デル・テクノロジーズの代表取締役社長のジョン・ロボトム氏は、IT業界で25年以上の経験を持ち、かつてデルの日本法人で7年以上にわたり、データセンターやサービス関連の事業に携わった。
その後、日本マイクロソフトでクラウドやソフトウェア事業、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズで企業向けインフラ事業、日本AMDで半導体事業を経験。2026年8月にデル・テクノロジーズの代表取締役社長に就任した。
同氏は、Microsoft時代に日本企業のITインフラの刷新が十分に進んでいないことを実感したと振り返った。新しい技術を活用するには、既存のインフラをモダナイズし、クラウドに対応できる環境を整備する必要があると考え、レノボではそうした課題に取り組んできたという。
さらに、同氏はAMDでは半導体事業に携わり、AIの普及に伴ってGPUなどの半導体が重要性を増していることを経験した。
こうした経験を踏まえ、同氏は約10年前に離れたデルと現在のデル・テクノロジーズでは、顧客に提供できるソリューションや事業領域が大きく変化したと説明した。
AIファクトリーとストレージを重点領域に
今後の日本事業について、ロボトム氏はAIインフラの構築支援を強化するとともに、ストレージなど既存事業の拡大にも注力する考えを示した。
その中核となるのが、AIインフラ、データ基盤、ソフトウェア、サービスなどを組み合わせて提供する「Dell AI Factory」だ。同氏によると、Dell AI Factoryはグローバルで6500社以上に採用されているという。
AIの利用が拡大する中、企業がAIを動かすための基盤を整備することは、デルにとって重要な事業機会となる。同氏は、AI基盤を迅速かつ大規模に構築することに加え、データの管理やセキュリティを考慮したインフラの整備が求められると説明した。
また、AI関連の新規事業だけでなく、ストレージをはじめとする既存事業にも成長の余地があるとの展望を示した。
同氏は「AIの活用するならデータが重要になる。ストレージプラットフォームだけでなく、データをどのように使い、保存し、アクセスするかまで、お客様と議論する必要がある」と述べた。
ストレージ製品の提供にとどまらず、データの利用方法やアーキテクチャまで含めて顧客と議論することで、AI関連事業との相乗効果を生み出せるとみている。
具体的には、AIファクトリーによる新たなインフラと、既存のストレージやデータセンター基盤を組み合わせ、クラウドも含めたプラットフォームを構築していく。
同氏は、企業がAIに対する投資からビジネスの成果を得るためのハードルを下げることが、デルの役割になると説明した。
AIデータセンターの需要拡大、電力や設備容量が課題に
会見では、国内で拡大するAIデータセンター需要についても質問が出た。
ロボトム氏は、AIの普及に伴ってデータセンターの設備容量や電力供給が課題になっていると指摘した。大規模なAI基盤を整備するには、サーバなどのITインフラだけでなく、データセンター施設や電力供給を含めた対応が必要になる。
その事例として、JERAなどとの協業が挙げられた。同氏は、データセンター事業者や電力供給を担う企業と連携し、デルがAIプラットフォームの構築を担うことで、大規模なAIインフラの整備を支援できると説明した。
こうした異業種間の協業は今後、増えていく可能性があるという。
一方、同氏はAIインフラを新たに構築するだけでは、企業のAI活用が進むわけではないとも指摘した。既存のITインフラやデータをどのように整備し、新しいAI基盤と連携させるかという課題が残るためだ。
また、AIの利用形態については、クラウドだけですべてを賄うことは難しいとして、オンプレミスやエッジを含めたインフラの重要性にも言及した。
デルはNVIDIAなどとのパートナーシップを活用し、データセンターからエッジまで、企業の用途に応じたAIインフラの提供を進める方針だ。
「以前はパートナーとの連携が弱かった」10年ぶりの復帰で感じた変化
約10年ぶりにデルに復帰したロボトム氏が、以前と比較して大きく変わったと感じているのが、パートナーとの関係だ。
同氏は、創業者のマイケル・デル氏が現在もCEOを務めていることから、企業としての基本的な考え方は変わっていないと説明した。
その一方、顧客との関係を維持しながら事業を拡大するという基本姿勢については、今後も強化する必要があるとの認識を示した。
特にパートナー戦略について、以前は連携が十分ではなかったと振り返った。現在はパートナーとの関係が強化されており、デルを離れていた時期にも、パートナー企業からデルとの協業に対する前向きな評価を聞いていたという。
同氏は、こうした変化を評価した上で、今後はパートナーとの連携をさらに強化し、顧客への貢献を高めたいとの考えを示した。
日本企業のAI活用を支援するには、ハードウェアを提供するだけでなく、顧客の業務や経営課題を理解し、AIの構想策定から導入、運用までを支援する必要がある。
そのため、デルは既存のパートナーに加え、AIアプリケーションやAIエージェントを開発する企業、スタートアップなどとの協業にも関心を示している。
こうした取り組みを支える拠点の1つが、東京・大手町のエグゼクティブ・ブリーフィング・ソリューションセンターだ。同施設は、デルがグローバルで3カ所に設置している拠点の1つで、顧客企業の経営層と事業課題やIT戦略について議論し、ソリューションの検証につなげる役割を担う。
ロボトム氏は、顧客との関係をさらに深めながら、AI基盤の構築と既存インフラの活用、パートナーとの協業を進め、日本企業のAI活用を支援していく方針を示した。

