「全周を見るためのセンサー機器」については第419回で紹介したが、今回は同じ全周監視でも、無人偵察機の話を。以前に取り上げた早期警戒機とは事情が異なり、それがセンサーの構造や設置要領にも影響するところが面白い。
全周監視の機能を持つプレデター一族
全周監視の機能を持つ無人偵察機というと、なじみ深い(?)ところでは、ゼネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ(GA-ASI)製のプレデター一族。つまりMQ-1プレデターやMQ-9リーパー、リーパー派生型のガーディアンやシーガーディアンがある。
いずれも、センサーは胴体下面に集中している。モデルによって陣容は違うが、機首の下面に電子光学/赤外線(EO/IR : Electro-Optical/Infrared) センサーを載せるところは共通している。
これこそがプレデター一族の「眼」である。赤外線センサーを併用しているから、昼間だけでなく夜間でも見える。
胴体下面にセンサー・ターレットを突き出す
このセンサーは独立したターレットになっていて、旋回・俯仰が可能なターレットに、各種のセンサーを組み込んである。設置位置は機首下面だが、ターレットは独自に旋回・俯仰できるので、機体の下半分であれば、機体の飛行方向に関係なく、どちらにも指向できる。
その代わり、下面に付いているから機体の上側は見えない。胴体や主翼が視界を妨げるし、そもそも胴体下面にターレットが付いているのだから、上に指向するのは無理がある。
しかし、このセンサー・ターレットは頭上から地上・海上を見下ろして監視するためのものだから、これでかまわない。その辺の事情は他の無人偵察機も同様で、たいてい、EO/IRセンサー・ターレットを胴体下面に取り付けている。
ただし小型の機体になると、機首に前下方向きのセンサーを組み込むものもあり、例えばスキャンイーグルがそれ。その場合、後方は見づらくなる。発展型のRQ-21インテグレーターも、ターレットの形状は異なるが、やはり後方は見づらい配置になっている。
機体側への影響
では、こういう形でセンサー・ターレットを取り付けようとした場合、機体の立場からすると、どんな影響が考えられるだろうか。
まず、胴体内部にペイロードのためのスペースを必要とする。センサー・ターレットの旋回・俯仰部は胴体の下面に突き出ているが、それを駆動させるためのメカはターレットの上部に取り付いていて、これは胴体内部に組み込まれるからだ。
また、顧客の求めに応じてセンサー・ターレットの機種を変更することがあるから、それに対応できる設計も求められる。RQ-1プレデターを武装化してMQ-1プレデターにしたときに、センサー・ターレットをレイセオン(当時。現RTX)製のAN/AAS-44(V)に変えて、ターレットが大きく、重くなったのはその一例。大きく、重くなれば場所をとるし、機体構造の強度や前後の重量バランスにも影響が出る。
面白いことをしているのが、スキャンイーグルの発展型であるスキャンイーグル2。なんと、機首そのものをまるごとターレットにしてしまった。主翼よりも前方の機首全体が、機体の前後軸線を中心として回転するので、これで左右に首を振ることができる。
その回転する部分の前方から下方にかけて、左右軸線を中心として上下に回転するセンサーが組み込まれている。左右の首振りがなくても前方から下方にかけてを視界に収めるが、左右の首振りが加われば、カバーできる範囲が広くなる。
ただしこの方法では、機体とセンサーは実質的にワンセットであり、搭載するセンサー・ターレットを自由に選ぶのは難しくなる。また、ターレットが下面に突き出していないので、後方を見るのは難しくなる。これは機体の針路を変えてなんとかしてください、ということであろうか。
例外的なグローバルホーク
ところが何事にも例外はあるもので、RQ-4グローバルホークは、いささか様相を異にする。
例えば、機首の下面に付いているEO/IRセンサーは筒型で、左右に首を振る構造。また、ブロック40が搭載する対地監視用の合成開口レーダー(SAR : Synthetic Aperture Radar)は、側面向きに固定された平面アンテナを持つ。だから、EO/IRセンサーを使用する際には捜索対象が真下から側方にかけて、対地監視用レーダーを使用する際には捜索対象が側方に来るように飛ぶのが望ましい。
ここでもまた、センサーが飛び方に影響を及ぼしていると考えられるわけだ。
著者プロフィール
井上孝司
鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。このほど、姉妹連載「軍事とIT」の単行本第4弾『軍用レーダー(わかりやすい防衛テクノロジー)』が刊行された。