2nm以降のロジックプロセスの量産を支える“原子スケール”材料技術
生成AI向けプロセッサの需要拡大を背景に、ロジック半導体のプロセス微細化競争が新たな局面に入ってきた。2nmプロセスでの量産がTSMCによって2025年末にアナウンスされ、次世代として1.6nmプロセスや1.4nmプロセス、そして1.0nmプロセスの実現に向けた研究開発が推進されるようになっており、「オングストローム時代」へと本格的に移行しつつある。
こうした流れの中、アプライド マテリアルズ(AMAT:Applied Materials)は4月8日(米国時間)、2nmロジックプロセス以降におけるGate-All-Around(GAA)トランジスタの量産を見据えた2種類の成膜装置を発表した。原子レベルの精度で材料を制御することで、性能と電力効率の両立を図り、AIインフラ拡大のペースを維持する狙いだ。
500を超す工程への対応が求められるGAAトランジスタ時代
ロジック半導体は現在、FinFETからGAAトランジスタへの世代移行が進んでいる。GAAは同一消費電力あたりの性能を高められる一方、3D構造となるため内部が複雑で、その形成には500を超えるプロセス工程を経る必要がある。
そうした各工程において課題となるのが、絶縁構造やメタルゲートなどのトランジスタのパフォーマンスや電力性能を決定する材料を、原子(オングストローム)のスケールでいかに安定して作り込むかであり、今回同社から発表された2つの成膜製品は、そうしたボトルネックの解消に向けて開発されたものとなる。
STIの完全性を守る「Precision Selective Nitride PECVD」
1つ目の製造装置は、「Applied Producer Precision Selective Nitride PECVD」。GAAデバイスで不可欠となる高密度で隣接するトランジスタ同士を電気的に絶縁分離(アイソレーション)する「シャロー・トレンチ・アイソレーション(STI)」の信頼性を、量産工程を通じて維持するための成膜装置となる。
次世代AI向けGPUでは、切手大の面積に3000億個を超すトランジスタが集積されることが見込まれているが、トランジスタ間の絶縁分離が不十分だと、隣り合うトランジスタ間で電子が拡散してしまうことによる寄生容量の発生や、予想していなかった電気的相互作用による信号の遅延、電力のロス、電力効率低下などを引き起こすこととなる。
同装置は、選択的ボトムアップ成膜プロセスを採用することで、トレンチ内部の必要な箇所にのみ窒化シリコン(SiN)を成膜。酸化シリコン(SiO2)上に高密度な窒化膜を形成することで、後工程によるリセスを防ぎ、絶縁特性を維持できるという。また低温プロセスのため、下層の薄膜や構造体へのダメージを抑えられる点も量産上の利点とするほか、絶縁溝の形と高さを元のまま維持できるため、電気的特性を一定に保つことができ、寄生容量やリーク電流の抑制によりデバイス全体のパフォーマンス向上を可能とするとしている。
すでに複数の大手ロジックメーカーが、2nm以降のGAAプロセスへの採用を進めているという。
メタルゲートを原子精度で作り込む「Trillium ALD」
2つ目の装置が「Applied Endura Trillium ALD」。GAAトランジスタでは、10nm間隔で配置された複数のシリコン・ナノシートの周囲を複雑なメタルゲートスタックで覆いこむ必要がある。この成膜の均一性がスイッチング特性に影響をおよぼし、チップ性能や歩留まりを左右することとなる。
同装置は、同社のメタルALD技術を先端プロセスのGAAトランジスタゲートスタックに対して精密なメタルの成膜を実現するために設計された「Integrated Materials Solution(IMS:統合材料ソリューション)であり、複数のメタル成膜ステップを単一プラットフォームにインテグレートすることで、各種のトランジスタに合わせた柔軟なしきい値電圧のチューニングを可能にした点が特徴だという。
同社のEnduraプラットフォームの超高真空技術を活用することで、ナノシート間の極微小空間でも高品質な成膜を実現できることがGAAトランジスタに求められるチューニング性と信頼性の確保につながり、トランジスタの性能や電力効率、信頼性を高めることができるようになるとする。
こちらもすでに複数の大手ロジックメーカーが2nm以降のGAAプロセス向けに採用しつつあるという。
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左が「Applied Producer Precision Selective Nitride PECVD」の装置外観、右が「Applied Endura Trillium ALD」の装置外観 (提供:AMAT)
「スケーリングの主役」は材料へ
AMATのセミコンダクタ プロダクトグループ プレジデントを務めるプラブー・ラジャ(Prabu Raja)氏は、「最先端ロジックのプロセスノードはすでにオングストロームレベルに達しており、もはや従来のリソグラフィによるチップスケーリングだけでは不十分となり、チップの性能と電力効率は材料に大きく依存するようになっている」と語る。
EUV露光装置も高NA化により、さらなるプロセスノードの微細化を目指しているが、現状の半導体の性能向上は単なるプロセスの微細化やトランジスタ構造の変化だけではなく、Al配線からCu配線に移って以降、新規材料の活用による部分が大きくなってきた。そうした意味ではGAAトランジスタ時代は、これまで以上に材料工学の重要性が増していくことが想像され、GAAトランジスタの安定量産に向けて装置メーカーの技術力も問われることになってくる。
オングストローム時代のロジック半導体の高性能化は、単なるトランジスタサイズの縮小だけではなく、原子をどうやって計算通りに積み上げていくのかの戦いになると言え、今回の同社の新たな成膜装置の投入は、そうした時代の到来を印象付けるものと言えそうだ。
