京都大学(京大)、千葉大学、理化学研究所(理研)の3者は12月19日、国際宇宙ステーション(ISS)搭載の2基の装置による日米国際連携観測「MANGA」(MAXI And NICER Ground Alert)により、ペルセウス座の食変光星「アルゴル」で発生した、太陽フレアの約10万倍の規模を誇る「スーパーフレア」の「食」による減光を観測し、そのサイズと発生位置を特定することに成功したと共同で発表した。
同成果は、京大 理学研究科の中山和哉大学院生、同・榎戸輝揚准教授、同・井上峻大学院生、千葉大の岩切渉助教、理研の三原建弘専任研究員、米国航空宇宙局(NASA) ゴダード宇宙飛行センターの濱口健二研究員、米・コロラド大学ボルダー校の野津湧太研究員らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国天文学会が刊行する天体物理学を扱う学術誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。
「MAXI」と「NICER」の連携観測で捉えた!
太陽表面の爆発現象であるフレアは、1859年発生の「キャリントン・イベント」が観測史上最大で、放出エネルギーは1025ジュールに達するとされる。一方で宇宙には、その10倍以上のエネルギーを放つスーパーフレアも存在する。その発生メカニズムが太陽フレアと同様か解明することは、磁気流体力学や系外惑星の生命居住可能性を論じる上で極めて重要であり、その解析にはサイズと発生位置情報が重要だが、遠方の恒星では直接的な測定が極めて困難という課題があった。
こうした中、例外的に詳細な示唆が得られているのが、地球から95光年弱の距離にあるアルゴルだ。同星は、B型主系列星の主星(アルゴルA)とK型準巨星の伴星(アルゴルB)から成る連星(正確にはAとBの周囲を公転する伴星Cが存在する三重連星だが、Cは減光にほぼ関与しない)で、互いに隠し合う「アルゴル型食変光星」の代表例である。そのため、明るさは約2.1~3.4等の間で変化する。
過去のX線観測では、偶然Bで発生したスーパーフレアをAが隠す「副極小」での減光が2度確認されていた。それにより、どちらのスーパーフレアもBで発生し、1回目のフレアのサイズは太陽直径に匹敵する約140万kmで、太陽では記録のない南極付近での発生が示唆された。しかし、突発的なフレアと食が重なる観測は極めて難しく、10年以上も追認が途絶えていた。そこで研究チームは今回、連携観測のMANGAに注目したという。
日本の全天X線監視装置「MAXI(マキシ)」と、NASA ゴダード宇宙飛行センターのX線望遠鏡「NICER(ナイサー)」は、共にISS搭載のX線観測装置だが特性が異なる。前者は、感度は低いが視野が広く、ISSの軌道周期約90分に合わせた全天走査によりスーパーフレアを効率よく発見できる。対する後者は視野は狭く、通常は他天体を観測しているため、スーパーフレアの発生を検出できない。ただその代わりに、高感度なためフレア食の観測が可能だ。この両者の互いの長所を組み合わせ、MAXIが捉えた突発現象をNICERで詳細に観測するというのがMANGAである。
2018年7月4日、MAXIがキャリントン・イベントの約10万倍に相当する1030ジュールという極めて巨大なスーパーフレアをアルゴルで検出。MAXIチームは即座にスーパーフレアの減光の時間スケール予測とアルゴルの現在の連星軌道を計算し、少なくともフレアは数日間継続し、約1日後にはAによるフレア食が発生することが予測された。
NICERの感度なら十分に検出可能と考えられたことから、MAXIチームからNICERチームへの緊急連絡が行われた。その結果、予測されたフレア食の時刻より前にNICERをアルゴルへと向けることに成功。そして、副極小の位置で実際にAによるスーパーフレア食が起き、その過程が詳細に観測された。
続いて、観測データとフレアの発生場所の詳細なシミュレーションの比較が行われた結果、フレアのサイズは約190万kmであることが判明。これは、過去の観測を大きく上回る極めて巨大なもので、発生場所は中緯度から高緯度にかけての領域と特定された。
今後は、今回の成果のような観測時例を増やすことで、スーパーフレアの発生メカニズムに関する議論の進展が期待されるという。また、スーパーフレアに関しては、日本のX線分光撮像衛星「XRISM」による高分散分光観測からも新たな知見を得られる可能性があるとしている。



