立命館大学発スタートアップが資金調達を実施

電気自動車(EV)やAIデータセンターの拡大を背景に、従来のシリコンパワー半導体を超す性能を発揮し、電力損失を抑えることができる次世代/次々世代パワー半導体の活用に期待が高まっている。こうした中、SiCやGaNを超える性能を期待できる超ワイドバンドギャップ(UWBG)半導体の実用化を目指す動きが活発化しつつある。

そうしたUWBGパワー半導体を手掛ける企業の1つで、立命館大学発スタートアップであるPatentixは4月6日、シリーズA1(シリーズAのエクステンション)ラウンドにおいて、総額約1億5000万円の資金調達を実施したと発表した。これで、同社の累計資金調達額は、2022年12月の創業以来で合計12億900万円となったという。

次々世代パワー半導体として注目される二酸化ゲルマニウム

Patentixが注力しているUWBGパワー半導体として期待される「二酸化ゲルマニウム(GeO2)」は、従来のワイドバンドギャップ材料では難しかったp型・n型の両極性制御が可能である点や、高いコスト競争力を持つ点が特徴とされている。

次世代パワー半導体としてSiCやGaNがすでに実用化フェーズに入っているが、さらなる高耐圧化や高効率化を見据え、UWBG材料そのものへの関心が高まりつつある。GeO2はその有力候補の1つとして、研究開発段階から注目を集めてきた。

基礎研究から「実用化開発フェーズ」へ

Patentixは創業以来、シード期においてn型ドーピングの確認やショットキーバリアダイオードの動作実証など、GeO2半導体の基礎的なデバイス特性検証を積み重ねてきた。

今回のシリーズA1調達により、同社はそうした基礎研究のフェーズから「実用化開発フェーズ」へと舵を切るとしている。今回得た資金を活用する形で、製造体制の抜本的な強化を進め、6インチGeO2半導体基板およびGeO2パワーデバイスの開発を推進することで、サンプル出荷を加速させ、車載や電力インフラ、さらには宇宙産業といった過酷環境下での利用を見据えた社会実装を目指すとしている。

三菱UFJキャピタルとTMHが出資

なお、今回のシリーズA1ラウンドでは、三菱UFJキャピタルとTMHが出資者として名を連ねた。

三菱UFJキャピタルは、GeO2をカーボンニュートラルや省エネ社会の実現に貢献する重要な技術の1つと位置付けており、Si基板上へのルチル型GeO2薄膜形成に2025年夏に成功した点を評価。一方のTMHは、製造現場を支えてきた立場から、r-GeO2がパワー半導体の根本的な課題を解決し得る技術であるとしており、半導体製造の現場で得た知見やサプライチェーンネットワークを生かした形で社会実装の前進を協力して図っていくとしている。

EVやデータセンター需要の拡大によって電力消費量は増加するが、発電所の建設は半導体の設計・製造以上に時間がかかることから、低消費電力化と電力効率の向上は世界的な課題となっている。Patentixが狙うGeO2半導体は、こうした制約を乗り越える未来のパワー半導体材料候補として位置付けられており、今回の資金調達は、日本発のUWBG半導体技術が実用化フェーズへと進む1つの節目といえそうだ。