さそり座のアンタレスがまもなく爆発するという話です。これらの超新星が発生すると、満月並の明るさになり、昼間でもその輝きが見えることになります。また、爆発が仮に100光年以内とかで起こると、爆発により発生する光の他、大量の放射線で地球上の生命に危機的なことが起こるともされています。まあ、100光年以内に超新星爆発を起こしそうな星はないんですが。

超新星は1つの大型の銀河で100年に1個くらい発生すると言われています。銀河は「SIMBAD」という天文業界で最も有名なデータベースに載っている(つまり観測されたことがある)だけでも360万もあり、宇宙全体では何千億もあるとされています。仮に観測対象が100万とすると、100年に1回の発生確率でも、1年に1万個は超新星が発見できる勘定になります。実際に、超新星はロボット観測などもあってそれくらいは見つかっており、別に珍しいことではありません。

ただ、天文ファンが小型の望遠鏡で観測できるとなると、銀河の数はだいたい20~100個程度ですので。割合でいえば数年に1度くらいになります。

なお、一番身近な天の川銀河(銀河系:直径10万光年)では、過去400年超新星は発生していません。天の川銀河以外の近隣では、1987年に大マゼラン銀河(距離16万光年)という中規模な銀河で超新星が発生しました。これは肉眼でなんとか見える明るさでしたが、天の南極の近くにあり、日本では観察できませんでした。

最近、日本で観察できた超新星のうち、最も近くで起こったのはM82銀河(1200万光年)の超新星で2014年のことでした。また、M81銀河(1200万光年)にも1993年に超新星が出現しています。これらは天文ファンががんばれば観測できるレベルでした。

今回M101銀河(2100万光年)に発生した超新星は、久々になんとか天文ファンならなんとか観測できる銀河です。また、過去の連載でご紹介したスマート望遠鏡「eVscope」を使ったり、天体写真を撮影すれば結構写るのでございます。

参考:第205回 スマート望遠鏡「eVscope」は40万円のモバイル天文台だ!(前編)

  • M101銀河の超新星

ところで、今回の超新星はII型です。IIがあるってことはIもあるのですが、東明がかってに超新星らしいと思っているのはII型です。それは、ベテルギウスの様な、めったにない超巨大な星の最期の姿だからです。

超新星は恒星全体が吹っ飛ぶできごとですと最初に申し上げました。ではどうしたら吹っ飛ぶのか、吹っ飛ぶ理由によってI型とII型はわかれます。

元々は、超新星のスペクトルを撮影して、水素が爆発の周囲に存在する=吸収線として見えるのがII型。そうでないのがI型とされました。

I型はさらにIa型、Ib型などに分類されますが、このうちIa型は、恒星が輝いた燃えかすともいうような白色矮星が爆発する現象です。白色矮星は太陽が死んでしまった後にも残るとされていますが、核融合反応を起こさなくなった恒星が縮こまりながら余熱で発光している状態です。大きさは太陽直径の100分の1といった小ささになってしまいます。

で、そのままですとだんだん暗くなってそのうち見えなくなってしまうわけですが、たまたま隣に恒星がある(複数の恒星が回り合っている連星で、宇宙ではごくありふれている)と話が変わります。

その恒星が末期に膨れていくと、白色矮星に物質を注ぎ込んでいき、それがある限界(太陽の1.4倍程度)をこえると、白色矮星は自身を支えきれなくなって崩壊、爆発を起こします。

限界が決まっているので、あらゆるIa型の超新星は明るさが同じという性質があり、これを使って、超新星を含む銀河の距離の測定が行われました。その結果がダーク・エネルギーの存在の証拠とされて宇宙の加速膨張の証明でノーベル賞受賞につながったりしています。

恒星全体がいきなり爆発するので、表面に水素が、といった感じはなく、水素の吸収線は見られません。

一方、Ib、Ic、II型などは、太陽の8倍以上の重さの恒星が、一生の最期に中心部で鉄の核を作り始め、この鉄が熱を吸収して一気に恒星が縮み、中心に殺到した物質ができた鉄の核にはじき返されて吹っ飛んでしまうことでおこります。

中心から爆発が起こり、表面近くは分厚い水素がおおっているため、水素の吸収線が見られます。まあ、数日でそれも吹き飛ばされて吸収線が見えなくなっていくんですが。

なおIbとIcは、どういうわけか水素の吸収線が見られないものです。ヘリウムなら見られるというのもあるので、軽い水素が爆発の前に恒星の風で失われてしまったのかな(あやしいな、このあたり)ということでございます。

太陽の8倍以上の重さの恒星の最期、II型超新星。ベテルギウスやアンタレスのなれの果てを、いまM101銀河で見ることができます。この輝きは数週間はつづきます。M101は北斗七星の近所にあるので、ダメ元で北斗七星の写真を撮影すると超新星が写る「かも」しれません。

  • M101銀河の場所