原子力の最大限活用へ、電力各社の人材確保は大丈夫か?

技術の伝承という点でも女川原発の再稼働は大きい

 

 9月5日、まだ蒸し暑さの続く都内で学生たちの熱気に包まれた会場があった。そこは日本原子力産業協会が主催する『原子力産業セミナー』。電力会社やメーカーなど、原子力関連企業関係者の説明に、学生たちが真剣な表情で耳を傾けていた。 

 福島県出身のある理系学生は、地元に貢献する仕事がしたいと考え、セミナーに参加。7歳の頃に原発事故を経験。「一時は東電を恨み、悪いイメージもあったけど、原子力に真正面から向きあうことで、何か自分なりに地元へ貢献できることがあるのではないか」と考えたそうだ。 

【著者に聞く】『エネルギーの地政学』 日本エネルギー経済研究所 専務理事・小山 堅

 2011年に発生した東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所の事故から15年。原子力関連企業への就職を希望する学生が徐々に戻りつつある。 

 原子力産業セミナーの来場者も、原発事故前の2010年度には1903人だったが、19年度には約8分の1の255人まで減少。そこから少しずつ増加し、25年度は564人。どん底だった19年度から倍増した。 

「震災以降、原子力関係の採用は非常に厳しい状況が続いていた。しかし、この2~3年、第7次エネルギー基本計画の策定やカーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ)への関心の高まりから、原子力に対してポジティブに見ている学生さんが増えてきたように思う」 

 東北電力 原子力本部 原子力部(原子力企画)課長の益田真之介氏はこう語る。 

 一連の潮目が変わったのは、政府の方針変更が大きい。国の方針が定まれば、企業も事業計画が立てやすいからだ。 

 政府は昨年2月、第7次エネルギー基本計画で既設原発の「最大限活用」を明記。従来の原発依存度を減らすという方針を撤回し、2040年度の電源構成で原発の割合を現在の1割弱から2割程度まで増やす方針を掲げた。また、今年7月には、高市早苗政権が40年代までに最大5基、50年代までに最大14基の原発をリプレース(建て替え)することを正式決定した。 

 これまで長く国内の電力需要が減少傾向になっていた中で、近年はAI(人工知能)の普及やデータセンターの建設が進み、電力需要が増加。ウクライナやイランでの戦争を踏まえ、ロシアや中東への依存低減やクリーンエネルギーの活用といった観点で、改めて、発電時にCO2(二酸化炭素)を排出しない原発の存在が注目されている。 

 東北電力は2024年12月に女川原発2号機(宮城県)が営業運転を再開。福島原発の事故後、初めて福島原発と同じ炉型(BWR=沸騰水型軽水炉)の再稼働ということで注目された。女川原発2号機は1995年に運転を開始。社員の中には建設に携わった経験のある人もまだ残っており、技術の伝承という点でも女川原発の再稼働が持つ意味は大きい。 

 益田氏も「女川2号機は再稼働するまで14年止まっていたので、発電所員の4割くらいは運転経験が無かった。それでも今回いろいろ勉強し、スキルを身に付けた上で再稼働を実現することが出来た。東日本大震災の時に震源に一番近い原発は女川だったが、無事に3基とも安全に停止することが出来た。安全に対する思いと責任をしっかりアピールし、今後の人材獲得につなげていきたい」と語る。

 

 一方、企業が採用を増やそうとしても課題はある。文部科学省の調査では……。

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