CDC 6600

「CDC 6600」はControl Data Corporation(CDC)が1964年に開発したスーパーコンピュータである。CDC 6600は、IBMのStretchと比較して3倍の性能を持っていた。

CDC 6600の発表に関して、IBMのT.J.Watson Jr.は、次のようなメモを幹部に送っている。

「先週、CDCは記者会見を開いて6600システムを発表した。このシステムを開発した部門の人員は"掃除夫まで含めても"たったの34人である。その内、エンジニアは14人、プログラマは4人で、博士号を持っているのは1人だけである。その博士も、比較的初級のプログラマである。外部から見ると、この開発部門はコスト意識が高く、ハードに働く、強い動機をもったチームであると考えられる。この控えめなサイズの開発を、わが社の巨大な開発と比較すると、最も強力なコンピュータを他社が提供し、業界のリーダーシップを奪われるということは理解しがたい。我々のやり方の何が悪かったのかを議論し、ただちに、それを変えることが急務である」

CDC 6600の主任設計者は、スパコンの天才と称えられる"Seymour Cray(シーモア・クレイ)"である。CDCはミネアポリスにあったのであるが、マネジメントからの干渉が多くて開発に専念できないということで、Crayは、離れたところに独立した研究所を作ってくれなければ辞めると経営者に談判して、彼の故郷のChippewa Fallsの自分の土地に研究所を作らせた。

Crayが「最も強力なコンピュータ」を作ることができたのは、Crayがアプリケーション、アーキテクチャからテクノロジとスパコンの全分野にまたがって深い理解を持ち、IBMに勝るバランスの良い優れた解を作ることができたのが大きいと思われる。

次の写真はCDC 6600のコンソールとキャビネットの一部を写したものである。

  • 2つの丸いCRTディスプレイを持つCDC 6600のコンソール(前景)と本体の十字型のキャビネットの一部

    図1.19 2つの丸いCRTディスプレイを持つCDC 6600のコンソール(前景)と本体の十字型のキャビネットの一部 (Computer History Museumで筆者が撮影)

そして、キャビネットは、次の図1.20のように、ユニット間の配線を最短にするため、十字型になっている。

  • CDC 6600のキャビネットを上から見た図

    図1.20 CDC 6600のキャビネットを上から見た図。ユニット間の配線を最短にするため、十字型のキャビネットになっている (出典:この図を含め、特別に記述の無いCDC 6600の図はJ.E.Thornton著のDesign of a Computer The Control Data 6600からの抜粋である)

この図1.20に見られるように、十字の各腕に4つのシャシーが収容されており、保守などのためにシャシーにアクセスする場合には、破線で書かれているように、本のページを広げるようにしてアクセスするようになっている。

そして、それぞれの腕の先端にはRefrigeration Unitと書かれたフレオンを使う冷凍機が置かれている。この冷凍機から、冷蔵庫のように冷却されたフレオンが供給され、プリント基板ユニットを冷却するという構造になっていた。

このフレオン冷却の採用で、高い発熱密度となる高密度実装を可能にしていた。十字型のキャビネットと高密度実装で配線遅延を短くするというのが、Crayの高速化の考え方である。

(次回は3月㏨に掲載します)