
石破茂首相の退陣表明は、外務省にも困惑を広げている。最大の悩みは、石破政権下で緊密な関係を築くことができたトランプ米政権との関係の行方だ。
年明け以降、日本にとって最大の課題だった日米関税交渉を巡り、同省は首相の側近である赤澤亮正経済再生担当相を総力でバックアップする体制をとってきた。
山田重夫駐米大使と経済担当の赤堀毅外務審議官がタッグを組み、ホワイトハウスやトランプ氏の側近軍団に徹底したロビー活動を展開。赤澤氏がこれに助けられる形でラトニック商務長官と盟友関係を築き、最終的に自動車の関税率を15%に抑えることなどに成功した。
「赤澤さんはトランプ米大統領にも顔と名前をしっかり覚えてもらった。外務省も複数の官僚が個人的な人間関係を築き、いい形でチームができている」
同省幹部はこれまでの交渉過程を振り返りながら、赤澤氏を高く評価する。
石破政権の終幕で同省が恐れるのは、赤澤氏がこのタイミングで交代すること。「ポスト石破」の有力候補のうち、石破氏と距離のある高市早苗前経済安保担当相が次期首相となれば、石破氏の最側近の赤澤氏は「閣外に追いやられかねない」(同)との懸念が高まる。
自動車の対日関税率を確定する米大統領令などが発出されたとはいえ、日本が約束した5500億ドル(約80兆円)の対米投資の行方などには依然不透明な部分が多い。米側と関係を持つ赤澤氏の存在が重要だが、ここが交代となると、新たな担当閣僚と米側との関係を一から結び直さなければならない。外務省側との相性がどうかも分からない。
同省幹部は同じ石破政権にいた小泉進次郎農林水産相や林芳正官房長官が当選すれば、赤澤氏の続投を認める可能性もあると期待をかける。同省は総裁選の行方に戦々恐々としながら、9月下旬の石破首相の国連総会出席への準備を進めており、幹部は「身が砕かれるような思いだ」と疲弊した表情で語る。