早稲田大学(早大)、名古屋大学(名大)、筑波大学、広島大学、国立天文台の5者は11月18日、アルマ望遠鏡による高感度観測で、エリダヌス座の方向、約132億年前の遠方宇宙(赤方偏移8.3)に存在する銀河「MACS0416_Y1」(Y1)の星間塵の温度が、他の遠方銀河の2~3倍、天の川銀河の約5倍にもなる絶対温度90K(約-180℃)にも達することを確認し、その原因が天の川銀河の約180もの速さで星を生産していることによるものであると共同で発表した。

  • 新しく生まれた星によって高温に加熱された星間塵が輝いているY1

    丸で囲まれた赤い天体が、新しく生まれた星によって高温に加熱された星間塵が輝いているY1。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による赤外線画像。(c)NASA, ESA, CSA, STScI, J. Diego (Instituto de Física de Cantabria, Spain), J. D’Silva (U. Western Australia), A. Koekemoer (STScI), J. Summers & R. Windhorst (ASU), and H. Yan (U. Missouri)(出所:アルマ望遠鏡Webサイト)

同成果は、早大 理工学術院の井上昭雄教授、名大大学院 理学研究科の田村陽一教授、筑波大大学院 数理物質科学研究科の橋本拓也助教、広島大 宇宙科学センターの稲見華恵准教授らを含む、25名の国内外の研究者が参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、英国王立天文学会が刊行する学術誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」に掲載された。

猛烈な星形成でその熱さは天の川の5倍に!

宇宙の誕生から1億~2億年後、水素とヘリウムのみで構成された第一世代の星である「ファーストスター」が誕生し、ほどなくして銀河も生まれたとされる。この時代の星や銀河は、現在とは異なる条件で急速に形成されたと考えられているが、その詳しいメカニズムは未解明だ。

これまでの観測から、遠方、すなわち初期宇宙の銀河にも星間塵の存在が確認されており、観測史上最遠方で星間塵が検出された銀河が、今回の観測対象となったY1だ。星間塵は、地球のような岩石型惑星の材料となる、炭素やケイ酸塩の固体微粒子で、典型的なサイズは0.1μmと推定されている。加熱された星間塵の粒子は、可視光よりも長い波長、特に赤外線で明るく輝くため、こうした銀河は「超高輝度赤外線銀河」と呼ばれる。

Y1は、宇宙誕生から約6億年しか経過していない時代に存在する若い銀河だが、それにも関わらず大量の星間塵を含むことが報告されていた。しかし、元素や星間塵がある程度の量まで蓄積するには時間がかかるという説もあり、この「多すぎる塵の問題」は、長年研究者を悩ませてきた。そこで研究チームは今回、アルマ望遠鏡を用い、Y1を高感度観測したという。

  • NIRCAMおよびアルマ望遠鏡でとらえたY1とその周辺

    ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラNIRCAM(青・緑)およびアルマ望遠鏡(赤)でとらえたY1とその周辺。(c)NASA, ESA, CSA (JWST), T. Bakx/ALMA (ESO/NRAO/NAOJ)(出所:アルマ望遠鏡Webサイト)

今回の研究では、アルマ望遠鏡の大きな特色の1つである短波長電波観測機能を活用し、波長0.44mmの電波による観測が実施された。その結果、Y1がこの波長で明るく輝いていることが観測された。この輝きは、銀河内の星間塵が星の光で異常に加熱されていることを示唆する。解析の結果、星間塵の温度は90Kと判明し、これは他の遠方銀河との比較で2~3倍、天の川銀河の星間塵との比較では約5倍にもなる極めて高い温度である。

現在の天の川銀河は、1年に太陽質量約1個分の星を生み出すのに対し、Y1はその約180倍、1年間に太陽180個分もの質量の星を生成している。このような激しい星形成は一時的な現象と考えられ、初期宇宙で銀河が急速に成長する仕組みを理解する上で重要な観測例となる。今回の観測により、Y1が「超高温の星工場」であることが明らかにされた。

さらに、この極めて高温の星間塵の存在は、他の若い銀河に見られる「多すぎる塵の問題」を説明する可能性を示唆するとのこと。少量で高温の星間塵と、大量で低温の星間塵は、波長1mmを超えるような電波では同じ程度の明るさで輝くため見分けがつかない。従来の観測は、このような長い波長の観測に限られていたため、それによって推定された塵の量は過大評価されてきた可能性があることも明らかにされた。

今回の成果は、初期宇宙における星形成と銀河進化の理解を大きく前進させるものとする。「なぜ若い銀河に星間塵が多いのか」という長年の謎を解明する手がかりとなるだけでなく、宇宙初期における元素や星間塵の蓄積過程の理解にもつながるとした。また今後は、今回実施された波長の短い電波による観測で正確に星間塵の温度を測定し、その総量を見直すことが重要になるとした。

研究チームは今後、さらに多くの遠方銀河を観測し、Y1のような超高温の星間塵がどれほど一般的に存在するのかを解明する予定とする。またアルマ望遠鏡の高解像度観測によって、銀河内部で星や塵がどのように分布しているのかを詳しく調べる計画だといい、これにより、初期宇宙で銀河がどのように成長し、多様な形へ進化していったのかを解明できる可能性があるとしている。