このロボット関連ニュースのまとめ
・アトラグループとRBBが合弁会社「SIbot」を設立
・約1億5000万円を投じ、ロボットの学習用データを生み出す拠点を整備
・産業分野から取り組み、将来は医療・介護で活用できるロボットの実現を目指す
アトラグループとRBBは、ヒューマノイドロボットなどのロボットシステムの販売・導入支援を担う合弁会社「SIbot」を設立した。
SIbotの資本金は1000万円で、アトラグループが51%、RBBが49%を出資する。所在地は東京都港区で、代表取締役にはアトラグループ 代表取締役会長兼社長の久世博之氏が就任した。
事業内容は、ロボットシステムと産業用ソフトウェアの企画、設計、開発、販売、保守、顧客サポートなど。ヒューマノイドロボットをはじめとするロボットの販売・導入支援に加え、ロボットの学習用データを収集・生成する「データファクトリー(トレーニングセンター)」の整備・運営を計画している。
データファクトリーに総額約1億5000万円を投資
アトラグループは新事業の開始に当たり、データファクトリーで使用する設備を約1億円で取得し、SIbotへ貸与する。
このほか、内装工事費や開業準備費など約5000万円を含め、総額約1億5000万円を支出する予定。必要な資金については、アトラグループの自己資金で賄う方針だ。
事業は2026年中の開始を予定している。データファクトリーでは、ロボットが作業を学習するために必要な実世界の動作データを収集・生成し、産業分野におけるロボットの実用化から取り組む。
アトラグループは、2026年7月に長崎県立大学へヒューマノイドロボットを寄贈するなど、ロボティクスやフィジカルAI分野に関する知見の蓄積と事業機会の探索を進めてきた。
その過程で、同社の研究助成先である研究者からRBBの紹介を受け、ヒューマノイドロボットを活用した協業について協議を重ねてきたという。
ロボットの性能を左右する実世界データを収集
フィジカルAIを活用するロボットには、カメラや各種センサで周囲の環境を認識し、状況に応じて判断しながら身体を動かす能力が求められる。
こうしたロボットの開発では、作業対象や周囲の状況、関節の動き、人との接触、作業の成否などを記録した実世界データをAIへ学習させる必要がある。
工場や物流施設などの産業分野では、部品を持ち上げる、所定の場所へ運ぶ、工具を操作するといった作業のデータを収集できる。一方、医療や介護では、人の身体に触れたり、身体を支えたりする動作が想定されるため、安全性や力加減を含む質の高い学習用データが必要になる。
医療・介護分野では、こうした学習データが不足していることが、ヒューマノイドロボットの実用化に向けた課題の1つとされている。
SIbotはデータファクトリーで動作データを蓄積し、まずは産業分野におけるロボットの実用化へ活用する。そのうえで、将来的には人の身体に接する医療・介護の現場でも利用できるロボットの実現に向け、学習用データ基盤を構築する計画だ。
接骨院や介護現場の知見とロボット技術を融合
アトラグループは、鍼灸接骨院向け経営支援プラットフォーム「A-COMS」を中核として、鍼灸院や接骨院の開業・運営支援、介護関連事業などを展開している。
また、検査結果を可視化し、AIが所見を提案することで施術者による施術計画の作成を支援する「アトラゲージ」も提供しており、施術現場におけるAI活用の知見を蓄積してきた。
医療・介護・ヘルスケア分野では、少子高齢化を背景として担い手不足が深刻化している。サービスの品質を維持しながら、働く人の負担を軽減する手段として、フィジカルAIを搭載したロボットへの期待が高まっている。
一方のRBBは、半導体製造装置、産業用ロボット、各種機械装置のシステムインテグレーションを主力事業としている。
システムの開発・設計から装置の構造設計・製作までを手掛けるほか、ヒューマノイドロボットをはじめとする各種ロボットの導入、二次開発、販売にも実績を持つ。
両社は、RBBのロボットに関する技術力と調達力に、アトラグループが持つ施術・介護現場の知見や顧客ネットワークを組み合わせることで、ロボットの社会実装を進める。
まずは産業分野でロボットの導入を支援
SIbotは、当初から医療・介護現場へヒューマノイドロボットを投入するのではなく、まずは産業分野での実用化に取り組む。
製造現場などでロボットシステムの販売と導入支援を進めながら、実際の作業から得られる動作データをデータファクトリーへ蓄積する。
ロボットを現場へ導入する際には、本体を販売するだけでなく、対象となる作業の選定、作業環境に応じたロボットの設定、周辺設備との連携、安全性の確認、導入後の保守などが必要になる。
RBBが持つロボットシステムの設計・導入経験を活用し、現場ごとの作業や設備に合わせたシステム構築と運用支援を行うことで、導入先で継続的に利用できる環境を整える。
産業分野で得られた学習データや導入ノウハウを活用しながら、将来的にはアトラグループが持つ接骨院や介護事業の現場基盤を生かし、医療・介護分野での利用に必要な動作や安全性に関するデータの収集につなげる考えだ。
2027年12月期以降の売上増加に寄与へ
SIbotはアトラグループの連結子会社となる。新会社の資本金はアトラグループの資本金の10%以上に相当することから、同社の特定子会社にも該当する。
アトラグループは、今回の事業が2026年12月期の連結業績に与える影響については軽微と見込む一方、2027年12月期以降はグループの連結売上高増加に寄与するとみている。
ただし、事業開始当初は設備の減価償却費などの費用が先行する見込み。設備の稼働開始時期や事業の立ち上がりによって費用の計上時期と金額が変動するため、2027年12月期の連結損益に与える影響は現時点では確定していない。
アトラグループはSIbotの設立を、既存事業で培った知見を生かしたヘルスケア領域の拡大と、医療・介護分野における事業深化へ向けた中長期的な成長戦略の第一歩と位置付けている。
産業分野でのロボット導入と実世界データの蓄積から着手し、将来的には医療・介護の現場で人を支援できるロボットと学習用データ基盤の構築を目指すとしている。