7月31日は15年ぶりの火星大接近

2018年7月31日は、15年ぶりの火星大接近の日でございます。ということで、界隈では火星モードに突入しておりますが、まあフツーは、3日前くらいから騒ぎ出すって感じっすかね。ということで、いま知っとけば、とりあえず先手が打てますよってな火星大接近話を少々。

えー、そろそろ、火星の接近または大接近が話題になっています。え? 新聞でもテレビにも載ってない? いやまあそうなんですが、たとえば世界的な週刊誌TIMEは6月18日付で短い記事を載せていますが、まあ、まだ天文ファンが知っているよというレベルですね。特集本などもボチボチ出ているようですが。ということで、このシーズン、4月に続いて、2回目の火星話で 火星は2年2か月ごとに地球に接近します。これは、太陽をめぐる火星を、より内側の軌道をめぐる地球が追い抜くときにおこるのですな。自動車レースでいうサイド・バイ・サイド、両者ならんで火星がぶち抜かれる。2年2か月ごとに周回遅れになっていくわけでございますな。

そして15年ごとに、特に地球に近づく「大接近」というのがあります。これは追い抜きポイントで両者の軌道が寄っている。まあ、火星がより、太陽に近いところにあるのが理由でございます。地球の軌道にも太陽に近い&遠いはあるんですが、なんちゅうか。下の表のように、その差が一桁違うんですな。なので、火星が太陽から遠いか近いかが効いてくるのでございます。

太陽に近いところ 太陽から遠いところ その差
火星 2.066億km 2.492億km 4260万km
地球 1.471億km 1.521億km 500万km

2018年7月31日は、まさにその大接近です。英語では、「Mars Close Approach」で、ふつうの接近も大接近もあんまり区別していないですね。"Closest"と「最上級」で書かれることもあるようですが。

火星の大接近は何が良いの?

さて、ということで大接近です。大接近、何がいいの? というのは、近い、明るい、目立つ、でかい(望遠鏡で見ると)。ということでございます。で、ともかく観察がしやすいのですな。今現在も夜10時を過ぎると東の空からやたら明るい赤っぽい火星が昇ってきます。なーんも図も用意しなくても、まず、これだけで間違うことはございません。

まあ、やたら目立つのでかつては、世間がざわついたことがよくありました。ニュースが届きにくい時代はなおさら、恐怖だったのではないですかねー。1877年の西南戦争と同じ年の火星の大接近は、西郷星と呼ばれた、なんてこともございましたし。前回2003年の大接近では、なんと! 阪神タイガースが優勝したのでございます! あ、本当ですよ。星野監督のもと、前年のBクラスから一転、金本(現監督)、今岡、矢野らの打線爆発。ぶっちぎりのリーグ優勝したのでございますよ。そして、次の接近の2005年も優勝して…から、えっと遠ざかっておりますな…。2014年は2位でクライマックスシリーズから日本シリーズで、この年も接近…ぶるぶる、火星の話に戻します。

現在の火星は巨大な砂嵐が発生中

さて、火星大接近は、でかい(望遠鏡で見ると)わけですので、どこでもサイエンスの127回128回でも紹介したように、いろんな発見が起こりやすいのでございます。とはいうものの、昨今は、火星探査機がゾロゾロはりついており、別に接近を待たなくても、いつでも火星については次々に情報がはいってきますし、つむじ風の生々しい写真などを撮影していたりしています。

今シーズンは火星の砂嵐がすさまじく、ついに全体を覆ってしまいましたが、これも探査機の映像でハッキリととらえられております。ちなみに、火星の探査機のうち、地上にいるオポチュニティ(米国)は、6月12日のニュースでは、太陽電池出力が、砂埃で落ちてしまい、スリープモードに入ったことが伝えられています。

別の探査機のキュリオシティ(米国)は、オポチュニティに対して、火星のほぼ反対側にあるのですが、ここまで砂嵐が拡大している様子がとらえられています。地球でもゴビ砂漠の黄砂が日本に届きますが、いくら火星が地球の半分のサイズだとはいえ、惑星の反対側まで到達するのですからすさまじいものがあります。砂嵐の様子は、キュリオシティのカメラでとらえられていますな

地球からも観測できる火星の砂嵐

ところで、これ地球からはわかるものなんでしょうーか? 実はわかるんですね。火星にはわずかに黒っぽい模様が確認できます。これは、だいたい砂漠の火星で、岩石が露出しているところなんでございます。また、北極や南極には氷が覆った「極冠」があり白っぽく輝きます。

そのわずかな機微が、この砂嵐がすさまじいと、なーんもわかんなくなっちゃう(シロウトには)のでございますな。

ちなみに、火星の観察をしている世界のアマチュア研究者が撮影している写真では、火星の模様がどんどんわかりにくくなっている様子がバッチリ写っています。日付ごとに整理されているので、5月までと6月の中旬以降の砂嵐が起こったあとの写真を比べてみてください。

ところで、この砂嵐、なーんで起きるか? というのはまだ完全には解明されていないようです。風が吹くのは、大気が温められるからで、海がない火星の場合は、北極や南極の氷が昇華して、大気が濃くなることと関係しているかーーという風に私などは教わってきました。火星は、地球と同じように自転軸がかたむいているので、季節があります。で、いまちょうど南半球が夏にむかっていて、かつ、大接近で火星が太陽に近いこともあり、南半球は特に熱い夏となり、砂嵐が発生しやすいという説もあるのですが、発生場所とかタイミングがどうもね? という感じでございます。はい、ムニャムニャなっちゃうので、これくらいにいたします。

火星の観察が楽しめるのは9月初旬ころまで

ということで、火星探査機やアマチュア研究者の望遠鏡でも、火星の異常が伝えられている昨今でございますが、まー、我々は、単純に明るくめだつ火星を楽しむというのでいいんじゃないかと思います。観察は、大接近の日だけでなく9月初旬くらいまでバッチリというか、接近の後のほうが夕方の空に見えるようになって観察が楽でございます。

また、そういう時なので、全国に200ばかりあるプラネタリウムも火星特集になっているところが目立ちます。最近のプラネタリウムは全天周映像を組み合わせて、なかなか見せますよ。動画や画像も豊富な専門家のプレゼンをお手がるに見られるのもええですな。

また、望遠鏡を使った観察会も各地で計画されているようです。それをつかまえて、望遠鏡をのぞかせてもらうのもええですな。ちなみに、プラネタリウムや観察会の情報などは、PAONAVが充実しています。千葉の幕張では、大接近直後の8月1・2日に、1万人規模の観察会だそうですよ。すごいですな。

ということで、火星が身近になる夏がやってきておりますという紹介でした。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。