これまでの連載では、Canvaを使ってプレゼンテーション用のスライドを作成する方法を紹介してきた。このほかにも、名刺やショップカード、チラシ(パンフレット)、ポスター、アイキャッチ画像などをCanvaで作成することが可能だ。Canvaの基本操作を知っている方なら誰でも手軽に挑戦できるので、ぜひ試してみるとよいだろう。

多用途に使えるデザイン作成ツール

本連載では、Canvaをプレゼンテーション(発表)に活用する方法を紹介してきた。最終回となる今回は、その番外編として、名刺やショップカード、チラシ(パンフレット)、ポスター、アイキャッチ画像などをCanvaで作成する方法を紹介していこう。

  • 名刺、パンフレット、アイキャッチ画像などの作成

Canvaはプレゼン専用のツールではなく、「デザインを作成するためのツール」として提供されている。つまり、プレゼンテーション機能はCanvaの一部分でしかない訳だ。せっかくCanvaの使い方を学んだのだから、色々な用途に積極的に活用していくとよいだろう。Canvaの魅力をさらに実感できるはずだ。

名刺、ショップカードの作成

最初に紹介するのは「名刺」をCanvaでデザインする方法だ。名刺は会社から支給されるケースが多いため、自分でデザインする機会は滅多にないと思われるが、参考として読み進めて頂ければ幸いだ。もちろん、名刺を自分で作成する個人事業主の方にとっては、すぐに役立つ内容といえるだろう。

名刺をデザインするときは、Canvaのホーム画面で「印刷製品」のアイコンをクリックし、「マーケティング」の分類から「名刺(横)」を選択すればよい。

  • 用紙サイズに「名刺(横)」を選択

すると、名刺サイズ(9.1×5.5cm)の編集画面が表示される。まずは、テンプレートを検索していこう。適当なキーワードを入力し、好きなテンプレートが見つかったら、そのサムネイルをクリックする。

  • テンプレートの検索

名刺のテンプレートは「表面のみ」と「表面と裏面の両方」の2種類がある。両面のデザインが用意されている場合は、以下の図のような画面が表示される。表面と裏面の両方(2ページ)にテンプレートを適用したい場合は、「両方のページに適用」をクリックすればよい。どちらか一方だけを採用する場合は、そのサムネイルをクリックしてテンプレートを適用する。

  • テンプレートの適用

あとは、氏名や社名、住所、電話番号などの文字を書き換えていくだけ。この操作手順はスライドの文字編集と同じなので、詳しく解説しなくても理解できるだろう。もちろん、文字の書式を変更することも可能だ。よく分からない方は、本連載の第4回第5回を参照しておくとよい。

  • 文字の編集

必要に応じて「裏面」も編集していこう。こちらも特に変わった点は見当たらない。基本的に文字を修正するだけなので、スライドを作成できる方なら問題なく作業を進められるはずだ。

  • 裏面の編集

デザインをカスタマイズしないのであれば、名刺の作成は「文字編集」だけで済むケースが多いといえる。よって、数分で作業を終えることも可能だ。

なお、文字数が多いときは、若干のレイアウト修正が必要になるケースもある。上図に示した例の場合、普通に住所を日本語で入力すると、テキストボックスから飛び出してしまう。そこで、住所の入力欄(テキストボックス)を複製し、一方に「郵便番号」、もう一方に「住所」を入力するように工夫している。

このように名刺の作成は、カスタマイズとは呼べない程度のレイアウト修正で済むケースが多いといえる。よって、文字の編集方法さえ理解していれば「誰でも名刺を作成できる」といえるだろう。

そのほか、名刺と同じサイズになる「ショップカード」の作成にも対応している。この場合は、「コーヒー」や「パン」、「自動車」、「美容室」、「病院」など、業種や関連用語で検索していくと最適なテンプレートを見つけられる。

  • ショップカードを作成する場合

上図に示した例のように、裏面がスタンプカードのデザインになっているテンプレートもある。つまり、それだけ幅広い用途にCanvaを活用できる訳だ。

ホーム画面で選択した「名刺(横)」の項目は、用途を指定するものではなく、用紙サイズを「名刺サイズ」に指定する、と考えるのが基本だ。よって、名刺サイズのデザインなら用途が「名刺」でなくても作成することが可能である。

チラシ、ポスターの作成

続いては、「チラシ」や「ポスター」を作成する方法を紹介していこう。1枚のA4用紙で構成される「パンフレット」もチラシの一種と考えられるだろう。

これらのデザインを作成するときは、「印刷製品」のアイコンをクリックし、「マーケティング」の分類から「ポスター」または「チラシ」を選択すればよい。

  • 用紙サイズの選択

「ポスター」を選択した場合はA2サイズ、「チラシ」を選択した場合はA4サイズの編集画面が表示される。こちらも“用途”ではなく、“用紙サイズ”で項目を選択するのが基本だ。なお、どちらもA判の用紙サイズになるため、写真の解像度が十分であれば、A2/A3/A4/A5といったサイズに拡大・縮小して印刷することも不可能ではない。

「チラシ」や「ポスター」を作成するときも、最初に行うべき作業はテンプレートの検索となる。いくつか例を示しておこう。

以下の図は、「展示会」のキーワードでテンプレートを検索した例だ。商品や住宅などの展示会に使えそうなテンプレートを数多く見つけることができる。

  • テンプレートの検索(1)

続いては、「セミナー」のキーワードで検索した例だ。この場合は、ビジネス系や金融系などのセミナーに適したテンプレートが一覧表示される。

  • テンプレートの検索(2)

最後は、「カフェ」のキーワードで検索した例だ。飲食店のオープン告知や店舗紹介などに使えそうなデザインが豊富に用意されていることを確認できるだろう。

  • テンプレートの検索(3)

このように、適当なキーワードで検索するだけで、さまざまなデザインのテンプレートを発見することができる。どのテンプレートも「文字」や「写真」を自由に差し替えられるため、少しくらい用途が違っていても“デザインの雛形”として十分に活用できるだろう。

好きなテンプレートが見つかったら、そのデザインを用途に合わせてカスタマイズしていく。最初に、デザインの重要な構成要素となる「写真」を差し替えていくとよいだろう。差し替える写真は、Canvaが提供する写真素材から選択してもよいし、自分がアップロードした写真を利用してもよい。この操作手順については、本連載の第6回第8回で詳しく解説している。

  • 写真の差し替え

あとは、テンプレートの「文字」を書き換えていくだけ。デザインの大枠は完成しているので、センスに自信がない方でも十分に対応できるだろう。

  • 文字の編集

そのほか、サービス内容の紹介、イベント告知、飲食店のメニュー、アルバイト募集、など、A判の用紙サイズで作成するデザインを自由に作成することが可能だ。テンプレートを見ているだけでも、さまざまな用途にCanvaを活用できることを確認できるだろう。

SNSにも使えるアイキャッチ画像の作成

InstagramやFacebookなどのSNSで使用する「アイキャッチ画像」、YouTubeのサムネイル画像、ネット広告用の画像など、画像ファイルのデザインをCanvaで作成する機能も用意されている。この場合は「SNS」のアイコンをクリックして用途を選択すればよい。

  • インスタグラム向け画像の作成

画像のサイズが決まっている場合は、ピクセル数を指定して編集画面を開くことも可能だ。この場合は、以下の図に示したアイコンをクリックし、「幅」と「高さ」に数値を入力してから「新しいデザインを作成」をクリックすればよい。

  • ピクセル数でサイズを指定

あとは、テンプレートを検索して、用途に合わせて内容をカスタマイズしていくだけ。以降の操作手順は、プレゼン用のスライドを作成する場合と基本的に同じである。

  • テンプレートの検索と適用

デザインを作成できたら、「ファイル」メニューから「ダウンロード」を選択する。続いて、「JPG」や「PNG」などのファイル形式を指定し、「ダウンロード」ボタンをクリックすると、作成したデザインを“画像ファイル”としてダウンロードできる。

  • デザインファイルのダウンロード(1)

  • デザインファイルのダウンロード(2)

デザインのダウンロードについては、第17回の連載で詳しく解説しているので、よく分からない方はあわせて参照しておくとよいだろう。

作成したデザインを印刷するには?

最後に、デザインの印刷について補足しておう。「名刺」や「チラシ」などは、最終的に印刷して使用するのが一般的だ。よって、「どのように印刷するか?」も視野に入れておく必要がある。

最も手軽なのは、Canvaに印刷を依頼する方法だ。デザインの編集画面を開き、画面右上にある「Canvaで印刷する」をクリックすると、以下の図のような設定画面が表示される。

  • Canvaに用意されている印刷サービス

ここで、印刷するページ、用紙サイズ、用紙の種類、仕上げ、数量(枚数)などを指定し、届け先の住所、氏名を入力すると、Canvaが印刷&配送を代行してくれる、というサービスだ。

当然ながら、こちらは有料のサービスとなる。よって、手順の最後で決済方法を入力する必要がある。支払い方法には、クレジットカード/PayPal/Google Payの3種類が用意されている。

普段から利用している印刷会社がある場合は、デザインをPDFとしてダウンロードし、それを印刷会社に送信してもよい。ただし、印刷会社が対応する形式でPDFをダウンロードしておく必要がある。

  • PDF形式に変換してダウンロード

トリムマークの有無、色の保存方法(RGB/CMYK)などを印刷会社に確認して、それぞれの印刷会社が対応する形式でPDFをダウンロードしなければならない。特にCMYKの指定は、有料版のCanvaを契約している方しか選択できないので注意が必要だ。

そのほか、「プリンターを使って自分で印刷する」といった方法も考えられるが、業者に依頼する場合と比べると印刷品質は低下してしまう。インク代や用紙代、印刷にかかる手間(人件費)なども考慮すると、コストパフォーマンスはケース by ケースになるだろう。いずれにしても、「印刷する場合は多少の出費が必要」と考えておくべきだ。

ということで、本連載は今回で終了となる。最後はプレゼンとは違う話になってしまったが、Canvaを有効活用するという意味では役に立つ情報になるだろう。これまでPower PointやWordしか使ってこなかった人は、「Canvaという選択肢もある」ということを覚えておくと役に立つはずだ。特にデザインが重要になる文書は、Canvaの方が適しているケースも少なくない。ぜひ、実践して頂ければ幸いだ。