2021年末に打ち上げられた、米欧の最新の宇宙望遠鏡「ジェイムズ(ジェームズ)・ウェッブ」。夏前からどんどんと撮影した天体画像を発表するようになっております。というかテンポが速過ぎて、ちゃんとフォローをしていなかったので、あらためて「スゲー」ぶりを楽しむ回でございます。

  • ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の外観イメージ

    ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の外観イメージ (C)NASA,ESA,CSA

この連載の第222回でご紹介した宇宙望遠鏡ジェイムズ・ウェッブマイナビニュース/TECH+では鳥嶋さんが丁寧な記事を連載されていますので、ご存じの方も多いですよね。従来の宇宙望遠鏡の2倍以上の大口径による高解像度と赤外線センサーを組み合わせることで、超遠方の宇宙がはじまって間もないころの天体から、太陽系外の惑星の生命探査など、天文学の極北を狙う望遠鏡でございます。

打ち上げから半年、2022年7月から続々と画像をリリース

さて、ジェームズ・ウェッブ望遠鏡、略してJWSTあるいはWebb望遠鏡は、2021年12月25日にヨーロッパのアリアン5型ロケットで打ち上げに成功。月より遠い100万km離れた重力安定点(ラグランジュ・ポイント))の周囲を回る軌道を目指しながら、2022年1月8日までに巨大な鏡を慎重に展開することに成功。1月24日には目標のラグランジュ/ポイント(L2)周囲に到着し、その後も赤外線観測には欠かせない冷却装置の運転など観測準備をすすめていました。

そして、7月11日(現地時間)各種機器の準備が完了し、科学観測の準備がととのったとアナウンスされたのです。そして、アメリカのバイデン大統領が陪席するなか、いきなり画像のリリースがありました。

いままで赤外線でとらえた中で最も遠方の銀河団SMACS 0723の画像でした。46億年かけて届いた光をとらえたものです。ちなみに、このくらい離れると46億年前の画像=46億光年ではなくもっと遠くです。46億年のあいだに宇宙は膨張しているので、そのぶん天体は遠くなっているのですな。

  • 銀河団SMACS 0723

    銀河団SMACS 0723 (C)NASA, ESA, CSA, STScI

なお、SMACSは、南天巨大銀河団探査というドイツのX線天文衛星ROSAT(レントゲン衛星)によるプロジェクトで確認された天体についている名前です。20世紀の終盤のプロジェクトで見つけた天体が、こんなんでしたでーということですな。

Webb望遠鏡は、さらに遠方の天体も調べるのを目的としていて、これは小手調べという感じですかね。

さらに、翌日12日(現地時間)には、さらにバラエティにとんだ画像が公開されました。もうすこし近めの銀河団(2~3億光年)「ステファンの五つ子」です。19世紀に天文学者ステファンが発見したのでこの名前があります。銀河同士が密接に影響をあたえあっている場所として有名です。そのために、天体の生成が速く進み、巨大な恒星も活発に生まれ、そのプロダクトであるブラックホールも大量生産されているってな場所ですな。

  • ペガスス座にあるステファンの五つ子

    ペガスス座にあるステファンの五つ子 (C)NASA, ESA, CSA, STScI

なお、Webb望遠鏡のセンサーの赤外線ではエネルギーが低めの暗い星とか塵の分布がよく写ります。高エネルギーのブラックホールや巨大な恒星、熱くなったガスは写りにくいのですが、そういうところが黒く抜けている感じが印象的でございますな。

そのほか、銀河系内の、南のリング星雲と、猛烈な勢いで恒星が作られているエータカリーナ星雲の一部、恒星のまわりをまわる惑星が恒星の前面を通過した変化のデータなどが公表されました。

まあ、バラエティにあふれる発表で「色んなことができるんだぜ! イェー!」といったノリがたっぷり現れているような気がいたします。楽しくてしょうがないという望遠鏡のチームや科学者たちの気持ちが表れたリリースでございました。

最近のリリース

さて、その後も、どんどん画像のリリースが続いています。そんなどんどん出して、研究発表で先取りされたりしないの? と心配になるようなくらいです。

まあ、ジェーム・ウェッブ宇宙望遠鏡を運用している宇宙望遠鏡研究所(ボルチモアのジョンズ・ホプキンス大学内にあるアメリカ天文学大学連合AURAの研究所)はハッブル宇宙望遠鏡の運用もしてきたところで、広報だけでも数十人のチームがおり、めっちゃ高価なプロジェクトを「うん、ゆるす、スゲーから税金使ったらいいんじゃね」と思わせてしまう手練れ集団ですので、戦略だろうなと思ったりするわけです。

銀河に関しては8月末にM74という渦巻き銀河の赤外線画像が公開されましたが、ボコボコと穴が空いたようなショッキングな画像でございます。これらの穴のところには赤外線でちょうど写るような温度の低い物体が少ないことを示しています。超新星爆発や生まれたばかりですぐ死んでしまう巨大な恒星(猛烈で高温の風を吹き出す)がたくさんある、活発な場所こそ黒く抜けてしまうのですな。

  • M74銀河の赤外線画像

    M74銀河の赤外線画像。色は赤外線の波長ごとにつけた疑似カラー (C)NASA, ESA, CSA, STScI

また、星を生み出す塵や低温のガスの分布が見えているのですが、あちこちから押された吹きだまり感がなんともすごく。また、かなり中心近くまでそんなものが続いているのがわかります。おもしろいなー。

また、二酸化炭素を太陽系の外の惑星から見つけたなんて、地味にすごい成果も8月末に発表しています。二酸化炭素は何かが燃えても作れますが、生命活動の兆候とも考えられます。地球の外にはまだ生命は発見されていないのですが、遙か彼方の惑星から望遠鏡の手で証拠をつかめたらおもしろいでしょうなあ。

ということで、今後も鳥嶋さんの連載に注目していただければと(自分で書かないのかい!)いいながら、おもしろいことがあったらまたたぶん、書きたくなっちゃうジェームズ・ウェッブ(Webb)望遠鏡なのでございます。