自動運転をターゲットとする半導体をTIが発表

Texas Instruments(TI)はCES 2026において自動運転をターゲットとする3種類の製品ラインナップを発表した。この内容を事前説明会の情報をもとにご紹介したい(Photo01)。

  • 会見場にて米国本社とオンラインで接続するというちょっと捻った方法での説明となった

    Photo01:会場から米国本社とオンラインで接続するというちょっと捻った方法での説明となった。上段左から3人目のRoland Sperlich博士(VP&GM, Processor Products)、4人目のKeegan Garcia氏(GM(Product Line Manager), High Performance Radar)、右から2人目のMark Ng氏(Director of Automotive Systems)の3名によって説明が行われた

まず今回されたのは、以下の3製品(というか1ファミリー+2製品)である(Photo02)。

  • 現時点ではTDA5について、ラインナップの詳細は公開されていない

    Photo02:現時点ではTDA5について、ラインナップの詳細は公開されていない

まず「TDA5ファミリー」であるが、これは現在同社で車載運転支援SoCとして位置づけられている「TDA4ファミリー」の後継製品になる。といっても完全に置き換えるというよりは、既存のTDA4ファミリーの上位製品として追加されるイメージに近い(Photo03)。

  • TDA4はL0~L2位まで、TDA5はL1~L3までを狙う感になる

    Photo03:この図でいえば、TDA4はL0~L2位まで、TDA5はL1~L3までを狙う感になる

L2までとL3以上で何が違ってくるか? と言えば、より多くのセンサー(含むカメラ)入力をもとに、より高度なAIによる認識・判断機能が必要になる事(Photo04)と、従来のドメインベースからゾーンベースへのアーキテクチャの移行が求められるあたりだろうか。

  • 基本的にはTDA4との後方互換性がある模様

    Photo04:ちなみに基本的にはTDA4との後方互換性があるようで、なのでTDA4ベースで構築したソフトウェアをTDA5に持ってゆくという事も可能かと思われるが、このあたりの詳細はまだ未公開

こうした要求に対し、TDA5はこれをチップレット対応設計で実装する事を今回公開した(Photo05)。

  • 電気的I/FはUCIe

    Photo05:電気的I/FはUCIeとあるが、その上位のプロトコルがどうなっているかなどは一切不明

この「チップレット対応設計」なるものが何か、に関しては色々質問してみたものの、まだ詳細な内容を発表できる段階ではないということで明らかにはならなかった。ただ、普通に考えると10TOPS~1200TOPSまでスケールするチップ、というのは考えにくい訳で、例えばローエンドはCompute Chiplet×1とI/O Chipletの構成なのが、ハイエンドだとCompute Chipletが複数個とI/O Chipletといった構成を想定しているのかもしれない。技術的には、例えばユーザーが自身で開発したChipletを統合するといった事も可能ではありそうなのだが、そうした提供のされ方が可能かどうかを含めて、この辺は持ち越しとなった。

SoCそのものはCortex-A720AEなどを含むArm v9aベースであるが、それとは別にC7 NPUが搭載される。このC7、ここではNPUとされているが実際には同社のC6 DSPの次世代製品であり、NPU的な使い方以外にDSP的な使い方も可能とされている。ちなみにSoCのサンプル出荷に先駆けて、Synopsysの上で仮想的にTDA5ファミリーを利用する環境が用意されるという話であり、これを利用して早くから開発をスタートできるとする(Photo07)。

  • チップレット構成イメージ

    Photo06:Cortex-A720を含むGeneral Purpose Computer Chipletとは別に、C7を複数個搭載するChipletが別に用意され、間をUCIe/CNMベースでつなげている、というのが一番リーズナブルな構成かもしれない

  • 今のところはSynopsysのみでCadence向けの対応は未公表

    Photo07:今のところはSynopsysのみでCadence向けの対応は未公表

あらためて特徴をまとめたのがこちらである(Photo08)。

  • TD5のシリーズ展開

    Photo08:ここにはTDA5が4つ並んでいるが、別にラインナップが4種類という意味ではなく、シリーズ展開する(のでラインナップが複数ある)事を示したいだけだそうだ

ハイエンドは1200TOPSを狙うとされているので、これはL4の自動運転がターゲットに入る範疇ではあるが、当初からこの1200TOPS版もラインナップするかどうかは怪しい。24TOPS/WということはNPUだけで50Wを消費する計算になるので、ちょっと冷却方法を含めて色々検討の余地があるからだそう。ついでに言えば、現時点では製造プロセスなども公開されていない。例えば当初の製品はTSMCのN5A(N5の自動車向けプロセス)で、将来の1200TOPSを狙う製品はN3AとかN2Aなど、より微細化したプロセスで製造したチップレットを統合する可能性もあるからだ。この辺は今回のCES 2026でもどこまで詳細が公開されるか不明である。

16TX/16RX構成が可能な4D Imaging Rader

次は4D Imaging Raderの「AWR2188」である(Photo09)。

  • 4Dの意味は3次元の位置+接近速度

    Photo09:4Dの意味は3次元の位置+接近速度だそうだ

現在だと3TX/4RXの「AWR2243」がラインナップされているが、AWR2188は8TX/8RXの構成であり、必要ならカスケード接続で16TX/16RX構成も可能とされる(Photo10)。

  • AWR2188もAM2732のままで行けるのか、新しいMCUが用意されるのかは現時点では不明

    Photo10:AWR2243には対になるMCUとしてAM2732が用意されていたが、AWR2188もAM2732のままで行けるのか、新しいMCUが用意されるのかは現時点では不明

AWR2243も350m以上までの到達距離を誇るが、ADCの信号処理レートは45Mbpsとなっており、より高いRF性能と高解像度化を可能にするとされる。また部品点数が減る事でコスト削減にも貢献するとされる。またゾーンベースの設計では、単に前方監視だけでなく周囲監視用レーダーも統合するニーズが考えられるが、そうした場合にも容易に対応できるとしている(Photo11)。

  • レーダーとの接続にFPD-linkを使う

    Photo11:この場合、レーダーとの接続にFPD-linkを使う、という考え方が面白い。FPD-linkは名前の通りFlat Panel Displayの接続用だが、帯域や配線の特徴を考えるとレーダーにも利用できるということだろう

10BASE-T1に対応するPHY

最後が10BASE-T1対応PHY「DP83TD555J-Q1」である(Photo12)。

  • 今後はMAC無しのPHYだけの製品とかも追加されるのかもしれない

    Photo12:これも今後はMAC無しのPHYだけの製品とかも追加されるのかもしれない

TIはすでに10BASE-T1L対応PHYとして「DP83TD510E」をラインナップしているが、DP83TD555J-Q1は

  • MAC内蔵。SPIで接続できる
  • 時間同期機能を持つ

というあたりが新しい。

説明によれば、例えば車内に多く配置されるセンサーデータなどはそれが何時のデータなのかをきちんと記録する事が必要なものがあり、そうしたケースでは時刻同期機能が役に立つとされる。ただ逆に既存のLIN/CANなどを置き換えるつもりではなく、あくまで時刻同期機能が必要な用途向け、という話であった。

CES 2026ではこれらの製品のデモをブースで行う(Photo13)との事であった。

  • Photo01で示されているスライド(の日本語版)

    Photo13:Photo01で示されているスライド(の日本語版)である