AIならびにデータセンターからの需要拡大を背景に、メモリの供給が逼迫している中、中国のNANDフラッシュメモリ最大手のYMTC(長江存儲)が、新たな価格調整に踏み切り、NANDのウェハ価格を12月のみで10%超上げたとの話題が台湾産業界を中心に広がっていると、台湾の大手経済紙「工商時報」が2025年12月19日付で報じている

YMTCが価格戦略を安値攻勢から転換

それによると、台湾のメモリ業界筋からの情報として、YMTCの2025年12月の実際の取引価格を同11月と比較すると、NANDウェハ価格は10%超の上昇、SSDをはじめとする完成品はも同15~20%の上昇幅であったという。YMTCは段階的な値上げ戦略を採用している模様で、台湾サプライチェーン関係者によると、YMTCは2025年初頭以降、複数回にわたって価格改定を実施、一部製品では実際の取引価格が競合の非中国系メーカーと同等かそれ以上の水準に達しているとのことで、この動きはYMTCが価格戦略を低価格による市場獲得戦略から、「出荷量を抑えつつ価格を安定させる」方針へと転換したものと見られるとしている。

サプライチェーン関係者によると、YMTCのNANDウェハ供給能力は現在、中国湖北省武漢の2工場で12インチ換算で月産約16万枚規模だという。既存ラインの最適化や歩留まり改善で実際の供給量も拡大していることから、YMTCがこれまでの補完的なサプライヤと言った立場から、世界市場でコンシューマ向けNAND市場の価格形成に影響を与える存在になりつつあると関係者は見ている。

コンシューマ製品の選択肢として浮上してきた中国製DRAM

DRAM分野では、中CXMT(長鑫存儲)の生産能力も注目されていると指摘されている。同社の投入量ベースの生産能力は直近で月産28万枚だが、2026年には約30万枚規模に拡大される計画だという。ただ、新規投資による実質的な増産効果は約10%にとどまるとの見方が強いとのことで、米国による先端プロセス向け半導体製造装置や重要技術に対する輸出規制強化が足かせになっているという

Samsung Electronics、SK hynix、Micron Technologyのメモリ大手3社が生産能力や設備投資の重点をAI、HBM、エンタープライズ向け製品へ移行する中、こうしたYMTCとCXMTは、PCやスマートフォンを含むコンシューマ向けメモリ市場における数少ない供給源となりつつある。その上で、こうした実情から、PC大手であるAcerとASUSが、調達の戦略的な選択肢の1つとして、中国系メモリの評価・検証を開始しているという。

メモリ価格の高騰がスマホとノートPCの価格に影響

市場調査会社であるTrendForceの最新調査によると、メモリの価格は2026年第1四半期も上昇が続くと予測されており、世界の最終製品メーカーに大きなコスト圧力をかけることになるという。

結果として、スマートフォン(スマホ)やノートPCメーカーは製品価格の引き上げとスペックの抑制を余儀なくされる。市場リソースが少数の主要ブランドに集中する状況が続く中、出荷予測のさらなる下方修正は避けられないとの見方を示している。

  • メモリ価格高騰に伴うスマホとノートPCのDRAM容量スペックの変化

    メモリ価格高騰に伴うスマホとノートPCのDRAM容量スペックの変化 (出所:TrendForce)

TrendForceは、スマホやPCなどのコンシューマ向け製品において、メモリがBOMコストに占める割合がますます高まっていると指摘している。高い収益性を誇るAppleでさえ、iPhoneのBOM総額に占めるメモリ構成比は2026年第1四半期に大幅に増加すると予想されている。この状況を受けて、Appleは新モデルの価格戦略を見直し、旧モデルの値下げ幅の縮小または撤回を検討する可能性があるとTrendForceは指摘している。

また、メモリの容量がマーケティング上の重要な差別化要因であり、BOMの重要な部分を占める中低価格帯のセグメントをターゲットとするAndroidブランドは、メモリコストの上昇により、2026年に新モデルの発売価格を値上げせざるを得なくなるとの見方もあるほか、損失を最小限に抑えるために、既存モデルの価格設定やライフサイクルを変更する必要も出てくるともしている。

さらに、メモリ価格の上昇により、ノートPCメーカーは製品ポートフォリオ、調達戦略、そして地域別販売戦略の調整を迫られるとも予測している。

モバイルDRAMがマザーボードに直接はんだ付けされていることが多いハイエンドの超薄型ノートPCは、スペックを下げたりモジュールを交換したりすることでコストを削減することができない上に、これらのモデルは設計上の制約が厳しく、早期かつ大幅な価格圧力にさらされる可能性が最も高いセグメントとなるという。

コンシューマ向けノートPC市場は、需要は仕様や価格の変化に依然としてかなり敏感であるものの、完成品の在庫レベルと安価なメモリは、短期的な利益の確保に役立っている。価格は長期契約に基づき、一定期間は安定した状態を維持できる可能性があるものの、中長期的には、仕様の引き下げや価格の引き上げといった調整は避けられない状況にあることから、TrendForceでは、2026年第2四半期までにPC市場の価格変動がさらに大きくなると予測している。

加えてTrendForceでは、スマホやノートPCメーカーにとって、スペック削減やアップグレードの延期がコスト削減の必須手段となっていることを強調している。これは特に、メモリ費用の大部分を占めるDRAMにおいて顕著であり、例えばハイエンドおよびミッドレンジモデルでは、DRAM容量は最低基準付近で推移すると予想され、アップグレードサイクルが鈍化する見込みである。最も大きな影響を受けるのはローエンドスマホ市場で、2026年にはベースモデルが4GBに戻ると予想される。一方、低価格ノートPCは、プロセッサのペアリング要件やOSの制限により、DRAM容量をすぐに削減することはできないというジレンマが生じるという。

PCメーカー各社が値上げを続々アナウンス

メモリ価格が高騰する中、Dellは他社に先んじる形で12月17日から法人向け製品を全体的に値上げを図った。台湾のAcerとASUSはともに、高騰するメモリコストの転嫁が業界全体のコンセンサスとなっていることを認めており、市場では現在、2026年1月以降、高騰するメモリ費用がコンシューマ/ビジネス向けPC問わず、メーカー希望小売価格に完全に反映されるとの予想が主流である。

業界情報では、Dellは法人向け製品の価格を10%から30%ほど引き上げたが、AcerとASUSはまだ正式なメーカー希望小売価格を変更していない。

  • 主要ノートPCメーカーのPC値上げ状況とメモリ価格高騰対策

    主要ノートPCメーカーのPC値上げ状況とメモリ価格高騰対策 (出所:TrendForce)

なお、業界の見通しとして、2026年第1四半期のノートPCの販売は前年比で少なくとも10%減となり、第2四半期はさらに10~20%減となる可能性が高いという。