第16回の連載でも述べたように、Excelの複合グラフは「集合縦棒」と「積み上げ縦棒」の混在が不可能な仕様になっている。とはいえ、こういった形式のグラフを作成したい場合もあるだろう。そこで今回は、「集合縦棒」+「積み上げ縦棒」の形式でグラフを作成するテクニックを紹介していこう。
「集合縦棒」と「積み上げ縦棒」は混在できない!?
まずは、グラフ作成に用いたデータ表から紹介する。以下に示した図は、あるチェーン店の売上を「1年前の同月の売上」(2019年)と比較した表となる。
このチェーン店は次々と新店舗を出店しているため、1年前よりも全体の店舗数は増えている。そのため、2020年のデータは「既存店」と「新規出店」に分けて売上を集計している。
このようなデータをグラフ化して比較するときは、2019年を「集合縦棒」(通常の縦棒)、2020年を「積み上げ縦棒」(既存店+新規出店)で示す必要がある。これを複合グラフで実現してみよう。
第16回の連載で紹介したように、まずは「集合縦棒」のグラフを作成する。
続いて、2020年の「既存店」の系列を「積み上げ縦棒」に変更すると、他の系列も自動的に「積み上げ縦棒」に変更されてしまう。
このため、変換後のグラフは単なる「積み上げ縦棒」のグラフになってしまう。これでは、売上を比較することはできない。
今回、作成したいと考えているグラフは、以下の図のような形式のグラフとなる。しかし、残念ながら、通常の手順では、このようなグラフを作成することはできない。
参考までに、このグラフで示したい内容を紹介しておこう。
・各月の売上は前年(2019年)より伸びている
・ただし、「既存店」の売上は前年より下落している
・「新規出店」により店舗数が増えた結果、全体の売上が増えただけ
数値データをグラフ化することで、これらの傾向を端的に示したいのだが、どのようにグラフを作成すればよいだろうか? 詳しく説明していこう。
「集合縦棒」と「積み上げ縦棒」を混在させるテク
先ほど示したような複合グラフを作成するには、グラフの基となるデータ表を加工していく必要がある。まずは、各月の下に「空白行」を挿入する。
続いて、「2020年のデータ」を1つ下の行へ移動する。この作業は、
- 「2020年のデータ」の範囲を選択する
- 「緑色の枠線」を下へ1行分だけドラッグする
という手順で操作していくと実行できる。
その後、表の罫線などを指定しなおすと、以下のような形式の表に加工できる。
この表全体を選択して「積み上げ縦棒」のグラフを作成すると、以下の図のようなグラフが作成される。「目標とする形」に少し近づいてきたのではないだろうか?
念のため、このグラフの状況を補足しておこう。このグラフは単なる「積み上げ縦棒」のグラフでしかないが、データの一部が欠けているため、見た目上は「集合縦棒」+「積み上げ縦棒」の複合グラフになっている。
たとえば、「4月」の1行目のデータを見ると、
・「2019年」のデータは存在する
・「2020年」のデータは空白
という状況になっている。よって、その「積み上げ縦棒」には「2019年」のデータだけが表示される。つまり、縦棒が1つだけ描画されることになる。
一方、「4月」のデータの2行目は、
・「2019年」のデータは空白
・「2020年」のデータは2系列分のデータが存在する
という状況になっている。よって、「2020年」の2系列(既存店と新規出店)だけが「積み上げ縦棒」が描画されることになる。
このような仕組みで「集合縦棒」+「積み上げ縦棒」のグラフを実現しているのが、今回紹介するテクニックの骨子となる。
ただし、先ほど示したグラフは、お世辞にも「見やすい」といえる出来栄えにはなっていない。このグラフを見やすくするには、各月の間にも「空白行」を挿入してあげる必要がある。
これで「目標とする形」にかなり近づいてきた。続いては、さらにグラフを見やすくするために「横軸のラベル」を改善していこう。
横軸のラベルを見やすくするには?
今回のグラフは、各月について「2019年」と「2020年」の売上を比較することが最大の目的となる。これをグラフで分かりやすく示すには、「ラベルとなる文字」を階層化して配置する必要がある。
以下の図に示した位置に列を挿入し、ラベル表示用の「年」を入力する。
この表全体を選択し、もういちど「積み上げ縦棒」を作成してみると、以下の図に示したようなグラフを作成できる。
「横軸のラベル」が階層化され、かなり見やすいグラフになったといえる。ただし、各月の間に余白を設ける「空白行」もグループ化されているのが問題だ。
この問題を解決するには、半角スペースなどの「見えない文字」を入力して、グループを分断してあげる必要がある。具体的には、以下の図に示したセルに「半角スペース」を入力すればよい。
すると、適切ない位置でグループ化が行われるようになり、以下の図のように「横軸のラベル」のレイアウトが改善される。
あとは、グラフの見た目を整えていくだけだ。2020年の「既存店」と「新規出店」の系列に同系統の色を指定し、縦棒を太くする(「要素の間隔」を小さくする)、影を追加する、文字の書式を調整する、といったカスマイズを行うと、以下の図のようなグラフに仕上げられる。
このように「グラフの基となる表」を加工することで、「集合縦棒」+「積み上げ縦棒」のグラフを実現することも可能である。
そのほか、このテクニックを応用して、「積み上げ縦棒」が2つずつ並ぶグラフを作成することもできる。最後に、その具体例を簡単に紹介しておこう。
今回の連載で紹介したテクニックは、頻繁に利用するものではないかもしれない。しかし、色々な場面に応用できるテクニックとなるので、その仕組みをよく理解しておくと、いずれ役に立つだろう。