小惑星探査機「はやぶさ2」がめざす新たな小惑星・トリフネのフライバイ探査日が2026年7月5日になると、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙科学研究所(ISAS)が発表。現在の軌道運用状況に基づく情報で、はやぶさ2拡張ミッションチームは「トリフネフライバイ探査の成果に期待してほしい」としている。
はやぶさ2は2020年12月6日、小惑星リュウグウのサンプルが入ったカプセルを地球に届けたあと、地球圏を離脱。現在は「はやぶさ2拡張ミッション」(はやぶさ2#)として運用が続いており、2026年の小惑星トリフネでのフライバイ探査と、2031年の小惑星1998 KY26へのランデブーが予定されている。
ISASによると、はやぶさ2は2026年7月5日に、トリフネの近くを相対速度5km/sほどで通過・接近しながら観測を行うことになる。フライバイの時刻はまだ決まっておらず、フライバイ日(探査機がトリフネに最も接近する日)が近づいてきたタイミングでアナウンスする予定。今後の探査機の運用状況だけでなく、「トリフネのどの面を観測するとよりよいデータが得られるか」といった、サイエンス観測の面でも検討が進められているためとしている。
トリフネの自転周期は約5時間。少し時間をずらせばトリフネの別の面が見えることになる。さらに、探査機との通信でどの地上局を使うかも重要だという。はやぶさ2との通信は通常、日本にある2カ所の地上局(臼田宇宙空間観測所、美笹深宇宙探査用地上局)で行われているが、重要な運用の場合にはアメリカやオーストラリア、スペインなどにある米国の地上局も使うことになる。フライバイ時やその前後でどの地上局を使うかも、フライバイ時刻を決める重要な条件とのこと。
フライバイ時のトリフネからの距離も重要な要素で、現在はトリフネ表面から1kmくらいまで接近させられないか検討中。トリフネの大きさは平均直径で約450mと推定されており、細長い形状と見られているものの、大きさや形が分かっていないこともあり、接近距離については慎重に検討しているという。はやぶさ2は小惑星になるべく接近して詳細な観測を行う設計で、望遠鏡など遠方から観測するような装置は積んでいないため、このような検討が行われている。
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最接近距離の違いによる探査機の運用の説明図。(1)の軌道では、安全にフライバイできるが距離が遠いため解像度のよいデータが得られず、接近しながら探査機の向きを大きく変える必要もある。(3)の軌道では、探査機の向きを小惑星方向に固定したまま至近距離まで接近できるが、探査機が小惑星に衝突してしまう。(2)の軌道のように、できる限り小惑星に近いところを通過させると、解像度のよいデータが得られ、最接近の直前まで探査機の姿勢を大きく変更する必要がない。ただし、小惑星に近づきすぎると衝突の危険性がある 出所:ISASニュースリリース
はやぶさ2のカメラは固定されているため、トリフネに対して探査機の姿勢(向き)を変えることで対応するが、短時間では姿勢を大きく変更できない。ただ、最接近距離が小さければ、接近していくときに探査機の姿勢を変えなくてもずっとカメラの視野にトリフネが入ることになる。観測は最接近の直前まで続けられ、最接近の前後では探査機の向きを大きく振ってトリフネを捉えることになるという。
はやぶさ2のトリフネフライバイミッションには、新たな小惑星を調べるという惑星科学の観点に加えて、プラネタリーディフェンス(地球防衛)の技術を獲得するという目的もある。トリフネへの最接近距離が小さいときには、特に正確な軌道誘導(ナビゲーション)が求められるが、これは探査機を小さな小惑星に衝突させるといった応用も可能。探査機の正確なナビゲーションに成功すれば、日本も天体の地球衝突回避に寄与できる可能性がある。


