7月28日朝4時30分から、東北より南の地域で、皆既月食が見られます。また、北海道もふくめた全国で部分月食が見られます。今回は、この月食の観察方法をサクっとご紹介し、「次はいつなの?」「いつ見えるとかどうやって調べるの?」という、リサーチ方法を簡単にご紹介いたしますね。今回は日本では、平成最後の月食ってこともわかりますよ。

皆既月食。それは数年に1度しか見られないレアな現象です。まばゆく輝く満月がみるみる欠けて、完全に欠けても赤黒く見える! その間1時間。みるみる変化するダイナミックレンジも魅力でございます。さらに、その観察には道具もいらず、かつ安全。都会でも田舎でもどこでも見られるのです。さらに、手軽に写真にも映せるのでございますー。動画をとるのもいいですよー。月明かりに照らされた景色が暗く沈み、復活するのも見ものです。

こちらのNASAのサイトに紹介されている動画などは、すばらしいですよー。

今年は、この皆既月食が1月と7月、日本で2度見られるという稀有な年です。このうち、1月31日は全国的に雲がちでしたが、よく晴れた関東を中心に、結構見られたところも多かったようですね。天文宇宙のポータルサイトアストロアーツさんも、投稿写真の特集をしています

  • 2018年1月31日に撮影された皆既月食の様子

    2018年1月31日に観測された皆既月食の様子 (編集部撮影)

なお、月食の起きる原理などは、どこでもサイエンス の第107回をごらんいただければ、東明渾身の? 解説が読めますよー。

7月28日の月食、観察の3ポイント 

  1. 月を見るだけの、カンタンな観察です。
  2. 時刻のチェック 朝4時30分から、その20分前くらいからの観察が吉。
  3. 東北以北は要チェック。皆既月食にならず、部分月食止まりの地域あり。

1. 月を見るだけの、カンタンな観察です。

まず、月食の観察は、欠けていく満月を見るだけのカンタンなものです。道具はいらないし、特別な準備も必要ありません。なにしろ月を見るだけですから。中秋の名月じゃあないので、月見団子もススキも必要ないですよ。

ただし、今回はかなり低空で起こるので、西南西がひらけているところがよいですね。冬に夕陽の名所というところだとグッドかと思います。

なお、まあどうせなら、もう少し何かないの? というかたは、双眼鏡や写真撮影がおすすめ。どこでもサイエンスの第122回をご参照あれ。

2. 時刻のチェック 朝4時30分から、その20分前くらいからの観察が吉。

月食の時刻は、世界共通です。世界中の人が同じ瞬間に月食を見るのですな。ロマンチックでございますな。ちなみに、今回はヨーロッパ、アフリカ、アジアのほとんど、オセアニアの人が同時に見ます。南北アメリカはハワイもふくめ、ほぼ見られません。

今回は、朝4時すぎから5時くらいまで見るとよいですよ。

というのですが、それは次のタイムテーブルに基づいて言っております。

  • 今回の月食のはじまりは、3時24分
  • 皆既月食が、4時30分~6時13分で、この最中に月が沈んで見られなくなり
  • 月食のおわりは、7時19分ですがとっくに月は見えなくなっている。

となっております。もちろん日本時です。

そう、日本では今回の月食は最後まで見られない。

皆既月食の状態のまま、月が地平線に沈んでいくのでございます。

全体を見きろうという場合は、月が沈むのが遅い、南西方面に移動するとよいのですが。

んー、ベトナムとかシンガポールなら全容が見られます。

3.北海道の大部分、青森・岩手の一部は皆既月食にならず、部分月食止まりの地域あり。

ということで、なんと皆既月食にもならずに終わっちゃう地域もあるのです。日本の北東がわの地域でございます。そうしたところでは「あと一歩で全部月が隠される部分月食」までが見られます。

見られるかどうかは、国立天文台のWEBサイトで地点を選べば計算してくれます。ここでは、主要な地点について表をつくっておきますね。

場所 皆既月食見られるか 月が沈む時刻 皆既月食が見られる時間
稚内 × 4時15分 なし
根室 × 4時5分 なし
札幌 × 4時23分 なし
江差(北海道) 4時32分 2分間
奥尻島 4時34分 4分間、ただし津波館など、西がひらけた場所のみ
函館 × 4時29分 皆既寸前で沈む
木古内(北海道) 4時31分 1分間(地形的に見えない可能性大)
松前(北海道) 4時33分 3分間
青森 4時32分 2分間
八戸(青森) × 4時30分 皆既寸前で沈む
盛岡 4時33分 3分間
久慈(岩手) × 4時29分 皆既寸前で沈む
宮古(岩手) 4時30分 皆既になりすぐ沈む
秋田 4時37分 7分間
山形 4時40分 10分間
仙台 4時38分 8分間
福島 4時41分 11分間

月食について色々調べるには?

先ほども書きましたが、月食の時間そのものは、世界中で一緒なのでございます。問題は、月食の進行中に、月が地平線より上にあって、見えているか? がポイントでございます。見えさえすれば、月食は大丈夫ですので。

で、この月が地平線より上か、下か、月食がどう進行するかを調べるのに便利なのは、国立天文台の「暦計算室」のWEBサイトでございます。なんといっても、メニューがすべて日本語なのがうれしいですよね。

色々おもしろそうなのがありますが、ずばり、月食各地予報を使うと、市区町村地名や、グーグルマップからの指定地点での、月食の経過がわかります。

  1. 左上にある「計算地点」で、地点の「指定方法」を「市区町村名を検索する」にします。
  2. 右側に選択メニューがでてきますので、アイウエオという頭文字から選ぶ方法で、地区町村名を選択します。
  3. 左のメニューから「計算内容」の下にある「指定地点の予報をする」{GO}とすると、上で指定した地点での予報が右の窓に表示されます。
  4. なお、左のメニューのオプションを選んで「指定地点の予報をする」{GO}をすると、それにしたがった表示になります。最初はめんくらうので、オプションなしのほうがわかりやすいでしょう。

次の月食は? といったことを調べるときは

さきほどの、国立天文台のWEBサイトでも調べられますが、総覧としてわかりやすいのがNASAの日食・月食(ECLIPSE)のWEBサイトです

そう、eclipse(エクリプス)といえば月食や日食などをいうのですね。PCソフトの開発環境カーナビのブランド名でもおなじみですが、こちらが元祖です。

さて、今回の目的には月食はLUNAR ECLIPSEのサイトがよいでしょう。

ページを開くとPAST、FUTURE つまりは、過去や未来の月食予報が載っています。それも前後数年ではなく、-1999年~3000年という豪快な範囲です。

このうち、Javascript Lunar Eclipse Explorerというのを使うと、主要な都市での過去や未来の月食の一覧表が表示できます。

Section 1

City Coordinatesでは、日本はASIAを選び、国順にソートされているので、JAPANを探すと、TOKYO、NAGOYA、OSAKA、SAPPORO、FUKUOKAの5都市でのデータが計算できます。

Section 2

Eclipse Type Search Criteriaでは、リスト表示するものを制限できます。

All eclipses(すべて)、Partial and Total(部分と皆既)、 Total(皆既のみ)の3種類ですね。

「すべて」と「部分と皆既」の違いは、すべてには、「半影月食」という月食とシロウトにはわからんなというのが含まれている点でございます。なお、半影月食については、どこでもサイエンスの第122回にちらっとだけ書いてありますのでご参照くださいませ。

Section 3

そしてCentury Selectionで、100年単位でリストを選択できるというわけですね。

リストの表記は英語のうえに、少し専門用語が入っています。

単語集として「日付(Calendar Date)」、「月食のタイプ(Ecl. Type)」、「半影月食の深さ(Pen. Mag)」、「本影月食の深さ(Umbral Mag)」、「半影月食(Pen. Eclipse)」、「部分月食(Partial Eclipse)」、「皆既月食(Total Eclipse)」、「月食の中心時間(Mid. Eclipse)」と読めれば大丈夫かと思います。

また、とりあえずは、月食のタイプで N(半影)、P(部分)、T(皆既)と表記されていることだけおさえておけば「次の皆既月食はいつ?」ということは調べられますよ。

ということです。で、あらかじめTotal、つまり皆既月食に絞り「東京」で見えるものとすると…次は2021年5月26日までおあずけってこともわかります。

日付 部分月食始 高度 皆既月食始 高度 中心時刻 高度 皆既月食終 高度 部分月食終 高度
2018年7月28日 03:24 +13 04:30 +02 05:22 -07 06:13 -17 07:19 -29
2021年5月26日 18:45 +00 20:11 +14 20:19 +15 20:26 +16 21:52 +27
2022年11月8日 18:09 +18 19:17 +32 19:59 +40 20:42 +49 21:49 +61
2025年9月8日 01:27 +40 02:31 +31 03:12 +24 03:53 +17 04:56 +05
2026年3月3日 18:50 +15 20:04 +30 20:34 +35 21:03 +40 22:17 +52
2028年12月31日 00:08 +76 01:16 +66 01:52 +59 02:28 +52 03:36 +39
2032年4月25日 22:28 +37 23:41 +40 00:14 +39 00:46 +37 01:59 +30

今回の月食は、日本では、平成最後の月食ということもわかるわけですねー。

参考:ちなみに、北米・欧州では来年2019年1月21日に皆既月食がございます。

書籍などの情報源は?

天文雑誌の直近号を買うのがよいでしょう。

ということで、早朝となかなか大変な時間ではありますが、ぜひ、平成最後の皆既月食楽しんでくださいませね。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。