地球電磁気・地球惑星圏学会(SGEPSS)、東京理科大学(理科大)、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の3者は11月14日、火星の地殻が地球の約10倍も強く磁化している原因を究明すべく、地球の岩石を用いた模擬実験を実施し、岩石中に含まれる微小な磁性鉱物の量や性質を詳しく分析した結果、火星ではこれらの鉱物が磁気を効率よく記録できる条件が整っていたことが判明し、約40億年前の「ノアキアン期」の火星には、現在の地球の半分程度の強さの磁場が存在していた可能性が示唆されたことを共同で発表した。

加えて、この磁場の形は、棒磁石が作る磁場と同じ「双極子型」であったことも明らかにされた。

  • 過去の火星磁場と大気の保護のイメージ

    過去の火星磁場と大気の保護のイメージ(出所:理科大Webサイト)

同成果は、理科大 理学部第一部 物理学科の佐藤雅彦准教授を中心に、四国総合研究所、JAMSTEC、横浜国立大学、東京大学、九州大学、米・テキサス大学の研究者が参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、11月23日~27日に神戸大学で開催される「地球電磁気・地球惑星圏学会 2025年秋季年回」にて、25日に発表される予定だ。

火星磁場の推定でさらなる環境解明の足掛かりに!

火星は、太陽系のうちでは最も到達しやすく、また太陽系の中では地球に最も近い環境を持ち、生命が現在も存在する、もしくは過去に存在していた可能性が高いと考えられている惑星だ。そのため、これまでに最も多くの人類の探査機が送り込まれてきた。今後も日本の火星衛星探査計画「MMX」をはじめ、世界の多数の国が探査機を送り込む計画で、中にはサンプルリターン計画も含まれる。

これまでの数多くの探査で得られた情報を基に、火星の内部構造や磁場の歴史を解明することは、同惑星の形成・進化を理解する上で不可欠である。特に火星の磁場研究は、同惑星の内部で磁場を生成する仕組みであるダイナモ作用がどのように働き、いつまで継続していたのか、その期間をしる唯一の手がかりとなる(火星はすでに固有磁場を持たないが、地殻に残存する磁場は存在する)。さらに、火星の熱的・化学的な変化、そして大気や水の変化を理解する上でも欠かせない情報だ。

これまでの観測から、火星の地殻は地球の約10倍も強く磁化していることが判明している。その理由としては、古代火星では強いダイナモ作用があった可能性や、地殻に磁性鉱物が豊富に含まれていた可能性が考えられていたが、具体的な仕組みは未解明だった。そのため、火星地殻に記録された強い磁気の起源を解明することは、国際的にも大きな関心を集めているテーマとなっている。そこで研究チームは今回、火星地殻岩石に含まれる微小な磁性鉱物に注目したという。

今回の研究では、磁気測定、放射光測定、さらに熱力学計算などの最新手法を組み合わせ、地球の岩石を用いた模擬実験を実施。これにより、火星地殻岩石に含まれる微小な磁性鉱物の量や性質が詳しく調べられた。その結果、火星の地殻にはこうした微小な磁性鉱物が多く存在し、効率よく磁気を記録できることが明らかにされた。

この結果に基づき、ノキアン期(約41億年前~約37億年前)の約40億年前の火星の磁場は10~20マイクロテスラと推定された。これは、現在の地球の磁場(日本などの中緯度で40~50マイクロテスラ)の半分程度の強さに相当する。さらにこの磁場強度から火星内部の熱の流れも推定され、ダイナモ作用で作られる磁場の形が双極子型だったことが解明された。ノアキアン期の火星は、このように十分な強さの磁場があったことから、太陽風や有害な宇宙線から大気表層が保護されていた可能性も示唆された。これらの成果は、火星の磁場の歴史や内部構造を理解する重要な手がかりとなり、将来の火星探査やサンプル回収計画の科学的基盤となる重要な知見である。

今回の研究では、約40億年前の火星磁場の強さが具体的に推定された。研究チームは今後、この磁場情報を基に火星の大気や地表環境をより詳細にモデル化し、火星表面の変化や生命が存在できた可能性のある環境について、さらに理解を深めていく予定としている。