Infineon TechnologiesとSUBARUが3月9日、次世代ECU向けMCUの供給に関して協業を行った事を発表した(InfineonSUBARU)。この協業に関する説明会が3月26日に都内で開催されたので、その内容をご紹介したい(Photo01)。

  • 記念撮影

    Photo01:説明を行った柴田英司氏(SUBARU 執行役員兼CDCO(最高デジタルカー責任者)、技術本部副本部長、SUBARU Lab所長)とPeter Schaefer氏(Infineon Technologies、EVP&Chief Sales Officer Automotive)

InfineonとSUBARUが発表した次世代ECU向けMCU協業の概要

元々SUBARUは、次世代アイサイト向けのコントローラとしてAMDのVersal AI Edge Gen2をベースとしたカスタムSoCを採用する事を2024年4月に、そのアイサイトで利用するイメージセンサーの供給に関してonsemiと2024年11月に、それぞれ協業を発表している。今回はECU用のMCUについて、Infineonとの協業を発表した形だ。

SUBARUが進める「デジタルカー」構想と統合ECUの位置づけ

「安心と愉しさ」を軸にしたSUBARUの車作り

まずSUBARUの柴田氏より、SUBARUの車作りの目的が「安心と愉しさ」であるとした(Photo02)上で、そうした車の作り込みの方向性として「SUBARUデジタルカー」があり、それを構成するための要素の1つに今回の協業がある、と説明した(Photo03)。

  • 「人を中心としたクルマ作り」

    Photo02:エンジンや駆動方式、シャーシ、アイサイトなどいずれも「人を中心としたクルマ作り」のための手段であるとした

  • SUBARUなりのSDVのプラットフォーム

    Photo03:いわばSUBARUなりのSDVのプラットフォームという訳だ

メカは内製、ITは外部と組むという思想

そのSUBARUデジタルカーの定義がこちら(Photo04)。

  • 餅は餅屋に、ということだ

    Photo04:餅は餅屋に、ということだ

要するに車本来のメカニカルな部分はSUBARUが内製するが、IVIなどのIT由来の技術は外部の力を借りるという事である。

次世代アイサイトと統合ECU、既存パートナーとの関係

具体的に言えば、今回InfineonのAURIX TC4XをSUBARUの車体制御用の統合ECUに採用する事にした(Photo05)という訳だ。

  • AMDとonsemiの役割

    Photo05:AMDのVersal AI EdgeはAURIX TC4xに入力するカメラ由来の情報を生成する役割となり、そしてonsemiのイメージセンサーはそのVersal AI Edgeへ画像を入力する役割となる

説明会ではこの後アイサイトを利用した雪道でのハンズオフ自動走行デモの映像なども流れた(これをそのまま同社の車に採用する予定はないということで、あくまで研究の一環の様だ)が、こちらは今回の本題とはあまり関係ないので割愛するとして、次にInfineonのSchaefer氏からの説明である。

車載半導体市場の拡大とInfineonの立ち位置

ADAS・SDVが押し上げる半導体需要

自動車業界そのものの成長は緩やかだが、そこに使われる半導体市場の伸びは大きい(Photo06)としたうえで、電動化のみならずADASやSDVの割合が増えることがその大きな駆動力であるとした(Photo07)。

  • 問題はBEVがどこまで広がるか

    Photo06:乗用車の生産台数は2025年の9000万台/年が2030年でも9200万台になる程度だが、半導体のマーケットは840億ドルが1200億ドルになると見込む。それは良いのだが、問題はBEVがどこまで広がるかだろう(今の時点でもBEVのマーケットはかなり厳しい)

  • ADASや自動運転、SDV化は確実に進展している

    Photo07:広義の意味でのEVはこの先増えてゆくだろうが、NEVがどこまで増えるのかはちょっと見通しにくくなっている。その一方でADASや自動運転、SDV化は確実に進展している

用途に応じて製品展開がなされるInfineonの車載向け製品ラインアップ

そしてInfineonの車載向け製品のマーケットシェアはかなり大きい事を改めて示した(Photo08)上で、そのInfineonは車載向けにAURIX/TRAVEO/PSOCのラインナップを提供している事に触れた(Photo09)。

  • シェアはトータルで13.5%とかなり大きい

    Photo08:もちろん車載半導体はMCUとパワー、センサー「だけではない」ので、Infineonがトップないし2番目ではない分野もあるのだが、トータルで13.5%とかなり大きい

  • AURIXはInfineon独自のTriCoreベースのMCU

    Photo09:Traveoはもともと富士通由来、PSOCはCypress由来で、AURIXはInfineon独自のTriCoreベースのMCUとなる

AURIX TC4xはどのように生まれ、なぜSUBARUと共同開発されたのか

SUBARU向けに最適化された仕様の背景

そんなAURIXの最新世代がTC4xになる訳だが、AURIX TC4xそのものは2022年11月にアナウンスがあり、この時の発表では特定顧客へのサンプル出荷が2023年末の予定という話であった。その後、2024年11月に最初の製品ラインナップであるAURIX TC4Dxシリーズのサンプル出荷がアナウンスされた訳だが、InfineonによればこのTC4xシリーズの仕様はSUBARUと共同で研究し、一部の仕様はSUBARUに向けて最適化されているという(Photo10)。

  • SUBARUがAURIX TC4xシリーズのLead Customer

    Photo10:つまり、SUBARUがAURIX TC4xシリーズのLead Customerになったという事であり、今はこの成果を元に他の自動車メーカーへの売り込みを図っているという訳だ

これに関して「ではSUBARU以外の車両メーカー向けの派生型もあるのか?」と確認したところ、返事は「最初のUse CaseがSUBARUだったので、これに合わせた」ということで、今後はほかのUse Caseが出てくればそれに向けて最適化を図る事は可能という返事であった。

統合ECU向けMCUとして十分な性能を持つAURIX TC4Dx/TD4Dxシリーズ

SUBARUが採用すると見られるAI対応可能なTD4Dxシリーズ

ちなみに現在AURIX TC4xシリーズに関して言えば、TC45x/TC48x/TC49xとTD4Dxという4つの製品ラインがあるが、特徴から言って恐らくSUBARUが採用するのはTD4Dxシリーズになるものと思われる(Photo11)。統合ECU向けらしく、EthernetとCAN/LINのルーティング機能や、26GFlopsの演算処理性能も持つ。

  • 500MHz駆動の製品は今のところTC4Dxのみ

    Photo11:500MHz駆動の製品は今のところTC4Dxのみである

カスタムSoCとの役割分担と性能の考え方

26GFlopsは、ADASの自動運転の判断そのものを行わせるには明らかに不足するが、例えばアイサイトの自動運転機能の場合、その判断はVersal AI Edgeの方が担当するのであって、AURIXの方は車体制御系の中での推論性能だから、これでも十分に高速なのだろう。

InfineonとSUBARU、それぞれにとっての今回の協業の意味

今回の発表は、InfineonについてAURIXシリーズの拡販の弾みになることを期待してのものと思われる。一方のSUBARU、これでAMD、onsemi、InfineonとあとはEV向けとして、パナソニックエナジーやアイシンとの協業も発表しているが、これですべてという訳では無いのだろう。次はどこと協業するのだろう?