Future USは2025年10月3日(米国時間)、「Motion sensors in high-performance mice can be used as a microphone to spy on users, thanks to AI - Mic-E-Mouse technique harnesses mouse sensors, converts acoustic vibrations into speech|Tom's Hardware」において、高性能光学式マウスによる盗聴を可能にする新技術「Mic-E-Mouse」が開発されたと報じた。

これはカリフォルニア大学アーバイン校の研究グループが開発したサイドチャネル技術で、攻撃者はマウスの高性能センサーが捉えた微細な振動を可聴データに変換することで周辺音声を盗聴することが可能とされる。

  • Motion sensors in high-performance mice can be used as a microphone to spy on users、thanks to AI - Mic-E-Mouse technique harnesses mouse sensors、converts acoustic vibrations into speech|Tom's Hardware

    Motion sensors in high-performance mice can be used as a microphone to spy on users, thanks to AI - Mic-E-Mouse technique harnesses mouse sensors, converts acoustic vibrations into speech|Tom's Hardware

AIがマウスのデータを変換

研究者の発表によると、高性能マウスから得られる振動データは低品質で、不均一なサンプリング、非線形の周波数応答、極端な量子化といった課題があり、そのままでは音声として認識することは困難とされる。研究者はこの課題を克服するため、連続する信号処理と機械学習技術を開発し、スケール不変信号対雑音比(SI-SNR: Scale Invariant Source-to-Noise Ratio)で19dB増、話者認識精度で約80%、単語誤り率(WER: Word Error Rate)で16.79%を達成した。

  • 各段階における音声および振動データのスペクトログラム - 引用:研究論文

    各段階における音声および振動データのスペクトログラム 引用:研究論文

この認識精度を達成するには木材の机(音速が約3,000m/s)の上にマウスを置く条件において、20,000DPI以上の感度、8KHz以上のポーリングレートが必要とされる。かなりの高性能を要求するが、近年のマウスの価格下落に伴い、条件を満たすデバイスは個人でも購入可能となっている。

マルウェアだけが脅威ではない

この技術を悪用するには、標的PCにマルウェアなどをインストールしてマウスデータを収集する必要がある。しかしながら、実際にはゲームや一部アプリなども高頻度でマウスデータを処理しており、これらソフトウェアを介した秘密裏の音声収集の可能性も指摘されている。

研究者はMic-E-Mouse技術への対策として、マウスパッドの使用を提案している。音声帯域の振動を吸収可能なマウスパッドを使用すると、影響を低減できるという。IT管理者には影響を受けやすい高性能マウスの使用を禁止するポリシーの導入を推奨している。

研究中に特定された脆弱なマウス26製品については、ベンダーおよびセンサー製造元に通知したことが報告されている。この脆弱性を修正するにはセンサーの改善またはファームウェアアップデートが必要とされる(研究論文:「(PDF) Invisible Ears at Your Fingertips: Acoustic Eavesdropping via Mouse Sensors」)。