半導体パッケージ用「ガラス基板」の実用化に向けて、関連企業が動きを早めている。25年ほど前から注目されてきたガラス基板だが、シリコン基板の進化もあって採用にはまだ至っていない。風向きが変わったのは、「チップダイの大型化」と「光インターコネクトへの対応」という、ガラスでなければ実現できない課題が身近に迫ってきたからだ。
牽引役を務めるインテルは、2030年頃の量産適用を予定している。またHBMが絶好調の韓国SKグループは、インテルよりも早い時期にガラス基板対応を果たす可能性がある。ガラスまわりの加工技術と部材が強みの日本ではFICTが多層ガラスコアの開発を進めており、事業の行方が注目される。
インテルが披露した「ガラス基板+EMIB」とはなにか
インテルは最先端プロセス製品を量産するファウンドリ事業に経営再建をかけている。その要となるのが、GPUやHBM(High Bandwidth Memory)といった大型チップを載せたチップレットを効率良く量産するためのガラス基板だ。発熱が大きなAIチップを高密度実装するためにも、基板の反りを抑え、精緻な配線幅/配線間隔を実現できるガラス基板が必要とされる。
都内で開催された、先端電子部品や実装装置の展示会「第40回 ネプコン ジャパン」(会期:1月21~23日)では、インテルファウンドリーがガラス基板と併せて、TSMCの「CoWoS」(Chip on Wafer onSubstrate)に対抗するパッケージ技術「EMIB」(Embedded Multi-dieInterconnect Bridge)について講演した。
同社は厚さ800マイクロメートル(µm)のガラスコアの両面に各10層のビルドアップ層を設けている。バンプピッチは45µmで、製造工程でガラス内部に生じるひび割れ「背割れ」も抑えたとしている。
チップダイの大型化は今後も進み、2026年にはレチクル露光サイズの8倍に、2028年には12倍に、そして将来は40倍へと急速に大面積化すると予想。パッケージは電気信号と光信号の両方を扱う光/電融合へとどんどん複雑になっていく。
一方同じファウンドリでもインテルとは対照的に、最大手TSMCはガラス基板への取り組みは慎重な姿勢を取っている。これからはレチクル露光サイズの9倍以上が必要になるため、コア基板の大型化が求められるとしながらも、「加工のしやすさと信頼性」がガラスの課題としている。
ガラス基板の開発は1990年代から米ジョージアテックではじまったが、このころから取り組んできたのが米3DシステムスケーリングLLCの創業者・プレジデントであるベンキー・サンダラム氏だ。
同氏はHPC向けパッケージのひとつとしてガラス基板に着目、特に“反り対策”を念頭に置いていた。ガラス基板は熱圧着接合を何度も行えるうえ、光導波路を形成することもできる。2026年から2030年にかけて、半導体大手がガラス基板を使って量産をはじめるとみている。
韓国SKグループは’26年内にも生産へ。ユニークなガラス基板構造打ち出すFICT
インテルと同じく、ガラス基板に対して積極的に取り組む韓国SKグループは、2026年内にも生産に入るとみられる。
HBM最大手のSKハイニックスを擁するSKグループで、ガラス基板に取り組む米アブソリックス(Absolics)には、米CHIPS法に基づく7,500万ドルの助成が決まっている。ジョージア州アトランタにガラス基板工場を建設してインテル向けの需要を狙うとみられる。
このような海外勢に対し、日本は実装技術や加工用の材料技術で優位にある。国内にガラス基板を大量に消費するユーザーがいないとあって基板サイズの標準化をリードするのは難しいが、ユニークなガラス基板構造を打ち出しているのがFICTだ。
数層のガラスコアの両面に樹脂配線層を積み上げるビルドアップ基板が一般的だが、FICTは微細配線を施した極薄ガラス基板自体を何重にも積層する。この方法では、応力が分散されて反りや「背割れ」が抑えられ、貫通ガラス孔の信頼性も上がる。部品内蔵や光/電融合に向けた導波路形成も容易としている。
これからインテルやサムスン電子などの大手がガラス基板を量産適用することになれば、FICTやアブソリックスにとっては事業拡大の好機到来となりそうだ。

