イーディーピーと産業技術総合研究所(産総研)は2月2日、シリコンウェハ上への貼り付け構造を持ち、汎用的な半導体製造装置で加工が可能なダイヤモンドデバイス用ウェハを作製したことを発表した。

同成果は、産総研ハイブリッド機能集積研究部門の松前貴司 主任研究員、高木秀樹 首席研究員、倉島優一 研究グループ長、先進パワーエレクトロニクス研究センターの山田英明 研究チーム長、梅沢仁 上級主任研究員、イーディーピーの古橋匡幸 開発部長、桃谷桂子 開発部員、藤森直治 代表取締役社長らによるもの。詳細は2月2日付の「ACS Applied Engineering Materials」に掲載された

  • 今回の研究成果のイメージ

    今回の研究成果のイメージ (出所:イーディーピー/産総研)

大口径化が課題のダイヤモンド半導体

その特性から究極の半導体材料とも呼ばれるダイヤモンドだが、大口径化が課題となっており、イーディーピーでも2025年2月に30mm×30mmの単結晶ダイヤモンド基板の商品化を果たした後、同年4月に1インチウェハを発売するに留まっている一方、半導体製造装置を用いたデバイス作製には少なくとも2インチ以上のサイズへと大口径化をする必要があるものの、高品位なホモエピタキシャル成長による単結晶ダイヤモンドの大面積化は容易ではないという課題があった。

今回の研究は、そうした大口径化を実現することを目的に、小さなダイヤモンドウェハを大面積のシリコンウェハに多数貼り付ける方式の実用化に向けた検討を行ったという。

シリコンウェハに高熱でダイヤモンドウェハを貼り付け

具体的には、1000 ℃を超すような高温での接合は界面の耐性を向上できるほか、表面粗さへの要求も低く歩留まりも高いため同種基板の接合に広く用いられているものの、異種材料の場合は熱膨張量の差による熱歪みが増大して反り・割れが発生することが課題とされていた。

今回の研究では、膨張量の1 ℃あたりの変化割合を示す熱膨張係数は温度により変化し、多くの物質では高温になるほど上昇することを踏まえ、ダイヤモンドとシリコンの熱膨張係数が600 ℃程度で逆転することに注目。計算の結果、シリコンの融点(~1400 ℃)以下では熱膨張量の差がゼロになることはないが、高温で接合するほどダイヤモンド/シリコン接合体を常温に戻した際の熱収縮量の差が少なくなり、残留応力による反り(熱反り)が減少する可能性が示されたという。

また、これまでの多結晶ダイヤモンド薄膜をシリコン基板と1150 ℃で接合する研究では、ダイヤモンド内部での破断が起こっていたことから、新たに強固かつデバイス応用が期待される単結晶ダイヤモンドを使用する形でシリコンとの高温接合による熱反りの低減を試みたとする。

1200℃での接合で複合基板の高低差を9μmに抑制

併せて、複合ウェハを吸着した際の基板の高低差を一定以下に抑制できないと、露光装置を用いた回路描画がうまく行かないという課題もあったが、12mm角のダイヤモンドウェハと2インチのシリコンウェハを1200℃で接合した場合、熱歪みが低減され、基板の高低差は9μmに収まることを確認。露光プロセスにて10mm角の描画領域の95%で1μm幅のラインアンドスペースパターンが作製できることを確認したという。

  • 高温接合したダイヤモンドウェハとシリコンウェハ

    高温接合したダイヤモンドウェハとシリコンウェハ。1200℃まで温度を上昇させたことで反りが低減し、1μm幅のラインアンドスペース構造がダイヤモンド表面の大部分に描画可能となったという (出所:イーディーピー/産総研)

さらに、高温接合により表面粗さ(二乗平均平方根高さ:Sq)が0.9nmの比較的粗いダイヤモンド基板であっても強固な接合が得られることも確認。電子顕微鏡によるダイヤモンド/シリコンの接合界面観察から、5nm程度の非晶質層を介して緻密な接合が形成されていることが確認されたとするほか、試料を観察した際、接合されている箇所は透明なダイヤモンドを通して界面が黒く見え、シリコンを破壊する衝撃を加えても端部以外では剥離が見られなかったとする。研究グループでは、この端部は基板が薄くなりやすいため、接合時に密着が得られなかった可能性があると説明している。

  • ダイヤモンド/シリコンの接合界面

    ダイヤモンド/シリコンの接合界面。シリコンを破壊しても剥離しない強固な界面が得られたことが確認された (出所:イーディーピー/産総研)。

実際のダイヤモンドデバイス製造向け処理でも乖離しないことを確認

加えて、半導体デバイス作製プロセスで用いられる洗浄液であるNH4OH/H2O2(SC1)、HCl/H2O2(SC2)、H2SO4/H2O2(ピラニア溶液)やHF(フッ化水素酸)、TMAH現像液による化学処理や、導電ダイヤモンド層の形成温度である1000 ℃の高温処理といったダイヤモンドデバイス製造に用いられる工程であっても剥離が確認されなかったとのことで、デバイス製造への複合ウェハの応用可能性が示されたとする。

これらの結果を踏まえ、研究グループでは1200 ℃の高温接合により作製したダイヤモンド/シリコン複合ウェハは微細描画およびデバイス加工が可能で、ダイヤモンドウェハの枚数・面積を増加させていくことでダイヤモンドデバイスの量産展開が期待できるようになるとしており、今後はより大きなダイヤモンドウェハが複数接合された複合ウェハの開発を進めるほか、複合ウェハを用いた電子デバイス作製を実証することで、ダイヤモンドデバイスの社会実装を目指すとしている。