台湾の半導体市場動向調査会社であるTrendForceが、「ASMLのEUV優位性と中国の半導体装置開発推進(ASML EUV Dominance & China’s Semiconductor Equipment Push)」と題する調査レポートを2025年末に掲載した。その内容を中国製半導体製造装置の開発状況に焦点を当てる形で紹介したい。

EUVの入手ができずに先端プロセスで苦戦

中国は米国政府のよる半導体および半導体製造装置の輸出規制の下、半導体製造装置の自給自足を推進しているが、先端プロセス領域においてはASMLのみが提供できるEUV露光装置が入手できずにボトルネックとなっている。中国版マンハッタン計画で突破口を開こうと試みたが、真の障壁は単にEUV露光装置の複製を製作することではなく、ASMLが30年かけて構築してきたグローバルサプライチェーンと大量生産(HVM)に基づくデータのフィードバックループにあるとTrendForceでは指摘している。EUV露光装置は10万点以上の部品で構成され、重量は180トンにも及ぶが、ASMLが製造しているのはそのうちの約15%にすぎず、残りは5150社を超す同社のグローバルサプライヤネットワークによるものであり、これは簡単にまねできるようなものではない。

波長193nmのArFを液浸化する取り組みをASMLとTSMCが共同で推進することで65nmプロセス以降の微細化が進められていったが、7nmを下回る超微細プロセスになるとマルチパターニングに伴うコストの増加と歩留まりの低下により、EUVの導入が不可欠となっていると言える。

中国の装置メーカーが売上高ランキングで世界7位に

半導体装置の種類は多岐にわたるが、「露光装置」「ドライエッチング」「外観検査」「CVD/PVD」の4つの主要分野は主に欧州、米国、日本のメーカーが市場を握ってきた。しかしドライエッチングとPVDでは中国勢の存在感が増してきているという。

特に中国最大の半導体装置メーカーであるNaura Technology Group(北方華創科技集団)はエッチング、PVD/CVD、洗浄、バックエンドテスト、パッケージングまで幅広いポートフォリオを有し、半導体製造プロセスのほぼすべての主要工程をカバーし、「中国のAMAT」とも言われている。このNauraと先端向けドライエッチング/ALDメーカーのAMEC(中微半導体設備)を合わせてると世界のドライエッチング市場の約6%となるほか、PVDにおけるNauraのシェアは12%に達していると見られている。

この結果、Nauraは2023年に世界の半導体製造装置売上高ランキングトップ10入りを果たし、以降、毎年順位を上げてきている。TrendForceによる2025年第3四半期のランキングではNauraは第7位にランクインしており、その成長率も前四半期比42.1%増と他のトップ10企業と比べても高い伸び率を見せている。

  • 2025年第3四半期の世界半導体装置サプライヤ売上高トップ10

    2025年第3四半期の世界半導体装置サプライヤ売上高トップ10 (出所:TrendForce)

世界最大市場であり続ける中国

Naura以外の中国系製造装置メーカーを含め成長を続けているが、その背景には中国内の半導体製造に対する高い需要がある。SEMIのデータでも中国の半導体製造装置市場は2024年に前年比35%増の495億5000万ドルで、世界の4割を占めている。中国での旺盛な半導体設備投資と中国政府による自給自足の推進により、中国の製造装置メーカー各社は、国家集積回路産業投資基金(大基金)や地方政府のファンド、Huaweiなど顧客企業からの支援で能力の拡大と強化に多額の資金を投入している。中国最大のファウンドリであるSMICの共同最高経営責任者(CEO)である趙海軍氏も2月12日の決算説明会で、「中国政府の半導体自給自足方針もあり、従来は海外製半導体を使っていた中国顧客が中国で製造された半導体を使うようになってきている。そうした国内需要の増加にこたえるために増産体制を構築する」と述べるなど、今後の中国装置メーカーのさらなる売り上げ拡大が予想される。

ただし、中国の半導体装置産業は成熟プロセスでの相対的な強みと先端プロセスでの弱さがあり、サブセグメント間での自給率にばらつきが見られる。例えば中国内装置カテゴリで高い自給率を誇るフォトレジスト剥離装置における成熟プロセス、パワー半導体、先端パッケージングなどの低中価格帯市場の自給率は75~90%ほどと高い。中でもE-Town Semiconductor Technology(屹唐半導体科技)は、2023年のドライフォトレジスト剥離装置市場で30%以上のシェアを占めて世界第2位となったとみられる。しかし、3D NAND/DRAM向けハイエンドフォトレジスト剥離装置の自給率は依然として30%を下回る状況が続いていると見られている。

また、洗浄装置およびエッチング装置の中国の国内自給率は約50~60%ほどで、中でもAMECのプラズマエッチング装置は5nmプロセスに対応し、TSMCやSK hynixといった海外大手半導体メーカーでも採用されているほか、ACM Researchのウェットクリーニング装置も、7nmプロセス以下の先端プロセスでの使用が可能であるとしている。

このほか、CMPやイオン注入、露光装置などは主にパワー半導体やMEMSセンサといった成熟プロセス向けが中心で、自給率は約10~25%ほど。先端プロセス向け露光装置についてはASMLの独占状態であり、中国の国内自給率はほぼゼロと言える。

  • 中国半導体業界の半導体装置自給率と中国資本および外国資本の主要メーカー

    中国半導体業界の半導体装置自給率と中国資本および外国資本の主要メーカー (出所:TrendForce)

プロセス全体をカバーするソリューションの提供へ

TrendForceのデータによると、2025年1月から10月にかけて、中国の半導体メーカーは私募、増資、業界ファンドを通じて130億元を超える投資を公表しているという。旺盛な設備投資の一方で、異なるサプライヤの装置を導入すると、オーバーレイエラーや歩留まり低下のリスクが増大するという課題があるため、中国の装置メーカー各社も買収による自社プロセスとの連携強化を模索している。

例えばNauraは、コーティング、現像、リソグラフィ前後のウェットプロセス装置などを手掛けるXinyuan Microの株式17.87%を戦略的に取得。これにより、主要なリソグラフィ前後のプロセスを統合できるようになり、ファブにおける歩留まり向上を図ることができるようになるという。

また、CMPを手掛けるHuahai Qingke(華海清科)は、2025年4月に一部の株式をすでに保有していたイオン注入装置を手掛けるXinyu Semiconductor(鑫宇半導体)の残り株式すべてを取得した。さらに、中国の製造装置産業は、こうした水平統合に加え、垂直的なサプライチェーンの強化も図ることで、主要部品の国内代替能力を向上させている。例えば半導体材料メーカーのGRINM Semiconductor Materials(有検半導体珪材料)は、DGT Technologiesの株式70%を取得する形で半導体部品分野に参入したほか、装置メーカーのJDM Jingda Machine(寧波精達成形装備)は、精密金型・部品メーカーのWuxi Micro Researchを3億6000万元で買収し、中国における精密部品の現地化を加速させる動きを見せている。

政府投資の重点が先端パッケージングに移行

2024年5月に設立された中国の「国家集積回路産業投資基金第3期(ビッグファンドIII)」は2025年に投資の重点を3Dパッケージングと異種統合へと移した。

2025年9月には、国頭継心(北京)株式投資基金を通じて、Piotech(拓荆科技)の子会社でハイブリッド接合装置やフュージョン接合装置、およびそれを支える測定・検査ツールなど、3Dインテグレーション分野の先端接合装置を主に手掛けるTuojing Jianke(拓荆鍵科)に約4億5000万元を投資。ヘテロジニアス・インテグレーションによる性能向上を投資対象とする動きがでてきていると指摘する業界関係者もいる模様である。

中国の半導体産業への投資額は拡大傾向にあり、ビッグファンドIIIの登録資本金は3440億元。同Iが約,300億元、同IIが約2000億元であり、その合計を上回る規模となっている。また、上海、北京、浙江、江蘇省のファンドも新たなプロジェクト投資ラウンドを開始したり、サブファンドを設立したりしており、チップ設計から製造、設備、材料など、半導体サプライチェーン全体を網羅するものとなっているという。

TrendForceでは、こうした2025年の半導体基金の投資方針を観察すると、従来の盲目的な巨額投資と工業団地建設から、より実利的で目的志向の戦略的投資へと転換が進んでいるとみられるとする。

より包括的なエコシステムの構築に向けて動いているのと同時に、3D ICやヘテロジニアス・インテグレーションといった分野にも参入することで、集積度の向上を試みていると見られ、EUVの入手困難を踏まえ、プロセスの微細化の代替技術によるブレークスルーを模索し、将来の半導体競争での優位性の確立を図ろうという狙いが見えるという。