TSMCは7月17日に2025年第2四半期決算説明会を開催。同社の会長兼CEOのC.C.Wei(魏哲家)氏が、同社のグローバル製造拠点戦略ならびに先端プロセス開発の状況説明などを行った。

米国での最先端プロセスの前倒し生産を検討

同氏は、海外拠点の考え方について、「顧客のニーズに基づいている」という点を強調したうえで、米国での取り組みについて、「米国における先端半導体製造に総額1650億ドルを投資する拡張計画には、アリゾナ州に6つの先端ウェハ工場、2つの先端パッケージング工場、そして大規模な研究開発センターの建設が含まれている。N2(2nm)およびA16(1.6nm)プロセス対応の第3工場の建設もすでに開始しており、顧客からの旺盛な需要を踏まえ、生産スケジュールの加速も検討している。第4工場はN2とA16を、第5ならびに第6工場では、より微細なプロセスを考えているが、新工場の建設および生産開始スケジュールは、顧客ニーズに基づいて決定される。このギガファブクラスタ完成後は2nm以降の先端プロセス生産能力の約30%が米国で提供されることになる」と述べた。

熊本第2工場建設はインフラン整備次第で年内にも開始

また日本に関しては、「2024年後半より熊本第1工場が量産を開始している。第2工場の建設は、現地インフラの整備状況次第で今年後半に開始される予定である。生産開始スケジュールは、顧客のニーズと市場状況に基づいて決定される」と述べたほか、台湾での工場展開について「台湾政府の支援を受け、今後数年以内に11のウェハ工場(前工程)と4つの先端パッケージング(後工程)工場を建設する予定である。台湾北部の新竹サイエンスパ ークと南部の高雄サイエンスパークの両拠点において、2nm対応の複数の製造棟の建設準備を進めている」と台湾が中心であることを述べている。

一方、欧州工場の建設に関しては「欧州委員会(EC)、ドイツ連邦、州、ドレスデン市政府からの強いコミットメントを得て、独ドレスデンに工場を建設する計画を進めている。生産開始スケジュールは 顧客ニーズと市場状況を踏まえて決める」と述べた。

2nmの量産を2025年後半より開始

先端プロセスの状況については、N2については、「新規テープアウト数はスマホとHPCがけん引し、最初の2年間で3nmや5nmの時の数を上回ると予想される」とし予定通り2025年後半の量産開始に向けて順調で、さらなるパフォーマンス向上と電力効率を向上させたN2Pも2026年後半からの量産開始を計画しているとするほか、N2Pよりも性能を向上させたA16についても、2026年後半の量産開始を予定しているとする。

その先の1.4nm(A14)についても、順調に開発が進んでおり、デバイスのパフォーマンスと歩留まりは予定通りまたは予定よりも早く進行しており、2028年の量産開始に向けて順調であるとしている。

成熟プロセスの供給過剰は生じない

なお、同社は先端プロセスだけではなく、成熟プロセスの生産能力拡大にも注力しており、熊本第1工場も成熟プロセスである。現在、中国勢が中心となって成熟プロセス半導体製品の供給過剰が懸念されているが、「TSMCの成熟プロセスは汎用向けではなく、RF技術、CMOSイメージセンサ、高電圧などの特殊プロセスが中心である。もし、過剰生産が懸念されるのであれば、日本やドイツにそうした成熟プロセス対応工場を建設しなかった」(同)とコメントしている。