東京大学(東大)は11月7日、主星の至近距離を公転する巨大ガス惑星「ホットジュピター」が、主星から遠く離れた軌道で形成された後、その至近距離まで移動したと考えられている移動メカニズムのうち、原始惑星系円盤内をゆるやかに移動する「円盤移動」を見分ける初めての観測的手法を考案し、約540個のホットジュピターのうち、少なくとも約30個が円盤移動由来と考えられる特徴を示すことを発表した。
同成果は、東大大学院 総合文化研究科 広域科学専攻の河合優悟大学院生、同・福井暁彦講師(同・研究科 附属先進科学研究機構 講師兼任)、同・渡辺紀治特任研究員、同・成田憲保教授(同・研究科 附属先進科学研究機構 教授/アストロバイオロジーセンター 客員教授兼任)、東大 教養学部の深沢匠学部学生らの研究チームによるもの。詳細は、米国天文学会が刊行する天文学を扱う学術誌「The Astronomical Journal」に掲載された。
“静かに生まれた”ホットジュピターの識別を効率化
1995年に発見された史上初の系外惑星「ペガサス座51番星b」は、木星の半分ほどの質量を持つ巨大ガス惑星である。その最大の特徴は、極めて短い公転周期だ。太陽系では、巨大ガス惑星は最も内側の木星ですら12年弱の遠い軌道を回るのに対し、この惑星はわずか4日という主星の極めて至近を公転する軌道を持つ(太陽系では水星ですら88日かかる)。
その後、類似の公転周期を持つ巨大ガス惑星が相次いで発見され、現在ではその総数は約540個に達する。太陽系の巨大ガス惑星は極寒の領域に存在するのに対し、これらの惑星は主星の極めて至近距離を公転しているため、表面温度が極めて高温なことも特徴だ。この特徴から、ホットジュピターと呼ばれているのである。
ホットジュピターは、木星などと同様に主星から遠方で誕生した後に内側へと移動したと考えられており、その仕組みには「高離心率移動」と「円盤移動」の2種類が唱えられている。このうち高離心率移動は、他天体の重力により軌道が高離心率化し、その後、主星近傍で軌道が円形化するというものだ。離心率とは、惑星の軌道がどの程度円形か楕円形かを表す値で、0なら完全な円軌道、1に近いほど細長い楕円軌道となる。
一方の円盤移動は、誕生したての星の周囲に存在する原始惑星系円盤内で惑星が形成されている最中、あるいは形成直後から円盤が消失するまでの間に、円盤内のガスとの相互作用(ガスの抵抗や重力など)によって惑星の軌道が変化し、内側(または外側)へと移動する過程を指す。
しかし、ホットジュピターがどちらの仕組みにより主星近傍へと移動したのかを、観測から直接判別することは困難だ。高離心率移動の場合は、軌道が乱された痕跡として主星の自転軸と惑星の公転軸の傾きが手がかりになる。だが、この傾きは時間経過と共に再度揃ってしまう可能性があり、傾きが小さいことだけで円盤移動を意味するとは限らない。そのため、円盤移動で形成された惑星を識別する観測的手法がほぼないことが課題だった。そこで研究チームは今回、高離心率移動から軌道の円形化にかかる時間に着目したという。
高離心率移動では、惑星が軌道を乱され、一時的に強い楕円軌道となった後、主星近傍を通過する際に受ける潮汐力によって軌道が縮み、円形化していく。潮汐力とは、ある天体を公転する天体が受ける重力が、天体上の各点によってわずかに異なることで生じる力のことだ。この軌道の円形化にかかる時間は、惑星の質量や公転周期、潮汐効果の強さなどにより決定される。そして、もしホットジュピターが高離心率移動で形成されたのであれば、この軌道の円形化にかかる時間は惑星系の年齢より必ず短くなければならない。
今回の研究では、この関係を利用し、軌道の円形化にかかる時間と惑星系の年齢を比較することで、円盤移動によって形成されたホットジュピターを識別する新手法が提案された。この新手法を約540個のホットジュピターに適用したところ、高離心率移動では説明のできない、軌道の円形化にかかる時間が惑星系の年齢を上回る惑星が30個程度存在することがわかった。
さらに、これらの惑星では、他にも円盤移動を示唆する特徴が確認された。具体的には、この集団には軌道が傾いた惑星が存在しない点だ。これは、惑星が円盤内を軌道が乱されることなくゆるやかに移動してきた場合の予測と整合的である。加えて、これらのホットジュピターのいくつかには、近くに別の惑星が存在した。これは、他の惑星を弾き飛ばしてしまう高離心率移動では見られない特徴である。
惑星系の形成を理解する上で、形成環境の記憶を保った惑星を判別することは非常に重要だ。今後、これらの惑星における大気組成の観測から、円盤内での形成場所についての情報を得ることで、ホットジュピター誕生の全体像がさらに解明されることが期待されるとしている。




