明治大学(明大)、東京大学(東大)、京都大学(京大)の3者は9月3日、超新星残骸「カシオペヤ座A」のX線観測から、大質量星が生涯の最期に引き起こす超新星爆発の直前のわずか数時間の間に、激しい核燃焼による星の内部構造の破壊が起きていた証拠を掴んだと共同で発表した。

  • 超新星残骸カシオペヤ座AのX線画像

    米国航空宇宙局(NASA)のX線宇宙望遠鏡「チャンドラ」が観測した、超新星残骸カシオペヤ座AのX線画像。この画像は、超新星爆発直前の大質量星内の激しい核燃焼過程で形成されたと考えられる、酸素(赤)、マグネシウム(緑)、シリコン(青)の元素の分布を示している。それぞれの色の混ざり具合の違いが、その核燃焼過程の不均一性を示唆している(出所:東大Webサイト)

同成果は、明大 理工学部 物理学科の佐藤寿紀専任講師、明大大学院 理工学研究科 物理学専攻の久保池結大学院生、東大大学院 理学系研究科の梅田秀之准教授、京大大学院 理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻の松永海大学院生(日本学術振興会特別研究員)、同・内田裕之助教、京大 基礎物理学研究所の吉田敬 国際プログラムコーディネータらの研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。

星が最期に起こす“破壊的核燃焼”の証拠を発見

太陽質量の8倍以上の大質量星は、生涯の最期に超新星爆発を起こす。天の川銀河では、およそ50~100年に1回の頻度で超新星爆発が発生すると見積もられているが、1604年の「SN 1604」(通称「ケプラーの星」)以降、人類は天の川銀河内では超新星爆発を観測できていない。

天の川銀河内には、明日にでも爆発するのではないかといわれている、オリオン座のベテルギウスのように、星の末期の状態である赤色超巨星が複数存在する。しかし、これらの星をいくら観測しても、正確な爆発時期の予測は困難で、実際ベテルギウスは爆発まであと10万年はかかるとする説もあり、今を生きる人々がその爆発を目撃できるかは不明だ。

超新星爆発を正確に予測するには、その内部情報、つまり大質量星の進化の度合いを知る必要がある。しかし、星の内部情報を得ることは容易ではない。そのため、超新星爆発を起こす直前の大質量星の内側の様子を、観測的・実験的に調査するのは困難である。

現在、超新星爆発直前の大質量星の内部を推測する唯一の手段は、スーパーコンピュータによる数値シミュレーションである。世界中で活発に行われているシミュレーションでは、超新星爆発直前の大質量星の内部進化はとても激しいと予測されている。しかし、恒星内部は“未観測領域”であり、その検証のために新たな観測手法が求められていた。そこで研究チームは今回、星そのものではなく、爆発後に残る「超新星残骸」に着目したという。

今回の研究では、超新星残骸を詳細に分析することで、大質量星が超新星爆発を起こす直前の瞬間の情報を引き出すことに、世界で初めて成功した。大質量星は、水素の核融合反応からヘリウムを合成し、さらに炭素や酸素などを順に合成する。この時、新たに合成された元素にヘリウム4原子核が融合して原子番号が偶数の元素が次々と合成されていき、最終的に鉄までが合成される。こうして、最も外側の水素から始まって、合成された元素が玉ねぎ状の層構造を形成し、進化の最終段階では星の中心領域に高密度のコアが作られる。

  • 大質量星の最期に内部で起きる破壊的核燃焼の模式図

    大質量星の最期に、内部で起きる破壊的核燃焼の模式図。大質量星は進化の末期に赤色超巨星となり、中心にコアを形成する。コアの内部では、激しい核融合反応により、大規模な対流構造が生まれることが理論的に予測されている(出所:明大Webサイト)

大質量星の進化や超新星爆発のメカニズムでは、核融合で合成された最も重い鉄が星の中心にコアを形成すると説明されることが多い。しかし、この場合のコアは鉄だけでなく、その手前で合成された酸素、マグネシウム、シリコンなど、さまざまな元素を含むより大きな中心領域を指す。

星の中心領域を観測することは不可能だ。しかし、超新星爆発でコア物質が周囲にばら撒かれた後であれば、その観測から内部情報を得られる可能性がある。そして、近年の数値シミュレーションでは、超新星爆発の直前に起こる激しい核融合反応によって、玉ねぎ状層構造が破壊することが予言されていた。

研究チームは今回、約300年前に爆発したとされる超新星残骸「カシオペヤ座A」のX線観測データから、爆発前の星のコアで形成された異なる元素が不均一に混じり合っていることを発見。この現象が、玉ねぎ状層構造の破壊、通称「シェルマージャー」によるものであると結論づけた。そしてこの不均一な元素の混合は、超新星爆発発生のわずか数時間前にこのシェルマージャーが起きたことを示唆しており、星の“死に際の瞬間”を捉えた結果とした。

星の内部で起きる激しい活動は、超新星爆発を助ける働きがあることが、近年の理論研究で示唆されている。実は、大質量星が最期を迎える瞬間、すべての星が超新星爆発を起こすわけではなく、一部の星は爆発せずに重力崩壊を起こしてブラックホールになることがあると予想されている。今回の発見は、超新星爆発を起こすか、それとも爆発なしにブラックホールとなって静かに一生を終えるかという、星の運命を決定する可能性を示唆するものだという。超新星の爆発メカニズムは、宇宙物理学における超難問だが、今回の成果がその解明の重要なピースになりうるとしている。