ASMLがEUV光源の1000W化にめど
ASMLは2月24~26日にかけて米国で開催された国際光工学会(SPIE)主催の半導体関連技術の国際会議「SPIE Advanced Lithography + Patterning 2026」にて、EUV露光装置のスループットを現状の毎時220枚から50%引き上げることができる光源技術の開発に成功したことを発表した。
2月24日に「First 1000 W in-band EUV power demonstration using laser produced plasma technology」というタイトルで発表されたこの技術は、ASMLの米国カリフォルニア州サンディエゴ事業所(元Cymer。2013年にASMLが買収した光源メーカー)の研究者たちがEUV光源の出力を現在最高の約600Wから1000Wへと上昇させることに成功したというもので、これにより単位時間当たりの処理枚数(スループット)を50%増加させることが可能になるというものである。
具体的な手法としては、EUV露光には波長13.5nmのEUV光が用いられるが、EUV光は溶融スズの液滴(ドロップレット)の流れをチャンバー内に噴射し、そこに強力な二酸化炭素レーザー(CO2レーザー)を照射することでプラズマ化することで形成される(LPP光源方式)。今回、このスズの液滴の数を1秒あたり約10万個に倍増させ、かつ既存の単一成形バーストではなく、2つのより小さなレーザーバーストを使用してプラズマ化することで出力を1000Wに上昇させることに成功したという。同社は2030年までの実用化を目指しているとしている。
光源出力の向上が直結するウェハの時間当たりの処理枚数
露光装置の光源出力はウェハのスループットに直結することから、これまでASML(Cymer)は出力の向上に向けた研究開発を長年にわたって行ってきた。出力を向上させる理由としては、生成されたEUV光は高精度加工されたミラーで反射され、ウェハに届けられるがミラーの反射率は理論限界で68%程度、光学系として成立するためには10枚以上のミラーを反射させる必要があり、例えば11枚系のミラーの場合、ウェハに届くまでに光源出力の1.4%ほどに低下してしまうためで、毎時100枚のスループットの実現には250Wの光源が必要とされてきた。
ASMLは2006年に光源に放電プラズマ光源を採用した露光領域がフルフィールド級の26mm×24mmを実現したα Demo Tool(ADT)を開発。imecおよび米国ニューヨークのSEMATECHのアルバニー研究所などが導入し、研究開発に活用してきた。2010年ごろにはβ機となる「NXE:3100」を開発。XTREMEが手掛けるDPP光源モデルとCymer製LPP光源モデルがあったとされ、当初の開発目標は100W光源の実現であったが、最終的な光源出力は7W~10Wに留まったとされる。そして2013年に量産向けEUV露光装置という位置づけで開口数(NA)を従来の0.25から0.33に高めた「NXE:3300B」を開発。当初の光源は10Wレベルであったとされるが、その後の改良により、2024年後半には80Wの模擬運転に成功、2015年にフィールドで80Wによる稼働を実現。以降も重ね合わせ精度の向上なども含めた高性能化が進められてきており、2021年に出荷された「NXE:3600D」では350Wへと光源出力が増強された。さらに、2024年に出荷が開始され、Rapidusも導入したことでも知られる「NXE:3800E」では出力が500Wへと引き上げられ、スループットも毎時220枚としているほか、2026年後半から2027年前半に出荷開始予定の次世代機「NXE:3800F」で600W光源が搭載される予定となっている。
EUV露光装置のスループット向上で最大の恩恵を受けるTSMC
今回のASMLの成果を受けて、台湾メディア「経済日報」は2月25日付の記事で、ASMLの新技術実現に関して鴻海精密工業傘下のエンジニアリング企業であるMarketech International(MIC:帆宣系統科)が重要ユニットを供給したとし、同技術を搭載した新型EUV露光装置が販売されれば、大きな恩恵を得る見込みだと報じたが、MICは個別の顧客についてのコメントはしないとしている。MICは、ASMLのベンダーリスト上位に位置する、EUV露光装置向けサブシステムモジュールの受託製造を手がけている企業として知られている。
また、この光源出力の向上によるスループットの増加の恩恵をもっとも受けるのは、ASMLと協力してEUV露光装置の実用化に取り組み、最大顧客となっているTSMCであり、先端プロセスでの生産能力の向上によるさらなる成長につながることが期待できると見る台湾半導体サプライチェーン関係者もいるという。