ニコンは、同社初となる半導体後工程向けの露光装置「DSP-100」を、2025年7月から受注開始する。

  • 露光した基板

IoTなどで用いられる高速通信技術や、生成AIなどの普及による情報量の増大に伴い、データセンター向けを中心に高性能半導体デバイスの需要が高まっている。加えて、複数の半導体チップを並べて接続するチップレットをはじめとするアドバンストパッケージングでは、配線パターンの微細化とともにパッケージの大型化が進み、樹脂やガラス基板などを用いたパッケージング(Panel Level Packaging)の需要拡大が見込まれるという。

こうした背景からニコンでは、半導体デバイス製造の後工程にあたるアドバンストパッケージング向けに、1マイクロメートル(L/S:Line and Space、配線の幅と隣り合う配線同士の間隔のこと)という高解像度の装置を開発発表しており、2026年度中に市場投入することをめざしている。今回、600mm角の大型基板に対応するデジタル露光装置「DSP-100」として正式に発表し、市場投入に先がけて受注開始を発表したかたちだ。

  • チップレットのイメージ。左が上面図、右は断面図

DSP-100は、半導体露光装置としての高い解像度と、FPD露光装置のマルチレンズテクノロジーによる高い生産性を追求。前出の高解像度、かつ≦±0.3マイクロメートルという重ね合わせ精度で、510×515mm基板の場合は1時間当たり50パネルという生産性を実現するとしている。光源はi線相当。

なおマルチレンズテクノロジーとは、複数の投影レンズを並べて精密に制御することで、まるで1本の巨大レンズを用いたかのように露光する、ニコンのFPD露光装置の独自技術。1回の露光でより広い範囲へのパターニングを可能にしている。

フォトマスクが不要で、大型のアドバンストパッケージングに対応している点も特徴。一般的な露光装置では回路パターンが描かれたフォトマスクを用いるが、DSP-100はこれを使わずに、回路パターンを表示したSLM(空間光変調器)に光源からの光を照射し、投影レンズを用いて基板に転写する。これにより、フォトマスクサイズの制約を受けることなく、大型のアドバンストパッケージングに対応。フォトマスク作成の手間も省け、顧客の開発・製造におけるコストやリードタイムの抑制にも寄与するという。

600mm角(600×600mm)の大型角型基板に対応したことで、角型基板では100mm角大型パッケージに対して300mmウェハ比で9倍の生産性を実現。さらに、アドバンストパッケージングで重要となる基板の反りや変形に対しても高い精度で補正するという。なお、対応基板サイズは600mm角だが、ウェハやより大型の基板にも対応可能とのこと。

  • ウェハおよび基板への露光の例(条件により個数は変動する)