
企業人にこそ世界をつなげる役割がある
「グローバルでブームが来るのではないか、もしくは来ているのではないかと思う。全世界でこれだけ売れるというのは今までなかった現象であり、当社のブランドを世界中の方に知ってもらえたのだと思う」
ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏はこう語る。
ファーストリテイリングが2025年8月期の連結決算を発表。売上収益3兆4005億円(前年同期比9・6%増)、営業利益5642億円(同12・6%増)、当期純利益4330億円(同16・4%増)と、いずれも過去最高を更新した。国内ユニクロ事業の売上収益が初めて1兆円を突破するなど、日本や東南アジア、北米、欧州などの販売が好調だった。
一方、気になるのは、これまで同社の成長のけん引役だった中国事業。中国ユニクロ事業の売上収益は6502億円(同4・0%減)、営業利益926億円(同11・6%減)と、減収減益になった。中国経済の景気減速が直撃した形だ。
「中国は広い。もう一回、サプライチェーン(供給網)やEC(電子商取引)、あるいは生産と販売などの基本にかえる。大事なことは〝個店経営〟で、お客さんが欲しい色やサイズ、商品を買いたくなるような売り場を作ることだと思う」(柳井氏)
カジュアル衣料品業界の中で、すでにファーストリテイリングは世界3位。『ZARA』のスペイン・インディテックス、『H&M』のスウェーデン・ヘネス・アンド・マウリッツに次ぐポジション。ZARA(売上高約6・8兆円)の背中は遠いが、H&M(同約3・7兆円)の背中は見えるところまで来た。
米中対立やウクライナでの戦争など、世界が混沌とする中で、柳井氏はグローバルにビジネスをする企業人こそが、今まで以上に、世界をつなげる役割を担わなくてはならないと強調。
「お客さんの視点に立って、いかにお客さんから評価される商品をつくり、どんな価値を創造していくのか。われわれは価値を創造することにもっと貪欲にならないといけない」(同)
カジュアル衣料品で世界一という目標に向け、柳井氏の挑戦はまだまだ続きそうだ。