宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月4日、宇宙科学研究所(ISAS)の小型高機能科学衛星「れいめい」の運用停止・停波を行い、同機の運用を終了すると発表した。
「れいめい」(INDEX:Innovative Technology Demonstration Experiment)は、オーロラ科学観測という理学目的と、高性能な衛星搭載機器や小型衛星システムの軌道上実証という工学目的を持たせた人工衛星。
「世界最高の時間分解能による電子の観測と、世界で唯一のオーロラの画像とオーロラを光らせる電子の同時観測が行える」点を大きな特徴としており、小型科学衛星による機動性と、先進性のある宇宙科学・工学の時代を迎えることを願って、れいめいと名づけられた。外形寸法/質量は約62×62×72cm/約72kg。
打ち上げにはISASの人工衛星ながら「M-V」ロケットを使わず、当初は「H-IIA」ロケットの副次的なペイロードとして、2004年度頃の打ち上げをメドに計画。大型ロケットの余剰能力を利用したピギーバック(相乗り)を採用することで、従来の科学衛星費用と比べて“格段に低コスト”な打ち上げをめざしていた。
しかしその後、打ち上げにはウクライナ製の「ドニエプル」ロケットが使われることに決まった。同ロケットは冷戦時代、旧ソ連のICBM(大陸間弾道ミサイル)として開発された「SS-18」を商用目的に平和転用したものだという。
光衛星間通信実験衛星「きらり」と共に同ロケットに搭載されたれいめいは、カザフスタン共和国バイコヌール宇宙基地の地下サイロから2005年8月24日6時10分(日本時間)に打ち上げられ、略円軌道に投入された(近地点610km、遠地点654km、軌道傾斜角97.8度)。
すべての搭載機器は軌道上で正常な動作状態であり、工学的ミッションである薄膜反射器を用いた太陽集光パドル、超小型のGP受信機などの先進的衛星搭載機器技術の軌道上実証が成功裏になされたとのこと。また、宇宙科学と衛星工学の両面におけるミッション科学的成果を達成し、小型衛星の有効性を示したという。
れいめいの成果や詳細については、鳥嶋真也氏による連載記事「宇宙のさえずりが、オーロラを瞬かせる - 小型衛星『れいめい』の発見」を参照のこと。
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れいめいによる観測の模式図。高度620kmから、高度100km付近で光っているオーロラを連続観測するとともに、そのオーロラを光らせている電子を40ミリ秒ごとに観測する 出所:東北大学大学院理学研究科・理学部ニュースリリース
具体的には、れいめいに持たせた高い三軸姿勢制御性能により、オーロラ発光を引き起こす降りこみ粒子と、それに対応するオーロラ発光層の同時観測・撮像を、時間的・空間的に高い分解能で初めて実現。微細な構造を持つオーロラ発光層について、その発生機構の理解を大きく前進させる科学的成果に寄与したという。
また工学的には、民生用プロセッサを採用した統合化計算機や、リチウムイオン二次電池、70kg級衛星の定常的な3軸姿勢制御といった先端技術を軌道上で実証。JAXA(ISAS)のインハウス開発を主とした衛星開発は、後の衛星開発を支える多くの人材の育成にもつながったとのこと。
2025年7月、電源システムの機能不全により動作を停止したれいめい。今回の運用終了により、2005年以来、20年以上にわたるオーロラ観測や各種技術の軌道上実証に寄与してきた歴史に幕を下ろした。
