Vicorの電源モジュールが人工衛星向けボードに採用
Vicorは、同社の電源モジュールが衛星および宇宙船向け電子ソリューションを手掛ける英Spacechipsの小型オンボードプロセッサカード「AI1トランスポンダ」に採用されたことを発表した。
宇宙活用ニーズは年々高まりを見せており、さまざまな企業が高度な演算能力と高い信頼性・堅牢性を備えるオンボードプロセッサシステムを搭載した小型人工衛星に注目しつつある。そのため、ロジック半導体としてもウルトラディープサブミクロンFPGAやASICといった高性能プロセッサの活用が期待されているが、低電圧・大電流という厳しい電源要件があることに加え、宇宙空間における温度管理や放射線対策などを行う必要があり、システム設計の複雑度は増しているという。
AMDのVersalの性能を宇宙で活用
Spacechipsの開発したAI1トランスポンダはそうした課題を解決するために開発されたもので、AMD(旧Xilinx)の宇宙用Versal XQR(ACAP)を搭載することで、最大133TOPSの性能を提供し、地球観測、宇宙空間での保守・組立・製造(ISAM)、電気信号の傍受(SIGINT) 、情報・監視・偵察(ISR)、通信分野などにおけるさまざまなアプリケーションでの新たな試みを可能にするという。
これにより、例えば低軌道(LEO)では、特定地域に対する直接通信は10分に1回程度であり、その間にデータ処理を終わらせる必要がある。StarchipsではAI1を活用することで、リアルタイムかつ自律的なコンピューティングが実現するとしており、これにより宇宙デブリを追跡し、重大な衝突事故を回避したり、ミッションに不可欠な衛星システムの健全性を監視したり、悪天候パターンの検出や農作物の生産に重要な降雨データの報告などをいち早く行うことができるようになると説明している。
宇宙で求められる高信頼性と高密度を両立した電源モジュール
その一方で、リアルタイムでの処理を高い信頼性で実行し続けるためには、高精度の電源管理が不可欠であり、その実現に向けた電力に対する要件は厳しくなっているほか、人工衛星の重量を増やさないでそうしたニーズを満たす必要があることから、StarchipsはVicorの高電力密度の電源モジュールを用いたファクトライズド・パワー・アーキテクチャ(FPA)を組み込むことにしたとする。
FPAは、DC-DC変換を機能ごとに独立したモジュールに分割して、電力供給システムを組み立てる仕様。Vicorの放射線耐性モジュールとしては、絶縁機能と28Vへの降圧を行うバスコンバータモジュール(BCM)、電圧調整を行うプレレギュレータモジュール(PRM)、PRMの後段に電圧変換モジュール(VTM)またはカレントマルチプライヤを組み合わせることで、28V DCを0.8Vへと変換することを可能としたとする。
このFPA電力供給システムの採用により、Starchipsでは、通信トラフィックの状況に応じて、使用するRF周波数帯、チャネル管理、変調方式、通信規格を自律的に変更しながらリアルタイムのオンボード処理を行うことが可能になったと説明しているほか、コンバータモジュールは電力変換部が二重の冗長構成となっており、それぞれの電力変換部は各々100%の負荷を取ることができるようになっているとする。
