この宇宙ニュースのまとめ

・アストロスケールとOHBが宇宙安全保障分野での協力に向けたMoUを締結
・軌道上サービスや宇宙領域把握など両社の技術を組み合わせる
・英国、ドイツ、日本を結ぶ産業連携により宇宙インフラの保護を目指す

アストロスケールホールディングスとドイツの宇宙・航空企業OHB SEは、宇宙空間の重要インフラを保護する能力の構築に向けた協力可能性を検討する覚書(MoU)を締結した。

今回の合意は、10月28日に在日ドイツ大使館で開催された日独産業連携イベントで発表されたもの。軌道上サービス、組み立て・製造(ISAM:In-Space Servicing, Assembly and Manufacturing)、宇宙領域把握、宇宙安全保障関連分野における両社の技術や知見を組み合わせ、安全で持続可能な軌道上運用を支える共同事業機会を検討するための枠組みを構築する。

人工衛星を利用した通信、測位、地球観測などのサービスが社会や経済、安全保障を支える基盤となる一方、宇宙空間では人工衛星やスペースデブリの増加が続いている。運用中の衛星や宇宙インフラを障害や衝突などから守り、長期間にわたって安全に利用できる環境を確保することが、各国政府や宇宙事業者の戦略的な課題となっている。

アストロスケール英国と独OHBの連携を軸に展開

MoUでは、アストロスケールの英国法人(Astroscale Ltd.)とドイツのOHBの連携を重点項目に位置付ける。アストロスケールが英国で開発する能力の輸出機会を創出するとともに、両社が新たな顧客ニーズに共同で対応する可能性を検討する。

また、アストロスケールが日本で展開する事業や技術基盤を活用し、日本における共同事業の可能性についても検討を進める。アストロスケールが英国と日本に有する事業基盤を生かし、ドイツを含む3カ国の産業能力と、それぞれの国が構築してきた国際的なパートナーシップを結び付ける狙いがある。

両社は、人工衛星システムの開発、ミッション運用、宇宙領域把握、軌道上サービスなどの知見を組み合わせることで、宇宙システムの安全性や抗たん性を高める技術とサービスの可能性を探るとしている。

軌道上サービスを宇宙安全保障に活用

アストロスケールは、運用を終了した人工衛星やロケット上段などのスペースデブリに接近し、観測や捕獲、軌道離脱などを行う軌道上サービスの開発を進めている。

商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」では、大型デブリに安全かつ精密に接近するランデブ・近傍運用技術を実証。日本のH-IIAロケット15号機の上段を対象に、50mの距離を維持した周回観測や、衛星分離部の下方約15mまでの接近などに成功している。

また、アストロスケール英国は、複数の人工衛星に接近し、運用終了後の軌道離脱を支援する「ELSA-M」の開発を進めている。同衛星は、捕獲や除去に対応したインタフェースを搭載する人工衛星を対象に、1機のサービス衛星で複数の衛星を除去するサービスの実証を目指している。

こうした接近、観測、捕獲、軌道離脱などの軌道上サービス技術は、スペースデブリの除去に加え、運用中の衛星の点検や保守、寿命延長、軌道上での組み立て・製造などへの応用が見込まれる。今回の連携では、これらの能力を宇宙インフラの保護や宇宙安全保障に活用する可能性を検討する。

英独間の宇宙協力強化を産業面から支援

今回の協力は、英国とドイツが進める戦略的パートナーシップの強化を背景としている。両国はKensington TreatyとTrinity House Agreementを通じ、防衛や安全保障分野を含む協力を深めており、2026年10月8日に発表した共同声明では、民間、商業、安全保障、防衛にまたがる宇宙分野での連携強化を掲げている。

アストロスケールとOHBは、国境を越えて両社の技術や産業基盤を結び付けることで、こうした政府間協力を具体的な技術開発や事業機会へと展開する。宇宙空間の混雑と競争が進む中、共通する価値観を持つ国々の企業が連携し、宇宙インフラの安全性と持続可能性を高める体制の構築を目指すとしている。

アストロスケール創業者兼CEOの岡田光信氏は、宇宙安全保障の将来には同盟国間の信頼できるパートナーシップが必要だと説明。各国が独自の能力を確保することは重要だが、宇宙利用国が直面する課題は複雑かつ相互に関連しており、1カ国だけで対応することは難しいとの認識を示している。

また、OHB SE CSOのMarkus Moeller氏は、宇宙インフラは現代社会に不可欠であり、適切に保護する必要があると指摘。OHBの技術とアストロスケールの軌道上サービス能力を組み合わせ、安全で抗たん性があり、持続可能な宇宙運用を支える新たな手法を検討するとしている。

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    握手を交わすOHB SE CSOのマルクス・メラー氏(左)と、アストロスケール創業者兼CEOの岡田光信氏(右) (出所:アストロスケール)