Qorvo Japanは9月4日、都内で記者説明会を開催し、同社のUWBチップセットに関する説明を行った(Photo01)。
Qorvoは昨年7月末にも説明会を行っているが、この時は同社のビジネス全般に関する説明であった。今回はその中でUWBチップセットに絞り込んでの説明となっている。Qorvoは元々RF周りに強い会社であるが、そんな中で最近注力している分野の1つがUWBチップセットである。
自動車分野を中心に活用されるUWB
まだ売り上げとしては他に比べると小さいが、急速に伸びている分野でもあるとする(Photo02)。
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Photo02:現状Premium Smartphone以外UWBの実装が行われていないのが問題としつつも、搭載機種が増えていることと自動車向けの採用が進みつつあること、それとWi-Fi 7 EAPでのLocation ServiceにUWBを使うケースが出て来たとしている
具体的なマーケットとしては、民生向けでは特に自動車のCPD(Child Presence Detection)や自動車を含めたDigital Key/Access Controlの分野が有望であり(Photo03)、また産業向けで言えばロケーションあるいはレーダーの機能が有望とされている(Photo04)。
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Photo04:後述するがUWBを使ったレーダーで、例えば産業用ロボットなら動作範囲に作業員が立ち入っていないかの検出とかができる事になる。もちろん他にも方法はあるし、60GHz帯レーダーを使う実装も存在するが、UWBでもこうした事が可能になる点を強く売り出してゆきたいようだ
2025年に製品を拡充
こうしたマーケットに向けて今回前面に打ち出してきたのが、今年1月に発表した「QPF5100Q」と3月に発表された「QM35825」である。
まずQPF5100Q(Photo05)の方は自動車向けにAEC-Q100を取得しており、Secure Keyless EnrtyとかCPDの実装に役立つとしている。
このQPF5100Qは同社の第3世代製品に属するものであり、またCortex-M33を搭載するSoCの形で実装がなされている。一方のQM35825は民生用であるが、こちらは送受信とも2chを搭載しており、これを利用してUWBレーダーの実装が可能になっている点が特徴的である。やはりこちらもCortex-M33を搭載し、しかもその上で機械学習(ML)をベースにしたアルゴリズムで測位精度の向上を図っているそうだ。
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Photo06:AoA(Angle of Arrival)だけであればTX×1で済むが、2次元のAoAを測定しようとするとRxが3本必要になり、そのためにQM35825には4つのポートが付いている(Tx× 1, Rx× 3 で運用)
会場ではこのQM35825の開発キット(Photo07)を2組向かい合わせで設置し(Photo08)、実際にレンジング(距離の計測とAoA)(Photo09)やレーダー(Photo10)のデモが行われた。
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Photo10:開発キットの周囲1mちょいの範囲に人物が居るかどうかの検出が出来るというレーダーのデモ。この時には周囲に人が群がっていたので“Someone is Here”の表示となっている。離れたら“No one is Here”に表示が変わった
同社の大久保氏によれば、第1ならびに第2世代と比較して第3世代ではレーダー機能の実装など、やっと他社と差別化できるような機能を次第に準備でき始めるようになったとする。SoCにしたことで、あらかじめソフトウェアを作り込んで提供もできる(もちろん顧客が作り直すことも可能)あたりは競合とやっと肩を並べるところまできた感じではある。
すでに次世代製品の開発も進行中
先にUWBの市場は急速に伸びているとしたが、だからといって差別化しなくても売れまくるという訳にはいかないとの事(恐らく相見積もりのための提案を求められるケースは多いそうだ)。現在は第4世代の開発を社内で進めているそうで、このあたりで本格的に他社製品との差別化を強化してゆきたい、という事と思われる。
まずは車載向けにある程度のシェアを確保したいと思っており、そのためには自動車メーカーが多い日本は重要なUWBチップセット販売拠点の1つ、という事なのだろう。昨年の発表会で掲げられた「日本での売上高を3年以内に2倍」の達成のための重要な分野の1つという事になるのかもしれない。






