この半導体ニュースのまとめ

・STが産業機器、車載機器、ロボットを横断する統合STM32マイコン・プラットフォームを発表
・アーキテクチャやIP、ソフトウェア、開発ツールを異なる用途や製品世代で再利用可能
・車載・機能安全向け「STM32A」3製品をサンプル出荷し、2027年に本格提供へ

STMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)は、産業機器、車載機器、ロボット向けのSTM32マイコンを共通基盤で展開する統合プラットフォームを発表した。

Arm Cortex-Mプロセッサを中核とする共通アーキテクチャと、STM32Cubeを中心とした開発環境を活用し、異なる市場や製品世代の間でソフトウェア、IP、開発ツールを再利用できるようにする。

同戦略の一環として、高い安全性が求められるシステムや車載機器を対象とする新製品ファミリ「STM32A」を追加した。最初の3製品はすでにサンプル出荷を開始しており、2027年の本格提供開始を予定している。

産業機器と車載機器で共通化が進む技術要件

産業機器や車載システムでは、リアルタイム制御、機能安全、サイバーセキュリティ、コネクティビティ、AI処理など、共通する技術要件が増えている。

また、フィジカルAIの普及に伴い、ロボットや自動車、産業設備には、センサから得た情報を現場で処理し、周囲の状況に応じて機械をリアルタイムに制御する能力が求められる。

一方、用途ごとに異なるマイコンや開発環境を採用すると、ソフトウェアの移植や再検証が必要となり、開発期間とコストが増加する。

統合STM32プラットフォームでは、用途ごとに必要な性能、認証、製品ライフサイクルへ対応するマイコンを選びながら、実績のあるソフトウェアや設計資産を別の製品へ展開できるようにする。

STのマイクロコントローラ・デジタルIC・RF製品グループ 社長のRemi El-Ouazzane氏は、新製品を採用するたびに開発をゼロからやり直すのではなく、市場や製品世代を越えて利用できる共通基盤が必要だと説明。STM32を幅広い産業分野で利用できる標準的なマイコン・プラットフォームへ発展させるとしている。

車載・機能安全向けに「STM32A」を追加

新たに追加するSTM32Aファミリは、既存のSTM32プラットフォームを車載システムや機能安全が重視される用途へ拡張する製品群となる。

最初に投入するのは「STM32A4」「STM32A5」「STM32A9」の3製品。STM32A4は、エントリレベルの車載ローカル制御ユニットと安全システムを対象とする。STM32A5は、産業用オートメーション、ロボット、エネルギーシステムにおける中規模クラスの安全性重視アプリケーションに加え、車載用途にも対応する。STM32A9は、リアルタイム制御、低遅延、Ethernet、予測可能な通信が求められる安全性重視のマルチドメイン制御を対象とする。

STM32Aを統合プラットフォームへ追加することで、産業機器やロボットで開発したソフトウェア資産を車載用途へ展開するなど、用途間の移行を容易にする。各市場で求められる安全性、セキュリティ、認証、長期供給の要件には個別に対応しながら、開発モデルとソフトウェア基盤を共通化する方針だ。

STM32CubeとArm Cortex-Mを共通基盤に

統合プラットフォームでは、Arm Cortex-Mプロセッサと共通するアーキテクチャ設計原則を採用し、STM32マイコンの各ファミリ間で一貫した開発環境を提供する。

開発者は、既存製品で検証したソフトウェアやIPを新たなSTM32製品へ移行しやすくなる。従来から利用してきた開発フローや技術知識を継続して活用できることも利点となる。

ソフトウェア開発環境としては「STM32Cube」とArmの開発エコシステムを利用する。ソフトウェアライブラリ、開発ツール、技術サポート、開発者コミュニティを共通化し、異なる用途に向けた製品開発の効率を高める。

STはArmと20年以上にわたって協力しており、フィジカルAIに対応する高性能マイコン基盤の構築に向け、今後のCortex-Mポートフォリオの開発でも連携する。

自動車やロボット、産業用システムでコードを再利用しやすい環境を整え、現実世界をセンシングして制御するエッジ機器へのAI実装を支援する。

40nm Flashと18nm FD-SOIを用途に応じて活用

統合STM32プラットフォームでは、複数の半導体プロセス技術を共通の製造基盤として活用する。

ST独自の40nm組み込みFlashメモリ技術に加え、相変化メモリを集積した18nm FD-SOI技術、TSMCの組み込み不揮発性メモリ(eNVM)技術を用途に応じて採用する。40nm Flashは、コストや消費電力、性能のバランスが求められる幅広いマイコン製品へ展開する。18nm FD-SOIと相変化メモリの組み合わせは、より高い演算性能や大容量メモリ、低消費電力が求められる製品への適用を想定する。自社技術だけでなくTSMCのeNVM技術も活用することで、製品性能や用途、供給要件に応じて製造技術を選択できる体制を構築する。

フィジカルAIの開発資産を市場横断で再利用

フィジカルAIでは、認識や判断を担うAI処理だけでなく、モータやアクチュエータを正確に動かすリアルタイム制御、安全性、セキュリティ、通信機能を一体で扱う必要がある。

例えば、産業用ロボットで開発したモータ制御やセンシング、AI処理のソフトウェアは、自律型機械や車載制御などでも利用できる可能性がある。

統合STM32プラットフォームでは、製品ごとに必要な認証や機能安全への対応を維持しながら、共通部分のコードや開発環境を再利用できるようにする。これにより、産業用オートメーション、車載制御、ロボティクス、エネルギーシステムなどで個別に進めてきた組み込み開発を共通基盤へ集約し、製品開発や市場投入に要する期間を短縮する。

STは、20年以上にわたり展開してきたSTM32のソフトウェア資産と開発者エコシステムを、車載や機能安全、フィジカルAIへ広げることで、市場ごとに細分化されてきたマイコン開発環境の統合を進めるとしている。