京都大学(京大)は1月5日、これまで確証が得られていなかったブラックホール形成時の超新星爆発について、それが実際に起こり得ること、およびその際の超新星が「Ic-CSM型」と呼ばれる特別な性質を持つことを明らかにしたと発表した。

  • 超新星SN 2022esaの想像図

    超新星SN 2022esaの想像図。爆発を起こした星は、元は太陽の数十倍の質量を持っていたが、激しい恒星風により外層を失い、炭素・酸素からなる中心部が剥き出しになったウォルフ・ライエ星だったと考えられている。もう1つのウォルフ・ライエ星またはブラックホールと連星をなしており、その公転運動に伴って等間隔に連なるリング状の星周構造を形成したと考えられるとした。(c)前田啓一(出所:京大プレスリリースPDF)

同成果は、京大 理学研究科の前田啓一教授を中心とする国際共同研究チームによるもの。詳細は、日本天文学会が刊行する英文学術誌「Publications of the Astronomical Society of Japan」に掲載された。

ブラックホール形成で超新星爆発は起こり得る!

ブラックホールは、少なくとも太陽の20倍以上の量星を持つ大質量星の最期に、コアが重力崩壊を起こすことで誕生すると考えられている。しかし、どのような星がどのような進化を経てブラックホールに至るのか、あるいは連星ブラックホールをどのように形成するのかなど、まだ多くの謎が残されている。そもそも、ブラックホール形成時に超新星爆発が発生するのか、あるいは外層が吹き飛ぶ前に強い重力で飲み込まれてしまうのかも明らかになっていなかった。

ブラックホールをほぼ確実に形成すると考えられる太陽質量の30倍以上の大質量星は、進化の過程で自身の強い恒星風により外層を放出し、炭素・酸素の中心部が露出した高温の「ウォルフ・ライエ(WR)星」になると推測されている。太陽質量の約10倍あるため、WR星も超新星爆発を起こして生涯を終えると考えられている。

Ic型超新星爆発は、炭素・酸素で構成される星を起源とするとされるが、通常のIc型はWR星起源ではないと考えられている。しかし、「Ic-CSM型」は特異な観測的振る舞いを示すことから、研究チームは今回、同超新星爆発に注目したという。

Ic-CSM型は、研究チームが2022年に分類を確立させたタイプで、初期には通常のIc型と同様の振る舞いを示すが、時間経過と共に性質が解離していくのが特徴だ。このタイプは、爆発前の親星が周囲に放出した外層を由来とする、大量の炭素や酸素などの星周物質を持つと考えられている。つまり、Ic-CSM型は、大質量WR星を起源とする超新星爆発である可能性があるのだ。

研究チームが、京大のせいめい望遠鏡を用いた比較的近傍の宇宙で発生した超新星の追観測プロジェクト内で、「SN 2022esa」がIc型であることを特定。しかし、通常のIc型よりも遥かに明るく、長期間輝く特異な振る舞いを見せたことから、爆発後500日が経過した時点ですばる望遠鏡による分光観測を実施。その結果、特徴的なスペクトル変化から、同超新星がIc-CSM型であることが特定された。

SN 2022esaは、過去に数例しか知られていない、明るさが周期的な変動を示すという極めて珍しい特徴を持つ。その周期は約30日だ。その変動の原因の特定と起源の解明に向け、周期性の詳細な解析やスペクトルの推移、赤外線や電波の観測データなどを合わせた分析が行われた。その結果、以下の解釈が導き出されたという。

今回の研究で導き出された解釈

  1. 爆発前の星は大質量WR星であり、WR星またはブラックホールの伴星と連星をなしていた
  2. この連星軌道は歪んだ楕円軌道で、その周期は約1年
  3. 爆発前の連星は約1年ごとに周期的に近接し、その度、周囲に酸素・炭素の外層を放出した
  4. 爆発前の星の周囲に一定間隔で並んだ星周物質のリング構造が形成された
  5. 片方の星が超新星爆発を起こした後、衝撃波がリング状星周物質と順次衝突することで周期的に輝いた
  • SN 2022esaの絶対等級の時間進化と残差の時間進化

    (左)SN 2022esaの絶対等級の時間進化(光度曲線)。異なる色は、異なる観測バンド(波長)による明るさを表す。この解析には、「ツヴィッキー・トランジェント天体探査装置」、「小惑星地球衝突最終警報システム」のデータが用いられた。(右)各バンドの光度曲線から滑らかな成分を差し引いた残差の時間進化。三角関数で表せる約30日周期の規則正しい周期性が、すべての観測波長で確認された。(出所:京大プレスリリースPDF)

爆発前に連星をなしていたこと、およびその連星軌道の情報が得られたことから、このような系が連星ブラックホールを形成することが予想され、今回の超新星爆発後にもブラックホールが誕生したと考えられるという。

今回の研究成果から、少なくとも一部のIc-CSM型超新星は、ブラックホール形成に伴う爆発であると結論づけられた。これは、ブラックホール誕生の瞬間を光で捉えられる可能性を示す重要な成果とする。さらにIc-CSM型に対する詳細観測を通じて、ブラックホールを形成する大質量星やその連星系の性質を調べることが可能になったとした。

  • SN 2022esaの想像図

    SN 2022esaの想像図。(左)太陽質量の約10倍のWR星が、もう1つのWR星またはブラックホールと連星をなし、その公転運動に伴って等間隔に連なる、炭素と酸素に富んだリング状星周構造を形成したと推測された。(中央)片方のWR星が重力崩壊してブラックホールを形成すると同時に、超新星爆発を起こした。(右)超新星爆発による衝撃波は、周囲のリングと一定の時間間隔で衝突し輝くことで、周期的な時間変化を示すと共に、Ic-CSM型に特徴的な、炭素・酸素の強い輝線スペクトルを作ったと考えられるとした。(出所:京大プレスリリースPDF)

銀河系内や近傍銀河にある、WR星やその連星系が知られている。実際に、連星周囲に等間隔のリング状星周構造を持つ例も確認されており、SN 2022esaを引き起こした連星系の性質とよく似ているという。今回、銀河系内の「星」と銀河系外で発生する「超新星」の対応がついたことにより、今後は双方の分野で蓄積された知見を共有することで、星の進化とブラックホール形成の理解がさらに進むことが期待されるとしている。