AMDは12月3日、同社のAI関連イベント「Advancing AI 2025 Japan」を開催し、同社のAI戦略や現在の状況、日本でのパートナーとの取り組み内容などの紹介を行った。
基調講演には、日本法人である日本AMDの代表取締役社長を務めるジョン・ロボトム氏が登壇。「加速するAI~技術・ビジネスそして人々の『信頼』を共に」と題しIDC、富士通、日立製作所からゲストを迎え、AMDのAIに向けた取り組みなどを説明した。
テーマに掲げた「信頼」というキーワードについて同氏は、「信頼がなければビジネスとして成り立たないと思っている。特にAIというビジネスは、これからというところが多いが、AMDとしては、コアのプロダクトロードマップやデリバリについて、これまでしっかりとやってきた。AIに限った点でいえば、急速なキャッチアップを進めている段階であり、そうした取り組みに対して信頼してもらうというのが重要になる。そのためにはエコシステムやプロダクトであったり、今後の投資をしっかりと行っていく姿勢を見せていく必要があると思っている」と、エコシステムパートナーやカスタマ、ユーザーなど、さまざまなステークホルダーから信頼されることが事業の拡大につながることを強調した。
実際、同社のユーザーやパートナーである富士通や日立からは、同社の技術優位性などが説明され、AMDがAIを推進していくうえで、信頼に足りるパートナーであることが語られていた。
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基調講演にゲストスピーカーとして登壇した3名。このうち、富士通は独自CPU「Fujitsu-MONAKA」とAMDのGPU「Insitinct」を連駅させた取り組みを推進する間柄。日立は自社のAI PC導入推進においてAMDの比率を増やしており、2025年9月時点で社内シェアは49%まで上昇。2025年度中には社内シェア50%を突破する見通しのユーザー企業となる。この日立のAMDのAI PCの導入にあたっては、海外法人の一部からAMDのCPUは発熱が大きいのでは? という懸念が出されたが、AMDと協力して同一筐体に競合とAMDのマザーボードを納める形で負荷試験を実施、通常負荷の場合、AMDの方が発熱量が低いことを実証し、エビデンスとして活用したという
Ryzen AI搭載PCはすでに250製品を突破
最近のAMDで話題になりやすいのが、サーバ向けのEYPCがシェアを拡大していることや、NVIDIA対抗のデータセンターGPUとなる「Insitinctシリーズ」などだが、AI PCに向けた製品の拡充も積極的に行っている。
その結果、PCメーカー各社との協業により、Ryzen AIプラットフォームを搭載したPCはすでに250機種以上が市場に提供されているようになっており、ビジネス規模も2020年の80億ドルから2025年には140億ドルに到達する見込みだとする。
一方のデータセンター分野についてはさらに好調で、ハイパースケーラートップ10社中10社がEPYCを活用しているとするほか、メジャーソーシャルプラットフォーマー10社中10社も採用してもらっており、InsitinctについてもトップAI企業10社中7社が採用済みのほか、スーパーコンピュータ(スパコン)性能ランキングであるTop500のトップ10のうち4システムが採用しており、そのうち2システムが2025年11月版で1位を獲得したEl Capitanと2位を獲得したFrontierであるとする。
また、同社はすでに米国の次世代のエクサスケールスパコンである「Discovery」を受注済みであることに加え、欧州からもエクサスケールスパコンを受注するなど、HPC分野における存在感をさらに増す勢いを見せている。
ラック全体をリファレンスとして提供する「Helios」
またAMDは、AIデータセンター向けにラックスケールAIプラットフォーム「Helios」を2026年後半には出荷を開始する予定だとしている。
Heliosは最大256コアの次世代EPYC「Venice」(開発コード名)とデータセンターGPU「Insitinct MI400」を組み合わせたラックスケールのリファレンスという位置づけ。CPU-GPU間にはAMD Infinity Fabricを使用するほか、GPUとAIネットワークインタフェースカード(NIC)間をUALinkで接続。ほかのHeliosとの接続にはUltra Ethernet(UEC)対応AI NICを活用するなどAMDの持てる技術をふんだんに盛り込むことを予定しているが、実際のデータセンターへの納入にあたっては、例えばハイパースケーラー側から、こういったラックや水冷機構で導入したいというニーズがあれば、それに柔軟に対応できるものになるとしている。
すでにMetaのほかOracleも採用を発表しているほか、12月2日にはHPEもHeliosを採用することをアナウンスしている。
エッジからデータセンターまで同じアーキテクチャでAIを実現できる環境を構築
AI PCとデータセンター(EPYC+Insitinct)は、これまでのAMDのビジネスの流れを踏まえても、CPUについてはx86ベースで親和性があることから地続きであることがわかりやすいが、AMDとしてはその先にあるエンベデッド/エッジAI/フィジカルAIといった分野も視野に入れている。
同社はFPGAベンダのXilinxを買収したことで、FPGAを活用したAIソリューションを獲得した。このFPGAの1種であるVersal AI Core/Edge用に開発されたAIエンジンが、そのままRyzen AIの推論用エンジン(NPU)として活用されるなど、エンベデッドからPC、HPCまでシームレスにAIを活用する下地作りに注力してきた。
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Xilinx買収前からx86を中心に組み込み向けにビジネスを展開してきたが、FPGAを手に入れたことにより、それぞれの組み込み分野のニーズに応じたソリューションを柔軟に提供できるようになったのが他社にはない強みとなっている
この点について、AMDのAPAC エンベデッド・セールス ジャパン カントリーディレクターである杉山功氏(基調講演後のプレスブリーフィングにて登壇)は、「例えばフィジカルAIの開発には時間がかかるが、AMDのソリューションを活用すれば、まずはPCで開発を行い、ソフトウェアやシステムの評価を行ったうえで、同じアーキテクチャのハードウェアをエンベデッドに落とし込むことができる。AIが幅広く浸透していくのがフィジカルAIの世界だと考えれば、それに対応したシステムを他社に先駆けて開発できるようになるソリューションを持つ存在がAMDだと思っている。エンベデッドの世界は消費電力もシビアであることも承知しているし、AMDとしてはそれに最適化した製品を提供することこそが、AIの普及に必要なことだと考えており、ローエンドからハイエンドまでエンドツーエンドでソリューションを提供していくことで、そうしたニーズに答えられる解だと思っている」とのことで、ローエンドFPGAであるSpartanシリーズから、ハイエンドFPGAであるVersalシリーズ、そしてエンベデッドを含むx86ベースのCPU、Radeon/InsitinctのGPUなど、幅広いハードウェアを用途に応じて提供していくことができるようになっているのが現在のAMDであり、そうした取り組みがセミカスタムシリコンのビジネスへの発展や2035年にはシリコンのTAMが2000億ドル超になると期待されるフィジカルAIの分野での強みになってくるとの見方を示す。
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フィジカルAIというと人型ロボットに注目が集まりそうだが、ドローンや協働ロボット、自動運転車なども含まれる。そうしたアプリケーションの中には、低消費電力や低発熱だが高いリアルタイム性を持ったAI処理が求められるものといったものも多くあり、そうした場合、GPUでは性能が過剰すぎるし消費電力も大きすぎるという問題が生じる。そこを各種のFPGAからRyzen/EPYCまで幅広くそろえてニーズに応じて提供できる点がAMDのエンベデッド領域での強みだとする
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システムの開発にあたっても、FPGA、GPU、GPU、NPUとAMDだけで対応できるため、使用するツールについても最小限で、あちこちデータのやり取りをするといった手間も省くことができるようになるとする
すでに国内でもFPGAベースの事例としてはTokyo Artisan Intelligence(TAI)とJR九州によるKria SOMを利用したAIベースの新幹線線路の点検ソリューションや、SUBARUのアイサイトへの採用などがあるが、それ以外にも多数のプロジェクトが動いているとするほか、「日本はフィジカルAIの親和性が高い」(杉山氏)とのことで、そうした分野での今後も多くの事例を生み出していくことで、エンベデッド領域での成功につなげていきたいとしており、「そうした取り組みの成功がAMD全体の成功につながる」ことを強調していた。







