約半世紀ぶりの有人月飛行ミッションとなる「アルテミスII」が、日本時間2026年4月2日、米国フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられた。
ミッション期間は10日間の予定で、4人の宇宙飛行士が乗った「オライオン」宇宙船が月をフライバイ(接近・通過)し、将来の有人月探査に必要となるシステムやハードウェアを確認し、実証することを目的としている。
アルテミスII打ち上げドキュメント
アルテミス計画は、米国航空宇宙局(NASA)が主導する国際宇宙探査計画で、アポロ計画以来となる月面への有人着陸を目指すとともに、月面での長期滞在や将来の有人火星探査に向けた足がかりを築くことも目標としている。
2022年には、最初のミッションである「アルテミスI」が実施され、月飛行用の巨大ロケット「スペース・ローンチ・システム」(SLS)で、オライオン宇宙船を無人で打ち上げ、月を周回して帰還した。
今回のアルテミスIIは、SLSとオライオンに宇宙飛行士を乗せて初めて打ち上げるミッションで、生命維持システムやランデヴー技術などの実証を行うことを目的としている。
打ち上げは当初2月にも見込まれていたが、打ち上げのリハーサル試験後の作業で問題が見つかり、ロケットをいったんロケット組立棟(VAB)へ戻して修理する必要が生じたことなどから、最終的に4月までずれ込んだ。
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打ち上げに向けたカウントダウン作業は、日本時間3月31日5時44分に始まり、ロケットや宇宙船、地上設備の点検、通信系の確認、推進薬充填の準備などが進められた。
並行して、アルテミスIIミッションのクルーであるNASAのリード・ワイズマン宇宙飛行士、ヴィクター・グローヴァー宇宙飛行士、クリスティーナ・コック宇宙飛行士、カナダ宇宙庁(CSA)のジェレミー・ハンセン宇宙飛行士は、最終準備や健康確認を行い、ミッションに備えた。
4月1日21時35分ごろからは、ロケットへの推進薬の充填作業が始まった。2日2時までには充填が完了し、蒸発した分の推進薬を補充しながら待機する状態に入った。
一方、宇宙飛行士は1日22時25分ごろに目覚め、ミッションに向けた最終準備を開始し、オライオン・クルー・サヴァイヴァル・システム・スーツと呼ばれる宇宙服を着用したのち、ケネディ宇宙センター内にある宇宙飛行士宿舎を出発し、オライオンに乗り込んだ。
打ち上げ直前には、ロケットがコースを外れた場合に地上から飛行を中断させる射場の安全系との通信や、緊急時にクルーを退避させる打ち上げ中断システムのバッテリー温度センサーに小さな問題が見つかったものの、いずれも解消されたか、打ち上げに支障はないと判断され、作業はおおむね順調に進んだ。
そして翌2日7時35分00秒、4人のクルーを乗せたオライオンを搭載したSLSが、ケネディ宇宙センターの第39B発射施設から離昇した。
ロケットは、固体ロケットブースターやフェアリング、打ち上げ中断システムを分離しながら順調に飛行し、離昇から8分2秒後にコア・ステージ(第1段)のエンジンが停止した。さらに約12秒後、コア・ステージはICPS(第2段)とオライオンから分離した。
離昇から約18分後にはオライオンの太陽電池パネルの展開が始まり、約24分後に4枚すべての展開が完了した。
この時点では、ICPSとオライオンは近地点(地表に最も近い点)高度約27km、遠地点(地表から最も遠い点)高度約2200kmのサブオービタル軌道にあり、まだ安定した地球周回軌道には入っていない。これは、コア・ステージを確実に大気圏へ再突入させて処分するためであり、あわせてICPSやオライオンに問題が起きた場合でも早期に地球へ帰還しやすくするためでもある。
打ち上げから約49分後、ICPSの第1回燃焼により、オライオンは近地点高度約185km、遠地点高度約2,200kmの地球周回軌道に入った。さらにその約1時間には、ICPSの第2回燃焼によって、遠地点高度約7万km、軌道周期約23.5時間の高地球軌道に入った。
なお、宇宙船のトイレが故障していることを示すライトが点滅しており、宇宙飛行士と地上チームが協力して原因の調査や問題の解決に取り組んでいるという。
アルテミスIIミッションの今後の予定
オライオンは打ち上げから3時間24分15秒後にICPSから分離し、単独飛行に入った。宇宙飛行士は生命維持システムなどを確認するほか、分離後のICPSを目標に、手動で接近・離脱するランデヴー運用の実証を行っている。
飛行2日目には、オライオンのメイン・エンジンを噴射して、月へ向かう軌道に入る。地球と月との往復には、「自由帰還軌道」と呼ばれる経路が用いられる。月の重力を利用して進行方向を曲げ、月の裏側を回り込むように飛んだあと、そのまま地球へ戻る経路になっている。この軌道に入っておけば、途中で推進系に大きなトラブルが起きても、追加で大きな噴射を行わずに地球へ戻れる。
そして、打ち上げから6日目に、オライオンは月フライバイを実施する。打ち上げ日によって異なるものの、月の裏側から約7,000kmの距離を通過することになる。
月の裏側を回り込んだのち、オライオンは地球へ向かって飛行を続け、約4日後に大気圏へ再突入し、パラシュートを開いて降下したのち、太平洋に着水して帰還する。
ミッション期間は約10日間の予定で、この飛行で得られるデータや運用経験は、地球低軌道でオライオンと民間の月着陸船とのランデヴーやドッキングを試験する「アルテミスIII」や、2028年に予定されている有人月着陸ミッション「アルテミスIV」以降の将来のミッションにつながることになる。
参考文献




