岩手・大船渡市と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、連携協力協定を2月24日に締結。2025年に起きた大規模林野火災で甚大な被害が発生したことが背景にあり、かつてこの地に宇宙科学研究所(現・ISAS)の研究施設を設置していたJAXAは、宇宙科学を通じた地域振興や普及活動に関する連携協力を掲げ、教育の側面から復興を後押ししていく。

  • 岩手・大船渡市と宇宙航空研究開発機構(JAXA)による連携協力協定締結の様子

    岩手・大船渡市と宇宙航空研究開発機構(JAXA)による連携協力協定締結の様子

翌25日には、同市立綾里小学校で宇宙学校を開催。林野火災で大きな被害を受けた綾里地区で、宇宙について学ぶ機会を設けることで、宇宙科学に対する理解と、火災被害からの復興への寄与をめざした取り組みで、授業の後には全校生徒を対象に、水に溶ける紙に児童がそれぞれ願いごとを書いた風船を空に放ったという。

  • 綾里小学校で開催された宇宙学校の様子

    綾里小学校で開催された宇宙学校の様子

大船渡市とISASの関係は1971年(昭和46年)にさかのぼる。ISASは当時の三陸町(現・大船渡市、2001年編入)に「三陸大気球観測所」を開設して以来、国内唯一の大気球実験実施拠点として、多くの科学的成果を挙げたという。

同観測所は、気球の大型化に伴う受入れが困難になったことや、気象条件の変化などを理由に、2007年に閉鎖。大気球観測業務はその後、2008年に北海道・大樹町の大樹航空宇宙実験場へ引き継がれている。

観測所が閉鎖・移設された後も大船渡市はISASと交流を深め、現在に至るまで、ISASと交流がある自治体の組織「銀河連邦」として、銀河連邦子ども交流や経済交流を続けている。ちなみに銀河連邦には大船渡市のほかにも、秋田・能代市や神奈川・相模原市、長野・佐久市、鹿児島・肝付町といった5つの市町が関わり、1987年11月に“建国”されている。

  • 三陸大気球観測所の開所式の様子

    三陸大気球観測所の開所式の様子

2026年2月25日の宇宙学校では、綾里小学校の5年生・6年生の計23名を対象に、ISASの吉田哲也教授が「宇宙を探る」、福家英之准教授が「宇宙を身近にする大気球」をテーマに授業を実施。「宇宙のはじまり」や、「空を飛ぶには?」といった宇宙科学の話を聞き、授業中や休憩中も積極的に意見を出している児童の姿がうかがえたとのこと。また、全校生徒が空に放った風船には、「雨が必要なときに雨が降りますように」「大船渡の森や海を守りたい」といった林野火災の経験を受けた願いがこめられていたという。

また、実際に大気球実験で使用される「薄膜フィルム」の体験も行い、薄く柔らかいフィルムをドライヤーで膨らませた薄膜フィルムのバルーンを、児童が夢中になって追いかける姿も見られたそうだ。なお授業の聴講には、同小学校の近隣住民が参加したほか、大船渡市長も混ざって体験したとのこと。

ISASは宇宙科学の普及に向けた取り組みで大船渡市との協力を一層深め、これらの活動を通じて、災害からの復興を支えていく方針だ。

  • 綾里小学校で開催された宇宙学校の様子

    綾里小学校で開催された宇宙学校の様子