【 パジェロ復活!】「どんな悪路でも快適に走れる!」 オフロード車を得意とする三菱自動車の「尖った商品」づくり

頑丈かつ堅牢で耐久性に優れる

 

 山椒は小粒でもピリリと辛い─。三菱自動車がそんなことわざを具現するかのように、「三菱自動車らしさを体現したフラッグシップモデル」(社長兼COOの岸浦恵介氏)が投入される。オフロードSUV(スポーツ多目的車)の「パジェロ」だ。 

 パジェロといえば1982年に登場して以降、90年代の余暇を楽しむための多目的レジャー車(RV)としてブームを牽引。ピークの92年度には国内販売台数が8万台以上を超えた。この頃の同社の経営も好調で、94~95年の国内シェアではトヨタ自動車、日産自動車に次ぐ3位の規模でホンダを上回っていた。 

 パジェロは戦車を手掛ける三菱重工業の自動車部門を起源とする会社らしく、頑丈かつ堅牢で耐久性に優れた点が特長。「世界一過酷」と言われる砂漠を走破する自動車競技大会の「ダカール・ラリー」でも活躍し、「砂漠の王者」の異名をとった。 

 ただその後、ホンダもRVを投入し、シェアは逆転。21世紀に入ると、三菱自はリコール隠しや燃費不正で自らブランドイメージを低下させた。さらにトヨタ自動車が競合車種となる「ランドクルーザー」を投入するなど、パジェロの販売台数も18年度には約6000台にまで落ち込んでいた。21年には製造子会社の閉鎖も決めた。 

 そして三菱自全体でも2010年代に100万台規模だった世界販売台数も25年度には80万台を割り込む。SUBARUが92万台のため、国内メーカーで最下位となっている。ただ、ここ数年は「アウトランダー」「エクリプスクロス」「デリカD:5」などの新車投入効果で徐々に息を吹き返していた。 

 そんな最中での7年ぶりのパジェロ復活。三菱自は5月に発表した新中長期ビジョンで、自らが強みとする「ASEAN(東南アジア諸国連合)市場」と舗装されていない道路などを快適に走行できる「オフロード技術」に経営資源を集中投下する考えを示していた。岸浦氏はそれを「尖った商品」と表現する。

 

 同社関係者は「他社のようにシェアを10%、20%と一気にとることができるようなブランドではない」と話す。そこから導き出したのがオフロード技術だった。寒冷地でも高温多湿な環境であっても、故障せずに走行できるオフロード技術にスタイリッシュな外観を組み合わせたクルマで実績を積み上げてきた。 

 例えば、デリカD:5はオフロードでありながらもミニバンという車種で売り出してヒット。キャンプ利用などを想定し、悪路での走行性能を高めた軽自動車「デリカミニ」は発売前の予約受注が1万台を超えた。 

 新型パジェロも悪路でも快適に走行でき、車内や運転時の居住性・静粛性にこだわり、座席や運転席周囲のインテリアのデザインでは上質さや高級感を加えた。さらに路面状況に合わせて4つの車輪それぞれの回転数や駆動力を電子制御するシステムも導入。搭載するディーゼルエンジンはピックアップトラックのものを改良させた。 

 

ASEANでも中国勢が台頭

 

 26年内に生産国であるタイを皮切りに、12月には日本・豪州に投入。27年以降、100を超える国・地域での販売を計画している。価格は10月29日に公表される予定だが、「トヨタのランドクルーザーが約577万円。500~600万円のレンジか、さらに800万円レベルといった強気の価格を打ち出すかもしれない」(専門家)。 

 また、パジェロはシリーズ化させる。かつてコンパクトサイズの「パジェロイオ」や軽自動車の「パジェロミニ」があったように、28年頃には中型SUV、30年頃に小型SUVも投入する計画だ。三菱自は31年度までに13車種を投入するが、7車種はオフロードになる。 

 パジェロはその象徴で、「復活は悲願」(元幹部)でもあった。また、「稼働率が低迷しているタイ工場の稼働率の向上にも寄与する」(同)側面もあるなど、小型車からSUVやピックアップトラックといった利幅の大きな車種に販売をシフトし、1台当たりの利益を高める戦略だ。 

 同社にとって強みのエリアであるASEANでは中国メーカーの電気自動車が存在感を高めており、日系メーカーのシェアを奪っている。岸浦氏は「(中国メーカーと)勝負をするためには価格だけでなくブランド価値が不可欠だ」と強調する。 

 ASEANは三菱自の世界販売台数のうちの約3割を占めており、収益面でも20年3月期の営業利益で636億円を稼いでいた(26年3月期は229億円)。中国勢が主に小型車や高級車のEVを投入する中で、三菱自が得意とするオフロード車で巻き返しを図る考えだ。 

 さらに大きな関心事が同社の株式の行方だ。10月20日には10年間の売却制限期間が終わる。現在は26.67%を保有する日産を筆頭に、22.23%を三菱商事、1.6%を三菱重工、1.1%を三菱UFJ銀行が保有。そのうち、かつて34%の株を取得していた日産は保有比率を引き下げている。状況によっては、ホンダや台湾の鴻海精密工業が出資する可能性もある。 

 どのような提携関係にあるにしても、三菱自ならではの強みがなければメリットは生まれない。トヨタは国内シリーズ初となるランドクルーザーのハイブリッドを投入する予定だ。その意味では、パジェロは、かつて会長CEOだった益子修氏が言った「スモール・バット・ビューティフルな企業」に向けた同社の試金石になる。

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