CEATEC JAPAN 2018における村田製作所のブースでは、自社のセンサなどを活用した疲労ストレス計「MF100」による疲労とストレス度合いの測定や、仮想センサプラットフォーム「NAONA」の実演などを体験することができる。

手軽にストレスと疲労の度合いが分かる測定器

疲労ストレス計は、単3電池2本で駆動するポータブル機器で、村田製作所が開発した心拍・脈拍センサの利用先の探索を進める中、疲労科学研究所との協業により生まれたもの。具体的には、右手親指と左手親指を、機器のセンサ部に軽く触れて、安静にするだけで、測定は完了。医学的には5分の測定が必要とされているが、それでは普段の利用には難しいとのことで、90秒以上の測定が推奨されている(CEATEC JAPAN 2018の同社ブースの体験は60秒)。

  • 村田製作所の疲労ストレス計「MF100」
  • 村田製作所の疲労ストレス計「MF100」
  • 村田製作所の疲労ストレス計「MF100」の外観。金属部分に両手の親指を軽く充てて、目をつぶって落ち着いた状態で測定を行うことで、ストレスと疲労の度合いが分かる

この計測値を元に、疲労科学研究所のこれまでのエビデンスや分析アルゴリズムを元に、ストレスの度合いと、自律神経の乱れの解析結果をグラフとして表示することで、健全な心身の状態であるかどうかを知ることができる。

  • 測定アプリ
  • 測定アプリ
  • 測定アプリによる結果と、結果の見方

実は疲労ストレス計、測定ソフトウェアなどを含めたソリューションとして、健康経営を目指す企業や義務化されたストレスチェックの補完、バスやタクシー、トラック運送など、いわゆるプロドライバーの運航前/後のチェックなどでの活用に向けて、2018年9月より村田製作所のセット製品として発売を開始しているという。そのため、新たな市場の開拓の意味もあり、販売目標などは開示していないほか、今のところ、計測機器そのものは売り切りのみ(計測アプリは別途毎月の利用料が発生)だが、市場ニーズ次第では、機器はリースで提供、といったことも検討していきたいとのことで、もし興味がある企業担当者は、同社の営業担当に連絡をしてもらいたいとのことであった。

人間同士の関わり合いをデジタル化するNAONA

一方のNAONAは、場の雰囲気や盛り上がり、人間同士の親密度など、これまでデジタル化出来ていなかった情報を空間情報としてセンシングし、可視化したデータとして提供することを目的としてスタートしたプロジェクト。

360°マイクを搭載したコミュニケーションセンサで、その場にいる人の会話をデータとして収集。具体的には、音声の長さやテンポ、誰が話しているか、発言の割合、その会話に込められた感情はどのようなものか、といった情報を数値化することで、どういった関係性があるのか、といったことを見える化することができるというものとなっている。

  • NAONAのデモ
  • NAONAのデモ
  • NAONAで計測された会話データを元にして算出された結果のイメージ

数百人規模での音声データの解析も可能とのことだが、実用的には6~8人程度までの会議などでの利用が推奨されている。

  • コミュニケーションセンサ
  • コミュニケーションセンサ
  • 360°の集音が可能なマイクを搭載したコミュニケーションセンサと、USBコネクタで接続されるアドオンのセンサ各種。将来的にはサードパーティ製のセンサも接続が可能になるという

すでにKDDIや江崎グリコなどとの共同実証実験が3件、公にされているが、それ以外のパートナーともいろいろと取り組みを進めているとするほか、2019年4月から商用サービスの開始を予定しており、そこまでには、さらなるバージョンアップとして、会議などでよくある二人以上が同時に話す際の音声被りへの対応や、現在の計測データに加え、さらに会話の間や速さといったものにも対応していく予定とのことである。

  • NAONA Edge

    NAONAのハードウェアの核となるNAONA Edge

  • NAONAのパートナー

    NAONAを利用しているパートナーはすでに複数にわたる

未来を生み出すコンポーネント

村田製作所と言えば忘れてはいけないのが、さまざまな用途に対応する無数の電子部品群の存在である。今回のCEATEC JAPAN 2018でも、ソリューションのみならず、そうした電子部品の紹介も行われている。例えば新製品として、ヒアラブルウェア向けに開発された世界最小クラスの0.9mm×0.6mm×0.3mmの32.768kHz MEMS振動子は、既存の小型製品比で50%以上の小型化を実現しつつ、水晶振動子と同等の初期周波数精度(±20ppm)以上の周波数温度特性(160ppm以下)を実現している。

このほか、開発品として全固体薄膜電池や、圧電フィルムを使ったフレキシブルセンサといったものの紹介も行われている。全固体薄膜電池は、全固体であり、液漏れの心配がないという安全性と、薄いことによるフレキシブル性がポイント。会場でも曲げた形での実現を見ることができ、そのまま市場に出せるようなレベルに思えるが、電池としては容量をどうするか、といった問題のほか、電極をどうつけるのか、といった問題などもあり、2021年3月までにそうした細かい部分を含めた開発を終えたいとしていた。

  • 全固体薄膜電池のデモの様子
  • 全固体薄膜電池のデモの様子
  • 全固体薄膜電池のデモの様子
  • 全固体薄膜電池のデモの様子

一方、圧電フィルムを使ったフレキシブルセンサは、技術的に完成をしており、後はそれを利用したいカスタマのニーズに合わせた精度のすり合わせなどを行うだけとのことで、フレキシブル有機ELなどでの採用を目指したいとしていた。

  • 圧電フィルムを使ったフレキシブルセンサ
  • 圧電フィルムを使ったフレキシブルセンサ
  • 圧電フィルムを使ったフレキシブルセンサを用いたデモの様子